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2章 亡命者は魔王の娘!?
36話 魔力吸収
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魔力吸収魔術。相手から魔力を吸い取り、自分の物にする逆転が狙える魔術。
しかし、高度な魔術な上に、一度に吸える魔力の量は少ない為、実践で使う事はほぼ少ない。
ただし、複数人が1人に対してこの魔術を使ったらどうだろうか?1人が1日に蓄えられる魔術には限りがあり、魔力が尽きた場合、回復まで待たなければならない。つまり、一対多の場合に真価を発揮する魔術なのである。
しかも、吸収量が少ない事もあって、相手に魔力の不自然な減りを勘づかれる事もほとんどないというメリットも存在する。
翡翠が挑発したのも、魔力吸収の時間を稼ぐ為。ロット2世の魔力の量はエルフ基準でも、とても多く、吸収に尽力したのは50人の魔術使い。
限界まで魔力を吸収したせいで、身動きが取れない模様。物理的に例えるならば、満腹で動けない状態に近いだろう。
「私の高潔な魔力を!ヒューマン如きが奪いやがって・・・!!」
「どうした?国王らしい口調が崩れてきてるぞ?」
「黙れ!!下等生物が!」
「まるで翼をもがれた鳥だな。リリックを狙った理由は後できっちり聞かせて貰うぞ」
「くっ!」
「主任、手錠を」
「はいよ~~」
警察から借り受けた手錠をロット2世の手首に付ける。魔力があったら、簡単に破壊する事が出来ただろうが、魔力の無いロット2世はただのエルフ。無力な人に過ぎない。
見下している種族に拘束されたからだろうか。ロット2世は主任は親の敵を見るような目で睨みつけた。
「ここの者どもを殺したら、まずお前の家系から破壊してやるぞ・・・リード・ザナァ!!」
「実現できる事を口にしな。それと、オレの本名をさらっと言わないでもらえる?ここぞという時に言おうと思ったのに」
ロット2世の口から明かされる主任の本名。小さな目標だったものが意外な形で叶った時に若干の幸福感を得ると同時に、主任のファミリーネームに興味が湧く。
リード・ザナ。偶然なのか、彼のファミリーネームは門の先の世界の名前と一致していた。
いや、偶然なのか?腐っても国王のロット2世が知っているぐらいの家系という事はそれなりの力を持っているはず。だとするならば、世界の方のザナと何か関係があるのではないか?
気になってしまった以上。発散する為には聞くしかない。いざ聞かんと主任に話しかけた・・・
「ここぞの時?それでは今この時をここぞの時にしてやろう!!」
手錠に繋がれたロット2世は意味の分からない言葉を口にすると、手から多量の魔力を解放し、周りにいる者や物を吹き飛ばした。
油断していた俺も当然ながら豪快に吹き飛ばされ、木に激突。後頭部を打ってしまった為、頭から出血してしまう。
すぐさま治癒魔術で傷口を癒し、状況を確認。自分が吹き飛ばさた先を見ると、ロット2世が鍵を使わず、腕の力で手錠を破壊していた。
事前情報によると、ロット2世は怪力の持ち主ではなかったはず。なのに手錠を破壊した事から考えるに魔術で筋力を底上げしたと考えられる。
だが、矛盾がある。数分前まで彼の魔力はマジケエフージオによって空だったはず。それなのに、どうして魔力を
放てたのか。
「この愚か者共め!貴様らに出来る事が私に出来ないわけがないだろうが!!」
失念していた。ロット2世は魔力貯蔵庫というだけでなく、魔術の天才でもある。そんな彼が魔力吸収を覚えていても何らおかしな事では無かった。
「しかし、お前らが奪った私を魔力を取り返すのは時間がかかる上、些か面倒だ。仕方ないからくれてやろう。だから、これを使う事にする」
取り出したのは液体が入った青い小瓶。コルク栓を開け、中身を一気に飲み干し、瓶を投げ捨てる。
液体を飲み終えた瞬間、奪われたはずのロット2世の魔力が元の量へと戻っていく。いや、戻って行っているのではない。再び生成しているのだ。
彼が飲んだのは間隔を開けずに魔力を生成を促す薬。魔力版のエナジードリンクだ。
「これを飲んだら明日は体調が優れなくなる為、使いたくはなかったが、やむを得ない。まずは全員を火あぶりにしてやる」
ロット2世の手の平に高濃度かつ多量の魔力が溢れる。溢れた魔力は辺り一帯に満遍なく広がっていき、戦士達を青ざめさせた。
「お、お待ちください陛下!!どうか御慈悲を────」
命乞いをする者も現れたが、裏切られた王の気分は変わる事無い。
「慈悲は火の中に見いだせ・・・『フランマ』」
冷たい魔術の唱えに答えるように、魔力は骨をも焦がす炎へと変化を遂げる。
ナチュレから来た兵士と騎士のほとんどが炎に包まれ、成す術無く絶命していった。とっさに魔術で水を被り、回避した者は少数。その中の1人が俺だった。
だが、水を被るという対策はその場しのぎでしかなく、ロット2世の体内にはまだ魔力が残っている。パーセントで例えるならば、残り95%程だろうか。
そして、先程説明したばかりだが、彼は魔術の天才。覚えている魔術が炎だけな訳が無い。
「水を被ったな?馬鹿め!『トニトゥルーム』だ!!」
水浸しの敵がいたら感電死を狙って電の魔術を使う。実に合理的である。そして、その合理的な戦い方は俺達を苦しめる。
上空に浮かんでいる雲に対して自分の魔力を放つ。ロット2世によって魔力が足された水蒸気の塊は、純白から灰色へと変色。ゴロゴロと不吉な音を鳴らし始めた。
「ロオチ!イメイラ!!」
ロット2世の放った雷の魔術は音速で飛んでくる神の怒りを彷彿とさせる。
何ボルトあるか分からない雷はまず、周辺に植えられた木や木造の建築物に落とす。その次に鉄製の鎧を着た騎士や傭兵を焦がした。
残されたのは俺のような軽装備の戦士ばかり。そして、俺の腰には金属製の刀。当然、次に雷が落ちてくるのは俺の方。
土の魔術で盾を自分の真上に土の盾を作ろうとしたが、魔術の腕がロット2世と比べて未熟な俺では、雷の速度よりも早く身が守れるわけがなく、未防備な状態で雷を受け────
「『ソロ』!!」
無かった。代わりに受けてくれたのは土で出来た巨人の手。土の魔術で出来た土の手だ。
土の手が守ってくれる直前、聴こえた土の魔術を唱える声。彼女だ。
暴君魔術師の魔術に唯一対抗できるのは彼女しかいない。
「ヒスイ!大丈夫だった?」
「ああ、最高のタイミングだったぜリリック」
そう、魔王女リリック・シング・レッドシンである。
しかし、高度な魔術な上に、一度に吸える魔力の量は少ない為、実践で使う事はほぼ少ない。
ただし、複数人が1人に対してこの魔術を使ったらどうだろうか?1人が1日に蓄えられる魔術には限りがあり、魔力が尽きた場合、回復まで待たなければならない。つまり、一対多の場合に真価を発揮する魔術なのである。
しかも、吸収量が少ない事もあって、相手に魔力の不自然な減りを勘づかれる事もほとんどないというメリットも存在する。
翡翠が挑発したのも、魔力吸収の時間を稼ぐ為。ロット2世の魔力の量はエルフ基準でも、とても多く、吸収に尽力したのは50人の魔術使い。
限界まで魔力を吸収したせいで、身動きが取れない模様。物理的に例えるならば、満腹で動けない状態に近いだろう。
「私の高潔な魔力を!ヒューマン如きが奪いやがって・・・!!」
「どうした?国王らしい口調が崩れてきてるぞ?」
「黙れ!!下等生物が!」
「まるで翼をもがれた鳥だな。リリックを狙った理由は後できっちり聞かせて貰うぞ」
「くっ!」
「主任、手錠を」
「はいよ~~」
警察から借り受けた手錠をロット2世の手首に付ける。魔力があったら、簡単に破壊する事が出来ただろうが、魔力の無いロット2世はただのエルフ。無力な人に過ぎない。
見下している種族に拘束されたからだろうか。ロット2世は主任は親の敵を見るような目で睨みつけた。
「ここの者どもを殺したら、まずお前の家系から破壊してやるぞ・・・リード・ザナァ!!」
「実現できる事を口にしな。それと、オレの本名をさらっと言わないでもらえる?ここぞという時に言おうと思ったのに」
ロット2世の口から明かされる主任の本名。小さな目標だったものが意外な形で叶った時に若干の幸福感を得ると同時に、主任のファミリーネームに興味が湧く。
リード・ザナ。偶然なのか、彼のファミリーネームは門の先の世界の名前と一致していた。
いや、偶然なのか?腐っても国王のロット2世が知っているぐらいの家系という事はそれなりの力を持っているはず。だとするならば、世界の方のザナと何か関係があるのではないか?
気になってしまった以上。発散する為には聞くしかない。いざ聞かんと主任に話しかけた・・・
「ここぞの時?それでは今この時をここぞの時にしてやろう!!」
手錠に繋がれたロット2世は意味の分からない言葉を口にすると、手から多量の魔力を解放し、周りにいる者や物を吹き飛ばした。
油断していた俺も当然ながら豪快に吹き飛ばされ、木に激突。後頭部を打ってしまった為、頭から出血してしまう。
すぐさま治癒魔術で傷口を癒し、状況を確認。自分が吹き飛ばさた先を見ると、ロット2世が鍵を使わず、腕の力で手錠を破壊していた。
事前情報によると、ロット2世は怪力の持ち主ではなかったはず。なのに手錠を破壊した事から考えるに魔術で筋力を底上げしたと考えられる。
だが、矛盾がある。数分前まで彼の魔力はマジケエフージオによって空だったはず。それなのに、どうして魔力を
放てたのか。
「この愚か者共め!貴様らに出来る事が私に出来ないわけがないだろうが!!」
失念していた。ロット2世は魔力貯蔵庫というだけでなく、魔術の天才でもある。そんな彼が魔力吸収を覚えていても何らおかしな事では無かった。
「しかし、お前らが奪った私を魔力を取り返すのは時間がかかる上、些か面倒だ。仕方ないからくれてやろう。だから、これを使う事にする」
取り出したのは液体が入った青い小瓶。コルク栓を開け、中身を一気に飲み干し、瓶を投げ捨てる。
液体を飲み終えた瞬間、奪われたはずのロット2世の魔力が元の量へと戻っていく。いや、戻って行っているのではない。再び生成しているのだ。
彼が飲んだのは間隔を開けずに魔力を生成を促す薬。魔力版のエナジードリンクだ。
「これを飲んだら明日は体調が優れなくなる為、使いたくはなかったが、やむを得ない。まずは全員を火あぶりにしてやる」
ロット2世の手の平に高濃度かつ多量の魔力が溢れる。溢れた魔力は辺り一帯に満遍なく広がっていき、戦士達を青ざめさせた。
「お、お待ちください陛下!!どうか御慈悲を────」
命乞いをする者も現れたが、裏切られた王の気分は変わる事無い。
「慈悲は火の中に見いだせ・・・『フランマ』」
冷たい魔術の唱えに答えるように、魔力は骨をも焦がす炎へと変化を遂げる。
ナチュレから来た兵士と騎士のほとんどが炎に包まれ、成す術無く絶命していった。とっさに魔術で水を被り、回避した者は少数。その中の1人が俺だった。
だが、水を被るという対策はその場しのぎでしかなく、ロット2世の体内にはまだ魔力が残っている。パーセントで例えるならば、残り95%程だろうか。
そして、先程説明したばかりだが、彼は魔術の天才。覚えている魔術が炎だけな訳が無い。
「水を被ったな?馬鹿め!『トニトゥルーム』だ!!」
水浸しの敵がいたら感電死を狙って電の魔術を使う。実に合理的である。そして、その合理的な戦い方は俺達を苦しめる。
上空に浮かんでいる雲に対して自分の魔力を放つ。ロット2世によって魔力が足された水蒸気の塊は、純白から灰色へと変色。ゴロゴロと不吉な音を鳴らし始めた。
「ロオチ!イメイラ!!」
ロット2世の放った雷の魔術は音速で飛んでくる神の怒りを彷彿とさせる。
何ボルトあるか分からない雷はまず、周辺に植えられた木や木造の建築物に落とす。その次に鉄製の鎧を着た騎士や傭兵を焦がした。
残されたのは俺のような軽装備の戦士ばかり。そして、俺の腰には金属製の刀。当然、次に雷が落ちてくるのは俺の方。
土の魔術で盾を自分の真上に土の盾を作ろうとしたが、魔術の腕がロット2世と比べて未熟な俺では、雷の速度よりも早く身が守れるわけがなく、未防備な状態で雷を受け────
「『ソロ』!!」
無かった。代わりに受けてくれたのは土で出来た巨人の手。土の魔術で出来た土の手だ。
土の手が守ってくれる直前、聴こえた土の魔術を唱える声。彼女だ。
暴君魔術師の魔術に唯一対抗できるのは彼女しかいない。
「ヒスイ!大丈夫だった?」
「ああ、最高のタイミングだったぜリリック」
そう、魔王女リリック・シング・レッドシンである。
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