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2章 亡命者は魔王の娘!?

25話 妖精の強襲

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「俺らに罰則が与えられなかった理由って何だ?町にあるのは分かったけど、一目見てわかるものなのかな?」

「主任は腹立つけど、本当に無駄な事は言わないヤツなのはアンタも知ってんでしょ?」

「僕達の理解力を試しているのかもね」

 頭上にどでかい疑問符を浮かべながら、町の方へと走っていくと、町に近付くにつれて聴こえてほしくない声が聴こえてきた。

 助けを乞う声、女性の悲鳴、破壊音。どれも俺達の走る速度を上げるには十分の音だった。

 住宅が集中する地帯から灰色の煙が上がっているのを目で確認。更に住宅エリアから大勢の人が逃げているのを確認。極めつけには住民が去り際にこんな事を言ってきた。

「オバケ!オバケよ!いきなり現れたの!」

 何の前触れもなく、現れ、破壊活動を始めたとのこと。

 突然現れたというオバケ?に、1週間前に隣の影野町に侵入していた刺客。理由があると主任は言っていたが、なんとなくわかってきた気がする。

 モネさんとシャープもそれとなく理解してきたようで、表情が険しくなっている。

「もしかしたら、門番アタシたちの存在価値なくなるかもね」

「門番楽しかったんだけどな・・・」

「今後の事を考えるのは一旦やめにしないか?今から

「それもそうね・・・」「それもそうだね・・・」

 人々の悲鳴、立ち上がる煙。発生源には何が現れた?頼むから魔物であって欲しい。魔物が一番マシだ。

 そう願って到着した俺達を待っていたのは、美しい銀の鎧を身に纏う騎士達だった。

 僅かに残された良心か、指示されている者のせめてもの抵抗か。騎士達は住民を直接は狙わず、建物ばかりを狙っている。

 建物の倒壊によって、死者が出た様子は無し。現場では、既に先に駆けつけた警官数人と、銀の鎧の騎士が交戦している。

「キャンベル騎士団・・・アタシ達しっかり見張ってたよね?」

「ああ。この1週間、目を血眼にして監視してきた。侵入者も、魔物も誰も不法侵入を許さなかった」

「正式に入国してくるザナ人のチェックも入念にしたよね。誰も銀の鎧なんか着ていなかったし、持ち込んでいなかった。なのにどうして目の前に要注意対象キャンベルきしだんがいるんだ・・・?」

 これではっきりと分かった。厳重な門の見張りを意図も簡単にすり抜ける方法。隣町まで侵入する事が出来た裏技。

 キャンベル騎士団は正規の方法でリオに来たのではない。

「門を通さずにリオにやってきてたんだ」

 ずっと、喉で突っかかっていた疑問が取れた気分だ。謎が解けた場合、運動後のシャワーのように気持ちが良い物のはずだが、最高に気分が悪い。

 この気持ちを良いモノにする為にはまず────

「アイツら全員ぶちのめす!!コロス!引き裂く!はりつけにしてやるぅぅぅぅぅぅ!!」

「俺の言いたい事全部言ってくれてありがと・・・それじゃ、やろうか!!」

「支持するなぁぁぁぁぁ!!」

 先陣を切ったのは、モネさん。3人の中で最もエルフに対しての憎しみが強い彼女は躊躇することなく、建物を破壊するキャンベル騎士団にモーニングスターを振り下ろす。

「ひぎゃっ!!」

 棘付きの鉄球を頭に落とされたキャンベル騎士の兜は大きく歪み、その場に倒れる。

 新たな敵に他の騎士達は大パニック。中には、勇気のある騎士がおり、勇敢に向かっていったが、怒りで身体能力が一時的に上昇しているモネさんの前では、大した事は無く、腹を思い切り殴られ、吹き飛ばされてしまう。

「おお・・・!ちっこいネェチャンだ!おい!ちっこいネェチャンが来たぞ!!」

「「「うぉぉぉぉ!!俺達の勝ちだぁぁぁぁぁぁ!!」」」

「クソエルフ殺したら、次は警官アンタ達をとっちめてやろうか!?」

 人員不足により、侵入してきた魔物が町に解き放たれる事は中々の頻度で起きる。その場合は、警察官と門番が協力して魔物を倒すのだが、その結果、モネさんの戦いっぷりが警官だけでなく、住民の人達にも知れ渡り、結果といして『ちっこいネェチャン』という愛称が生まれた。

 勿論、モネさんはこの愛称が大嫌いである。それはそうと、ちゃんと助けるが。

「ああ!ハルバードの旦那シャープと、緑眼ヒスイさんも来てくれたんですね!一体この数は何なんですか!?見逃した・・・ってわけじゃないですよね?」

「それか身分を隠してたとか?いや、でも持ち物検査で引っかかるよな・・・」

「皆さんが考えてる原因よりも、もっと複雑なんで説明は後で良いですか?今はこの場の鎮圧を────」

「危ない!避けて!!」

 言葉を遮る忠告と共に、俺らの方へと飛んでくる人。避けろと言われたが、何とか受け止めて後ろの壁への激突を止める。

「あ・・・がぁっ・・・!!」

「モネさん・・・?」

 避けずに受け止めて心底良かったと思った。飛んできたのは、腹を両手で抑えて吐血するモネさんだった。

・・・ぶっ殺────おえぇ・・・」

 余程の威力の攻撃を喰らったのだろう。時間差で嘔吐する。医者ではない為、詳しくは分からないが、骨折している可能性がある。

「お巡りさん、モネさんをお医者さんか回復魔術が使える人の所まで」

「わ、分かりました!」

 信頼できる警官にモネさんを任せて、キャンベル騎士団の方を向く。

 モネさんを殴り飛ばした者はすぐに分かった。その者は拳を前に突き出しており、足元にはモネさんの愛武器であるモーニングスターが転がっていたからだ。

 その人もエルフで、キャンベル騎士団の鎧を身に着けていたが、兜は被っておらず、代わりに美しい緑の宝石があしらわれたサークレットを付けている。

 いかにもこの団体をまとめ上げる者と言った風貌のエルフは俺達を指さして紡ぐように言葉を言い放った。

「君達が・・・門番だな?」

 意外な事にエルフの男が使ったのは、ザナの言語では無く、日本語だった。

「・・・申し訳ないが、その命と魔王女リリックの命・・・奪わせてもらう」

 金で作られた柄のサーベルを引き抜き、敵である事を高らかに宣言する。腐っても騎士という事だろう。

「それなら、抵抗しても良いよね?」

 相手が俺とリリックの命を奪いたいと言っている。しかし、俺はまだ死にたくないし、リリックを死なせるわけにはいかない。なら、全力で抵抗する以外選択肢は存在しない。

「シャープ。周りのモブ騎士達を頼んでも良いかな?」

「任せて・・・!!」
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