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2章 亡命者は魔王の娘!?

24話 魔力操作

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 次の日から、俺の仕事は1つだけ増えた。

 増えたと言っても内容は非常に簡単。リリックに魔力のコントロールを教える事と、魔術を教える事。

 人に教えるという事は久しぶりの事なので苦戦すると思われたが、友達との勉強会の事を思い出して何とか自分なりに頑張ってみた。

 するとどうだろう。リリックはあっという間に基礎魔術である火・水・雷・風・土の魔術を会得したのだ。

 これにはシャープも俺もビックリ!モネさんは嫉妬!

 やはり魔王の娘の才能は凄い!・・・のだが。

「よし。もう一回炎の魔術フランマを打ってみて。にだよ?─────」

「『フランマ』!!!」

 ぼうっ!という音と共に、生者をも一瞬で焦がしてしまう程の高熱の火柱が2m先で立つ。

 もっと近くで火柱が立っていたら、制服に着火していただろう。

「リリック!小さくだって!!心を落ち着かせて手のひらに収まる程度の炎を想像するんだ!」

「想像できるんだけど、出そうとすると出ないの!出そうとしても火柱あれしか出ないんだって~!!」

 才能よりも魔力が膨大すぎる影響か、リリックは調節が下手くそで、0か100しか出せないでいた。

 炎の魔術フランマを使えば火柱が立ち、水の魔術アクアを使えば大洪水が起き、雷の魔術トニトゥルームを使えば、壁を破壊してしまう。

 魔術の天才ではあるようだが、魔力操作はかなり下手っぴのようだ。

「うぅ・・・ヒスイ~・・・」

「ああ泣かないの。まだ初めてから1週間しか経ってないんだから」

「でもっ!『スライムでも出来る初級魔術』って本には、1週間で初級魔術を完全に使いこなせるようになるって書いてあったの・・・わたし才能無いんだぁぁぁぁ・・・!!」

 翡翠の付近に落雷数発!リリックは感情の爆発によって、魔力が暴発する事が何度かあった。

 魔術を覚えた現在では、魔術が暴発するようになった。属性がついた事によって、より危険度が増してしまったかもしれない。

「才能がなかったらそもそも魔術なんて使えないよ!俺の友達だって、魔術が使えなくて魔術師になるの諦めたヤツいるし!」

「そうよ!魔術が放てるだけ才能があるって自覚しなさい!こんの泣き虫!」

「うわぁぁぁぁぁん!!」

 やばい。魔術が使えないモネさんにも今の言葉は刺さってしまったようだ。

 ていうか、この前魔術が使えない事は気にしてないとか言って無かったっけ?心の底ではやっぱり気にしていたのだろうか。

「ヒスイ!タスケテ!!ミノタウロス達が攻めてきた!!」

「「「モォオオオオオオオッス!!!」」」

 刃の長さが人間の胴体程ある斧を両手に白をベースに黒の斑が入った体毛を持つミノタウロス3体が侵入してくる。体毛からして、ホルスタイン系統だろう。

「ちょうど良いや・・・おぉい!シャープゥゥ!すぐにそこから逃げろぉぉぉ!」

「はぁ!?何でさ!早く助力してくれよ!!」

「ああ、助力してするとも。俺じゃなくて、リリックがね!!」

 横に立っているリリックが魔術を放つ準備をする。シャープはすぐに気づき、ハルバートを壁に向かって投げ、梯子を駆け上る形で避難する。

「「「モォォモォォ!モォォォォォォッス!!」」」

 当然だが、背中を見せた者を追ってミノタウロス達も移動を開始。

「やっばい!追ってきた!まだ待って!まだ登り切ってない!登り切ってないかr────」

「『アクア』ーーーーー!!!!」

 突き出された手の平から、大量の水がジェット噴射。ミノタウロス達も慌てて斧で身を守るも、水の勢いはすさまじく、2mを超える筋肉の塊であるミノタウロス3体は成す術なく、ザナへと吹き飛ばされていった。

「危なかった・・・それ以外の魔術だったら確実に死んでたよ」

「そこまでわたし酷い人間に見える?」

「簡単に人を殺せる力を持ってるって知ってるから怖いんだヨ!魔力溜めてる時は本当に冷や汗止まらなかったし」

「ごめん・・・」

「でも、これで役に立つってわかったでしょ?」

「うん!!」

 リリックの笑顔が元に戻る。ご褒美とは言えないが、頭を撫でてあげると気持ちよさそうに唸った。

「ちょっと3人共!話があるからちょっと下りてきてくんない?」

 バインダーを持った手で壁の上に立つ俺らに向かって手を振る主任。バインダーには紙が挟まれており、俺ら3人を呼んだ理由だろう。

 リリックも一緒に下りていくと、主任は俺らが近付き終える前に要件を言い終えてしまう。

「先週の刺客が隣町まで行っちゃった件なんだけど、あれ、罰則無し!オレら門番は全く悪くないから!よろしく~~!」

「「「えっ!?」」」

 あまりにもいきなりで、あまりにもあっさり過ぎる。どうしてそのような結果になったのか、キチンと説明して欲しい。

「理由?理由はね────あ、電話だ。ちょっと待ってて~~」

 タイミングを見計らったかのように主任のスマホが着信を知らせる。大事な連絡だったのか、主任は着信に出た。

「はい、もしもし・・・成程。すぐに向かわせます」

 向かわせる?まさか、俺達を?魔物と侵入者から守らなくちゃならないのに、離れろというのか?

「3人共、今すぐ町の方に向かって。そこに君達に罰則が与えられなかった理由があるから」

「でも、門は・・・」

「オレが守るから大丈夫!それに、ザナの方にもしっかり仕事させるから!」

「わ、分かりました。じゃあ・・・」

 主任の言葉を信じて、俺とモネさんとシャープは町の方へと走って行った。
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