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2章 亡命者は魔王の娘!?
9話 見えないのなら、全体攻撃
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「とりあえず、シャープはモネを事務室まで運んで。皮膚を貫通するタイプの毒だから絶対に素手で触らないように。運び終えたら解毒魔術で毒を解除、念のために毒消しの薬草のお茶も飲ませてあげて。今日みたいな日の為に回復系の魔術勉強したんでしょう?」
「わ、分かりました!」
大本が混乱したら部下も混乱する。しっかりと弁えている主任は冷静に部下に指示を下し、瀕死の部下の命の安全を確保する。
「翡翠はリリックちゃんをここから離したら、オレと一緒に戦って」
「了解!リリック、こっちに来て」
「いや、わたしは大丈夫────」
「駄目!良いからこっちに!」
安全かつ、存在の確認を目視で出来る場所。門を囲む壁の上が適所だろう。
壁を梯子で登り、リリックを座らせてそこで待つように命令する。
「良い?絶対にここから離れないでね?」
「わ、分かった」
聞き分けは非常に良いようで、すぐに了承してくれた。お陰ですぐに主任の手助けに迎える。
「よいしょっと!」
また梯子を下りるのは些か面倒なので、飛び降りる形で主任の元へと戻る。約3mの高さからの落下だが、落下直後に回転すれば大した肉体ダメージにはならない。
「翡翠、実はオレちょっと焦ってるかも!」
「どうしたんです?ガラじゃないですよ?」
「だって、一発でモネをノックアウトした毒だぜ?それに、全く姿が見えない。魔術を用いない自己所有の特性だこの透明化」
「ていう事は魔物・・・ですかね?」
「十中八九そうだと思うね。モネも『舐められた』って言ってるし」
生来の特性として、透明化を所有している人間はどの種族にも存在しない。人間が透明化を行うには、その特性を有している魔物から作った道具を用いるか、魔術を用いる他方法は無い。
では、まだ人間である可能性は残っているのではないか?と思われるだろうが、はっきり言って残っていない。
足場は荒野で、足跡がしっかりと残る。なのに、人間の足跡や靴跡が残っていないのだ。更にモネの『舐められた』という情報と、背中にべっとりと付着した大量の粘性のある毒。
これらの情報から特定できる魔物が1種類存在する。
外敵から身を守る為に、体だけでなく舌にも毒をコーティングする形で進化を遂げた森の隠れた強者。大自然が生んだ超兵器。
「「ポイズンフロッグ」」
外敵と餌の確保を安全に行う事に特化した魔物。爆発によって森が焼かれてしまい、驚いて門の中に入ってきてしまったのだろう。
「若しくはあの騎士の置き土産かもね?」
「どうしてそう思うんです?」
「門付近の森にポイズンフロッグが生息してるなんて聞いた事ないんだよね~~。あの森、砂漠が近くにある影響で滅茶苦茶感想してるから」
「成程。今まで両生類の魔物に遭遇しなかった理由もそれだったんですね、流石です。それで?どう戦います?」
「足跡から居場所を特定して倒す他ないでしょ・・・」
地道だが、そうするしか方法が無い。攻撃する隙を与えない為に互いに背中を合わせて武器を構える。
俺と主任しかおらず、静まりかえる門前。正確にはもう1体カエルがいるが・・・。
「翡翠・・・足音聴こえる?」
「いえ、全く。主任は?」
「こっちもさっぱりだ。参ったね。ポイズンフロッグとは1回もやり合った事がないからどんな対策すれば良いのか分からないや」
半ばお手上げ状態。そんな2人に天の声────壁の上から声が聴こえてきた。
「ねぇ!2人とも!何やってるのー?」
「何やってるのって・・・」
「敵が何処にいるのか分からないから暗中模索で探してるんだよ!ちょっと気が散るからそこで黙ってみていてくんない!?」
「そんな事やらなくても、ここら辺をふっとばしちゃえば済む問題じゃん!」
言うのは簡単だ。そんな事が出来たらどんなに楽だろうか。リリックのやり方は確実だし、丈夫な壁に囲まれた門前ならある程度の衝撃には耐えられるだろう。
しかし、問題は吹っ飛ばす方法が存在しない事だ。爆薬でやろうにも、そんな量を保有していない。魔術でやろうにも、そんな魔力有していないのだから。
「えぇ!?出来ないの!?・・・そっか!ふっとばせる魔力も持ってないんだ!ちょっと待ってて?」
「「え?」」
両手の指を広げ、前で空間を開けて構える。何も無かった空間からは、手を通してリリックの体内を循環する魔力が玉となって集まる。
玉はドッジボールで用いられるゴムボール程度の大きさだった。それに反して中身はぎっしりと良質な魔力が詰め込まれている。例えるなら、美味しく実った果実のようだ。
「な、何をする気なんだリリック・・・」
リリックが作り上げた魔力の玉。魔術使いとしては三流な俺でも分かる。彼女が言っていた一度で今立っている場所を吹っ飛ばせる力を持っている。
炎にも水にも雷にも土にも風にも変えられていない純粋な魔力の塊。鉱石で例えるならば、ダイヤモンドのような美しさに思わず見惚れてしまう。
「マズイ・・・!!」
「・・・うわぁ!?」
見惚れて身動きが取れなくなった俺の体を主任が抱え込み、急いで壁に上り始める。梯子を使わず足だけの力で一気に。
「それじゃあ!行くよ!!・・・えいっ!!」
主任が壁を登り切るタイミングを見計らったのか、それとも偶々だったのか。
リリックは俺らがいなくなった門前の広場に、魔力の玉を落としたのだ。
地面に衝突と共にシャボン玉弾ける。中に詰まっていた純粋な魔力が、強力な風を発生させる。魔力から風に変換されたのではない。急な魔力の膨張により、結果として風が発生したのだ。
発生にした風は非常に強力で、壁の上にいる俺達も足場にしがみ付かなければ吹き飛ばされてしまう程だ。
そんな風の力を直接受けた透明化しているポイズンフロッグは、俺らに目視で姿を確認されないまま、もの凄い速度で壁に激突。ミンチとなって死亡した。
「ふう・・・どう!見た!?これがわたしの力よ!」
魔族の王女リリック。フルネーム、リリック・シング・レッドシン。素直だが、素直故に問題児かもしれない。
「わ、分かりました!」
大本が混乱したら部下も混乱する。しっかりと弁えている主任は冷静に部下に指示を下し、瀕死の部下の命の安全を確保する。
「翡翠はリリックちゃんをここから離したら、オレと一緒に戦って」
「了解!リリック、こっちに来て」
「いや、わたしは大丈夫────」
「駄目!良いからこっちに!」
安全かつ、存在の確認を目視で出来る場所。門を囲む壁の上が適所だろう。
壁を梯子で登り、リリックを座らせてそこで待つように命令する。
「良い?絶対にここから離れないでね?」
「わ、分かった」
聞き分けは非常に良いようで、すぐに了承してくれた。お陰ですぐに主任の手助けに迎える。
「よいしょっと!」
また梯子を下りるのは些か面倒なので、飛び降りる形で主任の元へと戻る。約3mの高さからの落下だが、落下直後に回転すれば大した肉体ダメージにはならない。
「翡翠、実はオレちょっと焦ってるかも!」
「どうしたんです?ガラじゃないですよ?」
「だって、一発でモネをノックアウトした毒だぜ?それに、全く姿が見えない。魔術を用いない自己所有の特性だこの透明化」
「ていう事は魔物・・・ですかね?」
「十中八九そうだと思うね。モネも『舐められた』って言ってるし」
生来の特性として、透明化を所有している人間はどの種族にも存在しない。人間が透明化を行うには、その特性を有している魔物から作った道具を用いるか、魔術を用いる他方法は無い。
では、まだ人間である可能性は残っているのではないか?と思われるだろうが、はっきり言って残っていない。
足場は荒野で、足跡がしっかりと残る。なのに、人間の足跡や靴跡が残っていないのだ。更にモネの『舐められた』という情報と、背中にべっとりと付着した大量の粘性のある毒。
これらの情報から特定できる魔物が1種類存在する。
外敵から身を守る為に、体だけでなく舌にも毒をコーティングする形で進化を遂げた森の隠れた強者。大自然が生んだ超兵器。
「「ポイズンフロッグ」」
外敵と餌の確保を安全に行う事に特化した魔物。爆発によって森が焼かれてしまい、驚いて門の中に入ってきてしまったのだろう。
「若しくはあの騎士の置き土産かもね?」
「どうしてそう思うんです?」
「門付近の森にポイズンフロッグが生息してるなんて聞いた事ないんだよね~~。あの森、砂漠が近くにある影響で滅茶苦茶感想してるから」
「成程。今まで両生類の魔物に遭遇しなかった理由もそれだったんですね、流石です。それで?どう戦います?」
「足跡から居場所を特定して倒す他ないでしょ・・・」
地道だが、そうするしか方法が無い。攻撃する隙を与えない為に互いに背中を合わせて武器を構える。
俺と主任しかおらず、静まりかえる門前。正確にはもう1体カエルがいるが・・・。
「翡翠・・・足音聴こえる?」
「いえ、全く。主任は?」
「こっちもさっぱりだ。参ったね。ポイズンフロッグとは1回もやり合った事がないからどんな対策すれば良いのか分からないや」
半ばお手上げ状態。そんな2人に天の声────壁の上から声が聴こえてきた。
「ねぇ!2人とも!何やってるのー?」
「何やってるのって・・・」
「敵が何処にいるのか分からないから暗中模索で探してるんだよ!ちょっと気が散るからそこで黙ってみていてくんない!?」
「そんな事やらなくても、ここら辺をふっとばしちゃえば済む問題じゃん!」
言うのは簡単だ。そんな事が出来たらどんなに楽だろうか。リリックのやり方は確実だし、丈夫な壁に囲まれた門前ならある程度の衝撃には耐えられるだろう。
しかし、問題は吹っ飛ばす方法が存在しない事だ。爆薬でやろうにも、そんな量を保有していない。魔術でやろうにも、そんな魔力有していないのだから。
「えぇ!?出来ないの!?・・・そっか!ふっとばせる魔力も持ってないんだ!ちょっと待ってて?」
「「え?」」
両手の指を広げ、前で空間を開けて構える。何も無かった空間からは、手を通してリリックの体内を循環する魔力が玉となって集まる。
玉はドッジボールで用いられるゴムボール程度の大きさだった。それに反して中身はぎっしりと良質な魔力が詰め込まれている。例えるなら、美味しく実った果実のようだ。
「な、何をする気なんだリリック・・・」
リリックが作り上げた魔力の玉。魔術使いとしては三流な俺でも分かる。彼女が言っていた一度で今立っている場所を吹っ飛ばせる力を持っている。
炎にも水にも雷にも土にも風にも変えられていない純粋な魔力の塊。鉱石で例えるならば、ダイヤモンドのような美しさに思わず見惚れてしまう。
「マズイ・・・!!」
「・・・うわぁ!?」
見惚れて身動きが取れなくなった俺の体を主任が抱え込み、急いで壁に上り始める。梯子を使わず足だけの力で一気に。
「それじゃあ!行くよ!!・・・えいっ!!」
主任が壁を登り切るタイミングを見計らったのか、それとも偶々だったのか。
リリックは俺らがいなくなった門前の広場に、魔力の玉を落としたのだ。
地面に衝突と共にシャボン玉弾ける。中に詰まっていた純粋な魔力が、強力な風を発生させる。魔力から風に変換されたのではない。急な魔力の膨張により、結果として風が発生したのだ。
発生にした風は非常に強力で、壁の上にいる俺達も足場にしがみ付かなければ吹き飛ばされてしまう程だ。
そんな風の力を直接受けた透明化しているポイズンフロッグは、俺らに目視で姿を確認されないまま、もの凄い速度で壁に激突。ミンチとなって死亡した。
「ふう・・・どう!見た!?これがわたしの力よ!」
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