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2章 亡命者は魔王の娘!?

4話 爆発での登場は大体ヤバい事の前兆

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 制服に着替え終えて、持ち場に着く。亡命者を迎え入れる為なのだろうか、今日はザナからの入国者はいない。つまりは、亡命者の迎え入れだけに全力を注げと言う意味だろう。

 持ち場はいつもの門の正面前ではなく、門の真上。亡命者以外の侵入者が入って来た瞬間に奇襲して倒す為らしい。

「ごめんごめん!遅れた」

 少し遅れてシャープが持ち場に着く。彼も普段の持ち場ではなく、砲台がある塔の上からの監視だ。今回は予算関係無しに砲弾を打って良いらしい。本部・・・いや、政府がどれだけ今回の仕事に力を入れているのかが分かる。

 彼の顔を見た瞬間、先程から気になっていた事を思い出したので、大声で聞いてみる。

「ねぇ!シャープ!ちょっと聞きたい事があるんだけど良いかな?」

「なぁにぃーー??」

「俺が勉強したザナの世界史だと、千年戦争以降の魔族の事が書かれてなかったんだけど、その後の事知ってる?」

 千年戦争が終結したのは、実は100年前。歴史的にはつい最近の出来事なのだ。その為か教科書では、千年戦争の終結と、終結へと導いた勇者のその後が少ししか書かれていなかったのだ。なので、千年戦争終結から現代までの出来事が知りたい。

「ああー!そういう事!千年戦争の後はねぇぇ!!魔族側もなんやかんやあって共存の道を辿る事にしたんだよ!!」

「ふむふむ!そんで次はぁ??」

「勿論、魔族の大体が魔王を倒した勇者様が説得して3年前に共存賛成派が98%に達したんだってさ!」

「あの勇者って人、そんなやってたの!?凄いね!ていうか名前載ってなかったんだけど知らない?」

「知らなーい!!なんでも勇者様が歴史書を書いてる人に匿名でってお願いしたんだって!自分らの子孫が調子に乗らないように!」

「益々尊敬の意を表すよ!それでその次は?」

「いや、今ので終わりー!今現在進行形で和平を結ぼうとしてるところー!多分、魔王族の亡命理由は反対派の暗殺から免れようとしてんだと思うー!」

98%の国民が賛成しているのなら、ほぼ覆りようがない。暗殺するしかないと考えしまったのだろう。

 残り2%が反対派の理由は何なのだろう。上位存在であるというプライドか?それとも、和平を結ぶ事で不利益が生じるからだろうか。

「ま、リオ人の俺が考えても仕方ないか。とりあえず今は侵入者がいないか見張らないt─────」

 本当に突然の事だった。門の中、ザナ側から門を囲む壁を破壊しかねない爆発が発生。

 相当の爆発だったのか、ザナの門番、木、魔物など様々な物が爆発に巻き込まれてリオに侵入、壁に叩きつけられ、地面に倒れる。

 爆発による揺れも凄まじいものだった。瞬間的ではあるが、震度5弱レベルの揺れだ。設置された塔は揺れ、砲台のある塔にいたシャープも落ちそうになる。

 門も若干揺れた。倒れることを不安させるような揺れ方ではなかったが、上に乗る者を振り落とすには十分な揺れ方だった。

 門の上は元から人が乗る為に設計されてはいない。その為、塔よりも圧倒的に不安定かつ危険な場所だ。

 そんな場所が何の予告もなく揺れたらどうなるだろうか?

 想像に難く無いと思うが、勿論落下する。熟れた柿が自重に耐えられず木から落下するかの如く落下する。

 さて、上に乗っていたのは誰だろうか。森本翡翠だ。

 主任の命令で門の上に乗っていた翡翠は、爆発の時に何故か立っていた。ずっとしゃがんでいるのに疲れてしまったのだろうか。不安定な門の上で立ち上がり、背伸びしていた。

 そんな時に爆発が発生。すると、どうなるだろうか。ヒスイはバランスを取る事もできなければ、門にしがみつく事もできずに落下した。

 地上から約5mの位置からの落下。大怪我は免れない。何の訓練も受けていない一般人なら。

 翡翠は多くの受験者の中から門番に選ばれたエリートだ。落下時でも、自分の命の危機に晒されているならば、即座に身を守る対策を行う。

「『ロール』!!」

 自分を落下させた爆発から着想を得たのだろうか。地面に頭から着地する前に手から小さな爆発を発生させ、クッションにしたのだ。

 このワンクッションにより、落下のスピードは激減。大怪我から背中を痛める怪我へと大幅なダメージ軽減を成功させた。

「イテテ・・・」

「ヒ、ヒスイーー!大丈夫ー?」

「アンタ、何やってんのよー!!」

 何とか落下を免れたシャープと、モネはすぐさま翡翠に声をかける。

 背中を強打した影響か、肺の空気が全部出てしまい、数秒間喋れなかったが、右手でサムズアップをして生きていることを証明してみせた。

「へへ・・・マージで危なかった。ドッペルゲンガーに胸貫かれた以来の命の危機だったわ・・・ホント勘弁」

 これで一安心・・・というわけにはいかない。吹き飛ばされてきたザナの門番の救護と、爆発の原因について聞かなければ!!

 体が痛いながらも、立ち上がり門の先のザナを見る。草原や森は燃え、砂漠では砂埃が舞い、雪原の雪が溶けている。

 それだけでなく、まだ何かがこちらに向かって飛んできている。

 どんどん近づいてきて、ようやっとそれが人である事に気がついた。ボロボロのマントをかぶっていた為、粗大ゴミが飛んできたかと思った。

 このまま放っておいたら、リオ側の門を囲む壁に激突するのは目に見えている為、どっしりと構えて受け止める準備をする。

「きゃっ!」

 キャッチに成功すると同時にキャッチした人から可愛らしい声が聞こえてくる。声と体格から察するに少女だったようだ。

 セクハラになりかねないので、すぐさま降ろしてあげる。

「シャアァァァ・・・!!」

 警戒しているのだろうか、猫のような声を出して威嚇してきた。

 手のひらをこちらに向けていつでも魔術を打てるように構えている。魔術師なのだろうか。

 警戒を解くためにその娘と物理的に同じ目線になって会話を試みる。

「落ち着いて。俺は君に危害は加えな─────」

「っっ!!近寄るな!!」

 足が動いてしまったのが良くなかったのだろう。少女は更に警戒を強めてしまい、俺に向けてる手のひらから属性を付与していない魔力の塊をぶつけてきた。

「うお゛っ!!」

 無防備の状態でボクサーに殴られたような痛みが腹部に入る。

 突然の攻撃だったので、壁にこそ激突しなかったものの、大きく吹き飛ばされてしまう。

 かなりの威力だったこともあり、少女の顔を隠していたマントのフードが脱げる。

 フードが外れた少女の顔は唐辛子のように真っ赤だった。熱を帯びているというわけではなく、肌の色が赤なのだ。

 瞳は白で眼球結膜は黒。日本人の目の色を反転したかのような色合いだ。

 ピンクがかった長髪はパーマがかかったかのようにウェーブがかかっており、こめかみからは闘牛並に立派なツノが生えている。

 容姿に見覚えがあった。ザナの世界史の教科書の千年戦争の部分に使用されていた魔族の容姿と合致している。と言うことは彼女が─────。

「亡命者・・・ですね?」

 『亡命者』という言葉を聞いた瞬間、少女は俺への警戒をほんの少しだけ解いた。
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