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1章 就職!異世界の門日本支部!

7話 ボロアパートの隣人

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「ナイス反応。スピードと切れ味重視の剣術、素晴らしいね」

「ありがとうございます!何とか間に合って良かったです!」

 主任も近づいてきて真っ二つになった寄生草を確認する。

「血を結構吸ってたみたいだね~。多分、コイツがヘルファイガーを操ってたんじゃないかな?」

「でしょうね。けど、身体が植物の寄生草がどうやって炎の四肢を持つヘルファイガーに寄生したんでしょうか?寄生する前に燃えちゃいますけど」

「・・・確かにおかしいね。ちょっと研究者に送りつけてみようか。もしかしたら新種かも!」

「だとしたら大発見ですね!燃えない草。もしかしたら農業にも役立つかも!!」

 ここで、専門外の謎を追求しようとしても無駄骨だ。ならば、専門家に渡して調べさせた方が効率的に良いはず。

 主任は血塗れの寄生草を持ち上げると、事務室へと入っていった。

 そして、外に残されたのは3人。寄生草は既に除去した為、安全に解体作業が行えるだろう。

「さぁてと!やろっか!解体!」

「・・・はっ!そ、そうだね!!お昼前には終わらせないとね!!」

「え?そんなに時間かかるの?皮剥いで骨と肉と皮に分別するだけでしょ?」

「雑にやったら30分ぐらいでできるでしょうね。でも、剥製はなるべく綺麗に作らなくちゃいけないから、丁寧に剥ぐのよ。常識でしょ?」

「成る程、そう言う事ね。それじゃ、始めよっか!!」

「何でアンタが仕切ってんの!!」

 この後、マニュアルに基づいてヘルファイガーの解体が行われるが、出来が良いとは言い切れず、主任からも及第点をもらってしまった。

 それなら、剥製職人に頼めば良いのでは?と提案したが、頼む余裕すらない事を聞かされ、改めてこの職場の金欠具合に軽く絶望した。



 初日の業務はほとんど施設紹介や、初歩的な仕事を教えてもらうだけにとどまった。本格的な仕事は明日から始まるらしい。

 今日はザナからの入国者はおらず、更に魔物もヘルファイガーしか侵入してこなかったという圧倒的に平和な一日として終わりを告げた。

 夕方の19時になると、古傷が身体中のあちこちに目立つ強面の男性2人と女性2人が、武器を肩に担いでやってくる。

「おっ!お前が新人の坊主か!!ははっ!背の高い女は大好きだぜぇ?!」

「すんません!俺、男です!!」

「あら~♡とっても可愛いお顔ね。今度よかったらお姉さんと飲みに行かない?今は、休みが無いからいけないけど・・・」

「是非!お願いします!!」

 人員不足で悩んでいたこともあるだろうが、夜勤の人達は俺にとても優しかった。高校生の頃にしていた土木のバイトの職人さんを彷彿とさせる。

 1人1人の強さは、主任よりも少し弱い。自衛隊30人分ぐらいだろう。夜勤の方に戦力を偏らせているのは、夜勤が昼勤よりも遥かに厳しい仕事だからだろう。


 タイムカードを切り、夜勤の人達に手を振って退勤する。門は町の辺境にある為、帰路は途中まで4人共一緒だ。

町に到達した所で、主任がスーパーマーケットの方へと歩いていく。

「じゃあ、オレは買い物があるからこの辺で!3人共気をつけて帰りなよー!!」

 入店する際に、ポケットから畳んだエコバッグを出していた。レジ袋を買いたくない気持ち、とても良く分かる。

「じゃあ、僕はこの辺で!また明日~!」

 主任と別れて4分後。今度はシャープ君が自分のアパートに到着した為、別れを告げてきた。残されたのは、オレとモネさん。

「・・・・・・何?」

「いえ、何でもございません・・・」

 はっきり言って物凄く気まずい。今日会ったばかりだということもあって、話題が広げられない事をあるが、何よりも俺の事を嫌っていると分かっているせいで気まずさが増している。

「あの・・・どうして、俺の事が嫌いなのでございましょうか・・・?」

「分かんないわよ。でも、アンタのことが気に食わないだけ。てか、なんで敬語なわけ?」

「特に理由はございません・・・」

「ていうか、アンタいつまでついてくんの?良い加減にしないとその腕へし折るよ」

「マジ勘弁してください。こっちの道が最短ルートなんです・・・」

「ふんっ」

 やばい、早くこの場から抜け出したい。ていうかこの空気感でこれから毎日帰宅しなきゃいけないと思うと、気が病みそうだ。

 しょくばから自宅までの距離、約1.5km。時間にして20分ぐらいのはずなのに、1時間くらい歩いている錯覚するくらいには苦痛かつ嫌な時間だった。

 しかし、そんな時間は永遠には続かない。淡々と歩き続けていると、街灯に照らされたボロアパートが見えてくる。

 薄暗くて不気味なはずなのに、着いたと気づいた途端、天国と錯覚してしまうほどに嬉しかった。


「じゃあ!自分はこの辺で失礼します!また明日!!」

 意気揚々と帰ろうと、アパートの方向へと向かうが─────

「待って、待って!待って!!待って!!!」

「ん?何か問題でも?」

「大アリクイよ・・・あんたが今入ろうとしたアパート。アタシが住んでるんだけど・・・」

「・・・え?」

「もしかして、昨日隣に引っ越してきたのってアンタ?」

「えぇ・・・」

 神様は俺を見放した?それとも、見失ってしまったのか?
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