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1章 就職!異世界の門日本支部!

2話 交通機関の遅延原因はだいたい魔物

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 よく少年漫画の主人公は、入学初日や入社1日目で寝坊し、大目玉を喰らう。

 漫画ではギャグで済まされるが、現実ではそうはいかない。初日から遅刻したら当然怒られるし、今後の出世街道にも影響が出る。

 出勤時間は9時。アパートからしょくばまでは徒歩で15分。8時に起きれば余裕だが、初日で経路に不安があるので、7時半に起きて8時15分には家を出た。

 8時半には到着している予定だ。そして、現在時刻は8時32分。職場には・・・全くつけていない。

 原因は・・・魔物だ。門から出てきた魔物が町で暴れてしまい、警察が道を一時的に閉鎖してしまったのだ。

 出勤途中のサラリーマンも足を止めて、会社に遅刻の旨を伝えている。俺も事前に聞いておいた上司の電話番号から遅刻の電話をしようとしたが──────。

「いや、それはダサくないか?」

 魔物と戦う職についている者が、魔物に阻止されて遅刻。戦っていたのならまだしも、ただ邪魔されて遅刻。

 あまりにも格好がつかないのではないか?下手したら、「そんなヘタレはいらん!」なんて言われてしまうのではないのか?

 それだけは勘弁だ。折角門番職につけたのに、クビだけは御免だ!

「絶対に、遅刻なんてするもんかぁ!!」

 絶対に遅刻しないことを心に誓った翡翠。彼は、真横におった電柱をよじ登り、てっぺんまで到達すると、ジャンプで別の電柱へと移動を繰り返していく。

 電線を誤って踏まないように慎重に。けれども、迅速に移動する。

 警察も予想外の行動に驚いているようで、止める様子はない。どうしても立ち入らせたくなかったなら、空中も規制しておくべきだったな!!

「これで間に合うぜぇ!!ひゃっはぁー!!」

 遅刻の危機は避けることに成功した。後は閉鎖されていない道まで行って電柱から降りるのみ。

「ん?なんか熱いな・・・外にいるのにヒーターの熱風を浴びてるみたいだ・・・」

 熱風は地上の方から来ている模様。電柱から下を見てみると、何と炎が走っていた。比喩ではなく、目で見える情報そのものを伝えている。

 何事かと凝視すると、走る炎が魔物の一部であることに気がついた。炎を赤い毛の虎が四肢に纏っているのだ。

 魔物の名称はヘルファイガー。獰猛な肉食の動物として有名な魔物だ。男の大人2人分ぐらいの大きさから察するに成長しきった個体、大人のヘルファイガーだ。

 骨をも噛み砕く強靭な顎と骨をも焼き尽くし、灰にする炎を持つヘルファイガーは確かに強力な魔物だが、門番職は日常的にそのレベルの魔物と戦っているはず。

 なのにどうして居住地区への侵入を許してしまったのだろうか。

 気になって、電柱の上から数分間だけ眺めていると、ヘルファイガーを追いかけてきた女性の門番と一瞬だけ目が合った。

 本当に一瞬だったが、睨みつけられたような気がする。気を散らせてしまったのだろう。

 これ以上見ていると、警察にも仕事中の門番にも迷惑がかかる。その事に気づいた翡翠はさっさと電柱から降りて、門の方へと向かう。

 戦う門番達を背にして歩いていると、背中に視線を感じたが、気にしないようにしてしょくばを目指した。
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