上 下
3 / 191
1章 就職!異世界の門日本支部!

1話 魔物が出るから家賃安い!

しおりを挟む
「森山さん!この本棚はどこにおきます?」

「右の角っこで!」

「はい!了解っ!」

 時は経ち、場所は変わり、4月上旬のとある町のボロアパート。

 見事最終試験を突破した森山翡翠は地元から離れ、仕事場に近くて、安いボロアパートに引っ越してきた。

「築40年。けど、6畳ある上にシャワー付きのアパート一部屋が家賃たったの5000円だなんて破格にも程があるでしょ」

 ボロい以外は良物件。では、何故そんなに安いのか?

「いやいや、妥当だよ。だってここ、門がある町だし!」

「確かにそうかも」

 異世界への門は開きっぱなし。昔の氾濫した川の如く魔物が出てくる事は無くなったが、ゼロになったわけではない。今でも魔物が出てくるし、年間被害者も相当数いる。

 テラス窓から外を覗くと、約5キロ先に金属製の巨大な開かれた状態の門が見える。所々錆が目立つ巨大門こそが異世界への門であり、俺の勤務先でもある。

「森山さん、聞いた話だと門番だろ?あの実力者の中の実力者しか入れないっていう」

「はい!なんとか受かりましてね!」

「だったら、もっと良いところに住めば良いのに。ここから3万で高級マンションレベルの部屋に住めるのに」

「俺もぶっちゃけそっちの方に住みたかったんですけど、今は1円でも節約したい時期なんで!このボロアパートで我慢しようって思った次第です!」

「節約ねぇ~・・・あんま無理しちゃだめだよ?体壊すから」

「お気遣いありがとうございます!」

 それから10分も経たずに引っ越し作業は終了。引っ越し業者の人達は魔物に襲われるのを恐れてか、逃げるようにトラックに乗り、走り去ってしまった。

「時速70キロは出てるな、あれ・・・。荷物ぐちゃぐちゃにならないのかな?」

 他人の心配をする翡翠。自分の事を心配しなくても良いのだろうか・・・。

「うおっ!!」

 走っていくトラックを眺めていた翡翠を突風が襲う。洗濯物が遥か空に飛んでいってしまいそうな風は明らかに事前に生まれたものではなく、何らかの作用によって生まれたものだ。

 確認するべく空を見上げると、真っ白な雲が浮遊する空を、自由に飛ぶ鮮やかな緑色の羽を持った巨大鳥が我が物顔で飛行していた。

 視認した数秒後、門の方向から飛んできた一本の矢に貫かれる緑の鳥。飛ぶ体勢は崩れ、地上へと落下していく。落ちていく場所は何もない公園という名の空き地。遊具もなければ砂場もないただただ存在するだけの場所。

 緑の巨大鳥の体重に比例して、地面が揺れる。付近を歩いていた住民達も一目見て何事もなかったかのように歩き去っていく。

 正式名称異門町いもんちょう、別名終焉町しゅうえんちょう。ここに住む人達は、置かれている危険な状況に適応しきっているようだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

勇者に大切な人達を寝取られた結果、邪神が目覚めて人類が滅亡しました。

レオナール D
ファンタジー
大切な姉と妹、幼なじみが勇者の従者に選ばれた。その時から悪い予感はしていたのだ。 田舎の村に生まれ育った主人公には大切な女性達がいた。いつまでも一緒に暮らしていくのだと思っていた彼女らは、神託によって勇者の従者に選ばれて魔王討伐のために旅立っていった。 旅立っていった彼女達の無事を祈り続ける主人公だったが……魔王を倒して帰ってきた彼女達はすっかり変わっており、勇者に抱きついて媚びた笑みを浮かべていた。 青年が大切な人を勇者に奪われたとき、世界の破滅が幕を開く。 恐怖と狂気の怪物は絶望の底から生まれ落ちたのだった……!? ※カクヨムにも投稿しています。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!

夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ) 安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると めちゃめちゃ強かった! 気軽に読めるので、暇つぶしに是非! 涙あり、笑いあり シリアスなおとぼけ冒険譚! 異世界ラブ冒険ファンタジー!

いらないスキル買い取ります!スキル「買取」で異世界最強!

町島航太
ファンタジー
 ひょんな事から異世界に召喚された木村哲郎は、救世主として期待されたが、手に入れたスキルはまさかの「買取」。  ハズレと看做され、城を追い出された哲郎だったが、スキル「買取」は他人のスキルを買い取れるという優れ物であった。

処理中です...