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終章 3年後の平和

300話 手術痕

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 マックスオーナーから借りた馬の調子はすこぶる良く、時速50キロで北の地域へと突入した。

 走り方も豪快そのもので、小さい魔物なら臆せずに吹き飛ばしてしまっている。

「この馬、元は競走馬だったらしい。走りが段違いなのも納得だな」

 この調子なら、一日もかからずにゲリットまで到着しそう・・・と思っていたのだが、人生というのは上手くいかないものだ。

 北東と北の地域を繋ぐ橋が壊されてしまっていた。そして、向こう側には、ニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべる白いコボルト達がいる。どうやら故意に橋を破壊したみたいだ。

「うざ・・・ちょっと殺してくる。ファルコ」

「はいどうぞ」

 馬から降ろすと壊れて通れなくなった橋を一回の跳躍で飛び越え、白いコボルトの元へと到着した。

「ガウッ!?」

「ふんっ!!」

 ヘリナ先輩の拳がコボルト達の脳天を小突く。死んではいないが、しばらくは起き上がれないだろう。

「ファルコ、どうする?川を通る?」

「結構深いし、馬が低体温症になっちゃいますよ」

「そっか・・・う~~んどうしよう」

 橋を作り直そうにも、俺達3人に大工のスキルは無い。ヘリナ先輩のように飛び越えられるかと思ったけれども、向こう側との距離は10m程ある。馬には不可能だ。ヘリナ先輩も魔力を使ってたし。

 となると必然的に橋を作り直さなければならないが、大工はいないし、近くに木も無い。あるのは冷たい川の水だけ・・・。

「あ、こうすればいいじゃん。父さん、川の水を持ち上げてくれないかな?水の魔法で」

「分かった・・・『ウォーター』!!」

 壊れてしまった橋を埋めるように川の水が上がって来る。

「そんでもってコイツを凍らせる。『アイス』!」

 父さんが魔法で持ち上げてくれた川の水を氷の魔法で凍らせて足場を作る事に成功した。

「流石ファルコ!それじゃあ、行こうか!」

「ちょっと待ってください。さっきヘリナ先輩が倒したコボルト見せてください」

 気絶している白いコボルトを観察する。北の地域に広く生息している寒い地域限定のコボルトだ。スノーテイルズ所属時に何度か倒したことがある。

 そして知能と力は6歳児レベル。6歳の子供が大工が作った頑丈な橋を壊せるだろうか?いいや、壊せない。魔法でも使わない限りそれは不可能だ。

 もしかしたら俺の知っているコボルトとは少し違うかもしれない。そう思いながらコボルトの体を調べているとやはりあった。頭のてっぺんに手術痕。

「このコボルト、誰かの手によって改造されてるみたいですね」

 どんな手術かは分からないが、魔物に改造なんて変態行動はペピトーン一派以外ありえないだろう。益々北の地域が心配になってきた。
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