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1章 投げる冒険者
6話 村に襲う小さな侵略者
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俺の住んでいるブカの村は魔物の侵入対策の為に木製の柵で囲んでいる。魔物が近くに住んでいない村なりの最低限の対策というわけだ。
一度母さんと見に行った事があるが、隙間はあまりなく、小さい体の俺でも潜り抜ける事はできない。しかし、ブラッドウサギだとどうか分からない。逃げ切られてしまう前になんとしてでも追い付かなければ・・・。
「ん?血・・・?」
足場の草に血が付着している。一瞬手袋のかと思ったが、手袋に付着していた血は乾燥していた事を思い出した。更に、足元の血はまだ新しく、液体として地面に向かって僅かに流動している。
血は続いており、辿っていくと、先程のブラッドウサギの物だと分かった。動かなくなったブラッドウサギの口元に父さんの手袋が落ちている。
頭蓋が若干凹んでいる。頭を潰されて殺されたみたいだが、頭をぶつけたわけでもなければ、誰かに殺された訳でも無い。そもそも人は俺しかいない。じゃあ、一体誰が・・・その答えは、木の影から現れた。
背丈は俺と同じくらい。肌は緑で、手には棒切れ同然の棍棒。こちらも魔物図鑑で見た。小鬼・・・ゴブリンだ。
ゴブリンの目はしっかりと俺を捉えている。俺はここに来るまで、急いだので、かなりの足音を立てていた。ゴブリンがどのようにして侵入したのかは不明だが、俺が近付いている事に気づいて隠れていた。
ゲスい自信満々な笑みから、俺を簡単に殺せると踏んだのだろう。正解だ。今の俺はとてつもなく弱い。棍棒がゴブリンの頭上に持ち上がった瞬間、踵を返して逃げ─────。
「ふんっ!!」
ようとした瞬間、ゴブリンの醜い顔が宙を舞う。赤い血を振り撒きながら地面に落ちると、体も後を追うように倒れる。
「ファルコ!大丈夫か!?」
「父さん!!」
刎ねられた首の斬った痕は綺麗そのもの。美しさすら感じる。これが剣士としての父さんの実力。王国騎士になる予定だったというのは嘘では無かったみたいだ。
「勝手に走り出してやがって・・・危ないだろうが!それにしてもこのゴブリンは一体・・・」
「分かんない。父さんの手袋を盗んだブラッドウサギを殺したぐらいしか・・・」
「・・・少し辺りの柵を見に行くぞ。どこかが破壊されている確率が高い。他のゴブリンが潜んでいる可能性もある。離れるなよ?」
「・・・はい!」
慰めるように、父は俺の頭をポンポンと叩く。剣を片手に迷いなく歩く父の背中はいつもとは違う頼もしさを感じる。
どこにも行かせない為なのか、父は俺の手を握りながら、柵の方へと歩き始めた。
一度母さんと見に行った事があるが、隙間はあまりなく、小さい体の俺でも潜り抜ける事はできない。しかし、ブラッドウサギだとどうか分からない。逃げ切られてしまう前になんとしてでも追い付かなければ・・・。
「ん?血・・・?」
足場の草に血が付着している。一瞬手袋のかと思ったが、手袋に付着していた血は乾燥していた事を思い出した。更に、足元の血はまだ新しく、液体として地面に向かって僅かに流動している。
血は続いており、辿っていくと、先程のブラッドウサギの物だと分かった。動かなくなったブラッドウサギの口元に父さんの手袋が落ちている。
頭蓋が若干凹んでいる。頭を潰されて殺されたみたいだが、頭をぶつけたわけでもなければ、誰かに殺された訳でも無い。そもそも人は俺しかいない。じゃあ、一体誰が・・・その答えは、木の影から現れた。
背丈は俺と同じくらい。肌は緑で、手には棒切れ同然の棍棒。こちらも魔物図鑑で見た。小鬼・・・ゴブリンだ。
ゴブリンの目はしっかりと俺を捉えている。俺はここに来るまで、急いだので、かなりの足音を立てていた。ゴブリンがどのようにして侵入したのかは不明だが、俺が近付いている事に気づいて隠れていた。
ゲスい自信満々な笑みから、俺を簡単に殺せると踏んだのだろう。正解だ。今の俺はとてつもなく弱い。棍棒がゴブリンの頭上に持ち上がった瞬間、踵を返して逃げ─────。
「ふんっ!!」
ようとした瞬間、ゴブリンの醜い顔が宙を舞う。赤い血を振り撒きながら地面に落ちると、体も後を追うように倒れる。
「ファルコ!大丈夫か!?」
「父さん!!」
刎ねられた首の斬った痕は綺麗そのもの。美しさすら感じる。これが剣士としての父さんの実力。王国騎士になる予定だったというのは嘘では無かったみたいだ。
「勝手に走り出してやがって・・・危ないだろうが!それにしてもこのゴブリンは一体・・・」
「分かんない。父さんの手袋を盗んだブラッドウサギを殺したぐらいしか・・・」
「・・・少し辺りの柵を見に行くぞ。どこかが破壊されている確率が高い。他のゴブリンが潜んでいる可能性もある。離れるなよ?」
「・・・はい!」
慰めるように、父は俺の頭をポンポンと叩く。剣を片手に迷いなく歩く父の背中はいつもとは違う頼もしさを感じる。
どこにも行かせない為なのか、父は俺の手を握りながら、柵の方へと歩き始めた。
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