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3章 極悪囚人更生施設サルフル鉱山

63話 サルフル鉱山の訪問者

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 サルフル鉱山、ウォリア王国にて、殺人や貴族への強盗などを働いた極悪人を更生という名目で労働させる地獄のような場所。

 ここで聴こえてくるのは、岩を削る音と、爆発音と、鞭が空を切る音と、囚人達の悲鳴。

 鞭を振るうのは、監視役の兵士達。おいらもその中の1人だ。まだ、配属されてから2ヶ月の新人だが。

 戦場に送られて死にたくはなかったので、ここに送られてよかったとは思っている。しかし、そう思っているのはごくわずかなようだ。

 ウォリア王国は戦争国家という事もあってか、血の気の多い奴が多い。兵士達も例には漏れず血気盛んだ。そんな奴らが戦いもない囚人の監視役に選ばれるとどうなるだろうか?

 当然、ストレスの蓄積が発生する。戦いたいのに、囚人を監視しなければならない。ストレスはヒイヒイと喘ぐ囚人に向けられる。

 その結果が、鞭の音と囚人の悲鳴だ。聞くに耐えないが、先輩達は辞めようとしない。止めようとしたら、こちらに怒りが向けられる。

 だから、おいらはただただ黙って与えられた仕事をこなす他ない。今日与えられた仕事は門番。とてつもなく暇だが、囚人が逃げ出さないように見張る大変大事な仕事だ。

 そして、たまにくる来訪人の接客もしなければならない。その来訪人が今トンスの方角から2人の少女を連れた若い男。歳は多分おいらとは変わらない。しかし、目つきが断然俺よりも鋭くおいらよりも余程兵士に向いている気がする。

 正直言ってちょっと怖い。しかし、門番としての仕事はしっかりとこなさなくてはならないので、威厳を出すために声を低くして対応する。

「誰だ?要件を言え」

「旅の鍛治職人だ。仕事がほしい」

 旅の鍛治職人?聞いた事のない肩書きだ。鍛治職人というのは、町に定住して仕事をする者ではないのか?

「ここは囚人の労働場だ。お前に働ける場所はない」

「知ってる」

「なら、なぜ来た。もしかして自首か?なら大歓迎だぞ」

「それも違う。ここは鉱山、鉱石を掘る為には、最近は爆弾だろうが、それでもつるはしは必要だろう?」

「なるほど、そう言う事か・・・」

 旅の鍛治職人という肩書きはとても怪しいが、理には適っている。

 しかも、確か監視長が予備のつるはしがなくなってきたとか言う話をボソリと言ってたような気がするな・・・。

「スキルの開示をしてもらおうか」

「ああ」

 偽られたら怒られるのはおいらなので、自分の才の石を渡してスキルを確認する。

 スキルの欄には武器鍛治レベル5の表示がされているだけでなく、道具作成のスキルも低レベルながら持っていた。これはかなりの本物みたいだ。

「おいら・・・俺は下っ端だ。判断はできねぇ。監視長に直接相談しろ」

「分かった」

 旅の鍛治職人をおいらは監視長の元へと連れて行く事に決めた。悪い奴でもなければ、ただ純粋に仕事を求めているだけのように見えるからな。
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