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2章 稀代の超天才聖人錬金術師パァラちゃん
51話 存在の意味を求めて
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「・・・殺せ。10年は既に無駄になった」
「殺さなくてもそろそろだろう?」
「気づいていたか・・・ゲホッ!オエッ!!」
胃液が混じった血がサクセスの口から飛び出してくる。吐瀉物なのか、吐血なのか分からない物体の中には肉の塊のような物も混じっていた。
「お前は俺が作ったんだぞ?寿命くらい知ってる」
「だから捨てたんだろう?」
神妙な面持ちコクリと縦に頷くパァラ。一方、サクセスは不敵な笑みを浮かべていた。
「一体いつから魂が宿っていた?いや、いつから意識があったと言った方が良いか?」
「培養液の中にいる頃からずっとだよ。あの頃は、アンタを父親のように思ってたよ。まあ、喉が未発達で喋れなかった上に全身の筋肉が未発達だったから、何も伝えられずに捨てられたけどな」
「・・・本当に済まないと思っている」
「もう良いよ、故意にやったわけじゃないだろう?それが今際の際に知れて良かったよ」
サクセスは先程の怒りは嘘かと思えてしまう程に穏やかだった。
「捨てられた時、私は失敗作なんだとすぐに悟った。そしてその怒りを利用してここまで生きてきた。成功作だとお前に認めさせる為に。けど、無理だったよ、お前には届かなかった」
「だから、俺の知識を奪って、俺に成り代わろうとしたのか?自分の人生に意味を持たせるために」
「流石は天才錬金術師だな・・・そこまで分かるなんてな」
「当然だ」
世界の統治は、おまけにしか過ぎなかった。失敗作は、成功作になりたかっただけだった。自分の人生を無意味な物にしたくなかっただけだった。
「ああ、神よ。何で私をこの脆弱な体に収めたのだ・・・私が欲しかったのは、健康な肉体と幸せな家庭だった・・・それさえあれば私の存在に意味は生まれた」
サクセスが欲しかったのは、脆弱な体と優れた頭脳ではなかった。皆が想像する普通を求めていた。
「一応聞くが、予備の体はあるか?」
「・・・すまないが、この体しか作っていない」
「だよな・・・ハハッ」
乾いた笑いは、死の恐怖を紛らわせる。しかし、死を遠ざける効果はない。
「お前に幸せを与える事は出来なかった。だから約束する。お前の生きた意味は必ず俺が作る」
「・・ほんとか?」
「ああ、俺の名前に誓う」
「・・・ははっ、何でだろうな。普通ならそんな言葉信じないはずなのにアンタの言葉なら信用できる・・・・・・じゃあな」
別れを告げ、ゆっくりと目蓋を閉じる。しばらく見つめていたけれども、サクセスがもう一度目を開ける事は無かった。
「殺さなくてもそろそろだろう?」
「気づいていたか・・・ゲホッ!オエッ!!」
胃液が混じった血がサクセスの口から飛び出してくる。吐瀉物なのか、吐血なのか分からない物体の中には肉の塊のような物も混じっていた。
「お前は俺が作ったんだぞ?寿命くらい知ってる」
「だから捨てたんだろう?」
神妙な面持ちコクリと縦に頷くパァラ。一方、サクセスは不敵な笑みを浮かべていた。
「一体いつから魂が宿っていた?いや、いつから意識があったと言った方が良いか?」
「培養液の中にいる頃からずっとだよ。あの頃は、アンタを父親のように思ってたよ。まあ、喉が未発達で喋れなかった上に全身の筋肉が未発達だったから、何も伝えられずに捨てられたけどな」
「・・・本当に済まないと思っている」
「もう良いよ、故意にやったわけじゃないだろう?それが今際の際に知れて良かったよ」
サクセスは先程の怒りは嘘かと思えてしまう程に穏やかだった。
「捨てられた時、私は失敗作なんだとすぐに悟った。そしてその怒りを利用してここまで生きてきた。成功作だとお前に認めさせる為に。けど、無理だったよ、お前には届かなかった」
「だから、俺の知識を奪って、俺に成り代わろうとしたのか?自分の人生に意味を持たせるために」
「流石は天才錬金術師だな・・・そこまで分かるなんてな」
「当然だ」
世界の統治は、おまけにしか過ぎなかった。失敗作は、成功作になりたかっただけだった。自分の人生を無意味な物にしたくなかっただけだった。
「ああ、神よ。何で私をこの脆弱な体に収めたのだ・・・私が欲しかったのは、健康な肉体と幸せな家庭だった・・・それさえあれば私の存在に意味は生まれた」
サクセスが欲しかったのは、脆弱な体と優れた頭脳ではなかった。皆が想像する普通を求めていた。
「一応聞くが、予備の体はあるか?」
「・・・すまないが、この体しか作っていない」
「だよな・・・ハハッ」
乾いた笑いは、死の恐怖を紛らわせる。しかし、死を遠ざける効果はない。
「お前に幸せを与える事は出来なかった。だから約束する。お前の生きた意味は必ず俺が作る」
「・・ほんとか?」
「ああ、俺の名前に誓う」
「・・・ははっ、何でだろうな。普通ならそんな言葉信じないはずなのにアンタの言葉なら信用できる・・・・・・じゃあな」
別れを告げ、ゆっくりと目蓋を閉じる。しばらく見つめていたけれども、サクセスがもう一度目を開ける事は無かった。
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