盲目的な初恋の行方

玉菜きゃべつ

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7. 盲目的な初恋の行方

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「全く……兄上は、本当に貴女のことが分かっていない。こんなに食えない女性もなかなかいないというのに。ああ、以前貴女の妹に会話を聞かせたときと違って、この部屋の防音は完璧だから好きに喋ってくれていいよ」

「実の兄を暗殺しようとするような方に言われたくないですわ」



 リーリエは表情を消して言った。

 

「フランシーヌ姫がアレクシス様に嫁いでくだされば、隣国が後ろ盾となってくださる筈だったのに……」

「私は何もしていない」

「それはそうでしょう。隣国はこの国より栄えているし、王族の方々も強固に守られていらっしゃいますもの」



 フランシーヌが病に倒れるのは完全に予想外だった。

 とある魔術の研究成果を隣国に渡すのと引き換えに、隣国の姫に輿入れしてもらう約束を取り付けたところまでは良かった。

 それが、亡くなってしまうなんて。

 これではいつアレクシスがディートリヒに殺されるか分かったものではない。

 

 だから、廃嫡されるよう仕組んだのだ。

 王太子でなくなれば公爵家に婿入りさせることができる。

 そうすれば、絶対誰にも手出しはさせない。

 

 同じタイミングで邪魔になっていた異母妹を利用することにした。

 物ならいくら恵んであげても構わないが、公爵家の後継者の座は譲れない。

 

(だって、それはお母様が私に望んでいたことだもの)





 目につくところに魅了の術を書き残し、アレクシスに魅了の術が効くよう、ブローチにかけている術を書き換えた。

 あの魅了の術は元々一月程度で解けるようになっている。アレクシスはまもなく正気に戻るだろう。

 

 そして、公爵はクリスタが行ったことの責任を取る必要がある。公爵の座を退いてもらい、領地で蟄居してもらう予定だ。

 面倒事が全部片付いてよかった。

 

「ああ、それにしても……はは、結婚を申し込んだときの貴女の顔は見ものだった。貴女が表情を崩したところは初めて見た」



 ディートリヒが心底面白そうに言う。

 

「殿下があんまり気持ち悪いことを仰るからです。心にもないでしょうに」

「いいや? 本心だよ。貴女くらい性格が悪くて狡猾じゃないと国母は務まらないだろう」

「やめていただけます? ディートリヒ殿下と一緒になるなんて……想像するのも嫌なんですの」



 ディートリヒも別にリーリエのことを好いているわけではなく、どちらかというと嫌いであることは明白だ。

 お互い、同族嫌悪していることは分かっていたが、表面上は穏やかな関係を築いていた。



 嫌っている男と話しながらも、リーリエの心中は穏やかだった。

 もうすぐ、アレクシスを迎え入れることができる。

 

 

 絶対幸せにしてみせるわ、私の、私だけの、王子さま。
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