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1章 それはきっと必然の出会いで
12. 何事も挑戦
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日々ノアを付き合わせて様々な魔法の練習をしたが、シャーロットの魔法の技術はまるで向上しなかった。
威力の高い強力な魔法を使うことはできたが、逆に言うとそれしかできない。
奴隷にされる前は、危ない目に遭いそうになると軽い電撃を飛ばして身を守っていた。
あれなら慣れているしできるかも、と思ったのだが。
「君、僕のこと殺す気なの?」
「そういうつもりは全く無いんです! すみません! 悪気はないんです」
「よりタチ悪いんだけど……」
落雷を発生させてしまい、ノアに嫌味を言われてしまった。
ちょっとした電撃を飛ばそうとしただけなのにも関わらず、天から落ちてきた雷は正確に対象を射抜いていた。
咄嗟に分厚い防御魔法を張れるノアの様な実力者でなければ本当に死んでいたかもしれない。
ノアは無事だが辺りの地面は焦げ、芝からは煙が立ち上っていた。
ノアの方も大分慣れてきて、ほぼ無意識で最大出力の防御魔法を瞬時に張れるようになってきていた。
とはいえ、天下の魔王がそこまで出力の高い防御魔法を貼る機会などほぼない。
かなり無駄なスキルだった。
(まあ、魔王様なんだし。私が少々危なっかしくてもなんとかしてくれるわよね)
シャーロットはかなり身勝手なことを考えていた。実際のところ、かなりギリギリではあったのだが。
ノアに完全に匙を投げられるまで、シャーロットは魔法の練習に励んでいた。
◆◆◆
「私、魔道具作成とかなら出来ると思うんですよ」
「いや、魔道具の作成ってかなり繊細な魔力の制御技術が必要とされるからね。寝言は寝てから言ってくれる?」
「敷地の端の方に、誰も使ってない工房ありますよね? あそこ使ってもいいですか」
「話聞いてる?」
シャーロットも何も考えなしに言っている訳ではなかった。
原作の「シャーロット」は魔道具の作成を得意としており、度々魔道具を自作し、様々な危機を乗り越えていた。
同一人物なんだし、きっと自分にも出来る筈。シャーロットは本気で名案だと思っていた。
原作の「シャーロット」は幼い頃から魔法の鍛錬をしており、現在のシャーロットは魔法をきちんと扱うのは初めてだということは、その時は頭に無かった。
(何か技術を身に付けておかないと、万が一ここから逃げることになったとき困るだろうし)
シャーロットは、ノアが自分を側に置く理由について、魔族がルミナリアに侵攻する際に邪魔になるから味方につけようとしているのではないかと予想していた。
ノアは魔王だ。おそらくシャーロットが本物の聖女だということには気付いており、そこになにかしらの利用価値を見出しているのだろう。
ルミナリア側に付くのは嫌だが、かといって魔族と一緒に人を襲うのも嫌だ。
もしそういったことを強要された際は逃げ出す心積りだった。
ノアはため息をつきながら言った。
「まあ、やるだけやってみたら。君の言う未使用の工房の中にいらない宝飾品とかいっぱいあるから、あれ使ってもいいよ」
「ありがとうございます! いい物できたらあげますね」
シャーロットは機嫌よく工房に足を向けた。
後ろでノアがかなり微妙な顔をしているのは、勿論見えていなかった。
威力の高い強力な魔法を使うことはできたが、逆に言うとそれしかできない。
奴隷にされる前は、危ない目に遭いそうになると軽い電撃を飛ばして身を守っていた。
あれなら慣れているしできるかも、と思ったのだが。
「君、僕のこと殺す気なの?」
「そういうつもりは全く無いんです! すみません! 悪気はないんです」
「よりタチ悪いんだけど……」
落雷を発生させてしまい、ノアに嫌味を言われてしまった。
ちょっとした電撃を飛ばそうとしただけなのにも関わらず、天から落ちてきた雷は正確に対象を射抜いていた。
咄嗟に分厚い防御魔法を張れるノアの様な実力者でなければ本当に死んでいたかもしれない。
ノアは無事だが辺りの地面は焦げ、芝からは煙が立ち上っていた。
ノアの方も大分慣れてきて、ほぼ無意識で最大出力の防御魔法を瞬時に張れるようになってきていた。
とはいえ、天下の魔王がそこまで出力の高い防御魔法を貼る機会などほぼない。
かなり無駄なスキルだった。
(まあ、魔王様なんだし。私が少々危なっかしくてもなんとかしてくれるわよね)
シャーロットはかなり身勝手なことを考えていた。実際のところ、かなりギリギリではあったのだが。
ノアに完全に匙を投げられるまで、シャーロットは魔法の練習に励んでいた。
◆◆◆
「私、魔道具作成とかなら出来ると思うんですよ」
「いや、魔道具の作成ってかなり繊細な魔力の制御技術が必要とされるからね。寝言は寝てから言ってくれる?」
「敷地の端の方に、誰も使ってない工房ありますよね? あそこ使ってもいいですか」
「話聞いてる?」
シャーロットも何も考えなしに言っている訳ではなかった。
原作の「シャーロット」は魔道具の作成を得意としており、度々魔道具を自作し、様々な危機を乗り越えていた。
同一人物なんだし、きっと自分にも出来る筈。シャーロットは本気で名案だと思っていた。
原作の「シャーロット」は幼い頃から魔法の鍛錬をしており、現在のシャーロットは魔法をきちんと扱うのは初めてだということは、その時は頭に無かった。
(何か技術を身に付けておかないと、万が一ここから逃げることになったとき困るだろうし)
シャーロットは、ノアが自分を側に置く理由について、魔族がルミナリアに侵攻する際に邪魔になるから味方につけようとしているのではないかと予想していた。
ノアは魔王だ。おそらくシャーロットが本物の聖女だということには気付いており、そこになにかしらの利用価値を見出しているのだろう。
ルミナリア側に付くのは嫌だが、かといって魔族と一緒に人を襲うのも嫌だ。
もしそういったことを強要された際は逃げ出す心積りだった。
ノアはため息をつきながら言った。
「まあ、やるだけやってみたら。君の言う未使用の工房の中にいらない宝飾品とかいっぱいあるから、あれ使ってもいいよ」
「ありがとうございます! いい物できたらあげますね」
シャーロットは機嫌よく工房に足を向けた。
後ろでノアがかなり微妙な顔をしているのは、勿論見えていなかった。
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