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1章 それはきっと必然の出会いで
7. 消えたもの生まれるもの
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窓から差し込む日差しが眩しい。
もう随分日が高くなっているようだったが、悪夢の余韻もあり、シャーロットは起き上がらずにいた。
神殿にいたころは、日が昇る前に起きて女神ルミネに祈りを捧げていた。
この時間まで横になっているなんていつぶりだろうか。
折角解放されたのだ。少しくらいゆっくりしても良いだろう。
それに、どうせ祈ったところで神は助けてくれない。
(それにしても、アルベルト様……攻略対象だったのね)
金髪金眼、甘いマスクの理想の王子様。優しく、ヒロインの困ったときにはいつでも駆けつけてくれる。
それがゲーム上のアルベルトだった。
攻略対象とヒロイン。出会えば恋仲になるのは必然だったのだろうか。
(一度、ゲームの内容を整理しないと)
シャーロットが思い出せる内容はかなり断片的だった。
思い出そうとすればぼんやりと思い浮かぶが、わからない部分の方が多い。
大まかや設定やそれぞれのルートの冒頭はなんとなく思い出せるが、結末や細かい部分までは思い出すことができない。
今がどういう状況で、これからどうなるのか。本来のシナリオとの差異はなんなのか、一度整理する必要がある。
コンコン、とドアがノックされる。
やってきたのはノアだった。
ベッドから出ていないシャーロットを見て呆れた顔をしながら言う。
「あれ、まだ寝てたの。もうお昼だよ。巫女ならもっと早起きだと思ってた」
「いいんです。ここは魔導塔だもの。ルミネ様もこんなところまで見てないわ」
ノアは何も答えず肩を竦めると、シャーロットの横たわるベッドの上に腰かけた。
そして、シャーロットの手を取る。
突然触れられ固まっていると、ノアはシャーロットの手の甲をスッと撫でた。
シャーロットは神殿育ちのため男女のあれこれには疎かったが、年頃の少女らしく興味はしっかりとあった。顔の良い男に触れられて浮足立つ程度には。
シャーロットはパニックに陥った。
「あの、いや確かに婚約しましたが、そういうお付き合いはもうちょっと段階を踏んでからにしませんか……」
シャーロットが慌てて言うと、ノアは嫌な顔をした。
そして拗ねたような口調で言った。
「心外だな。ちょっとゴミを取ってあげただけなのに、そんな風に言われるなんて」
「ゴミ……ですか?」
そうは言われたが、手の甲には何もついていない。
(え?)
そう、何もついていなかった。
先ほどまでは確かにそこにあった奴隷紋が、痕跡も残さず消えていた。
まるで元々何もなかったかのように。
奴隷の魔力を封じる目的で刻まれる奴隷紋は、強力な呪いの一種だ。
呪いが魂に深く刻み込まれるため、無理に解除しようとすると魂を破損する恐れがある。
廃人になってしまうのだ。
無事に奴隷紋のみ取り除くには、かなり高度な魔法技術が必要になる。
よって、運よく魔力持ちの奴隷が脱走できたとしても、脱走奴隷が実力のある魔導士に奴隷紋の除去を依頼できるだけの金銭を用立てられるはずもなく、すぐに捕まるのがオチだった。
それをノアはあっさりと、それこそゴミでも払うように消して見せたのだった。
「君の魔力は今、完全に枯渇してる状態だ。でも、回復にはそう時間はかからない。そのうち魔法も使えるようになるだろう」
長年シャーロットを縛り付けていたものが消えた。
魔法が使える。力が戻ってくる。自分の身を守れる。
それがどんなに有り難いことか、シャーロットは身に染みて分かっていた。
突然の僥倖に、すぐには言葉が出てこない。
「あ、ありがとうございます……」
なんとかお礼を言うと、ノアは無表情で答えた。
「期待してるよ、婚約者さん。あ、それと」
ちょっと悪戯っぽく笑って続ける。
「もうちょっと段階を踏めば、そういうお付き合いしても良いの?」
シャーロットは全身の血が顔に集まるのを感じた。羞恥で顔が熱い。
何も答えられないシャーロットを見て、ノアはクスクス笑いながら出て行った。
もう随分日が高くなっているようだったが、悪夢の余韻もあり、シャーロットは起き上がらずにいた。
神殿にいたころは、日が昇る前に起きて女神ルミネに祈りを捧げていた。
この時間まで横になっているなんていつぶりだろうか。
折角解放されたのだ。少しくらいゆっくりしても良いだろう。
それに、どうせ祈ったところで神は助けてくれない。
(それにしても、アルベルト様……攻略対象だったのね)
金髪金眼、甘いマスクの理想の王子様。優しく、ヒロインの困ったときにはいつでも駆けつけてくれる。
それがゲーム上のアルベルトだった。
攻略対象とヒロイン。出会えば恋仲になるのは必然だったのだろうか。
(一度、ゲームの内容を整理しないと)
シャーロットが思い出せる内容はかなり断片的だった。
思い出そうとすればぼんやりと思い浮かぶが、わからない部分の方が多い。
大まかや設定やそれぞれのルートの冒頭はなんとなく思い出せるが、結末や細かい部分までは思い出すことができない。
今がどういう状況で、これからどうなるのか。本来のシナリオとの差異はなんなのか、一度整理する必要がある。
コンコン、とドアがノックされる。
やってきたのはノアだった。
ベッドから出ていないシャーロットを見て呆れた顔をしながら言う。
「あれ、まだ寝てたの。もうお昼だよ。巫女ならもっと早起きだと思ってた」
「いいんです。ここは魔導塔だもの。ルミネ様もこんなところまで見てないわ」
ノアは何も答えず肩を竦めると、シャーロットの横たわるベッドの上に腰かけた。
そして、シャーロットの手を取る。
突然触れられ固まっていると、ノアはシャーロットの手の甲をスッと撫でた。
シャーロットは神殿育ちのため男女のあれこれには疎かったが、年頃の少女らしく興味はしっかりとあった。顔の良い男に触れられて浮足立つ程度には。
シャーロットはパニックに陥った。
「あの、いや確かに婚約しましたが、そういうお付き合いはもうちょっと段階を踏んでからにしませんか……」
シャーロットが慌てて言うと、ノアは嫌な顔をした。
そして拗ねたような口調で言った。
「心外だな。ちょっとゴミを取ってあげただけなのに、そんな風に言われるなんて」
「ゴミ……ですか?」
そうは言われたが、手の甲には何もついていない。
(え?)
そう、何もついていなかった。
先ほどまでは確かにそこにあった奴隷紋が、痕跡も残さず消えていた。
まるで元々何もなかったかのように。
奴隷の魔力を封じる目的で刻まれる奴隷紋は、強力な呪いの一種だ。
呪いが魂に深く刻み込まれるため、無理に解除しようとすると魂を破損する恐れがある。
廃人になってしまうのだ。
無事に奴隷紋のみ取り除くには、かなり高度な魔法技術が必要になる。
よって、運よく魔力持ちの奴隷が脱走できたとしても、脱走奴隷が実力のある魔導士に奴隷紋の除去を依頼できるだけの金銭を用立てられるはずもなく、すぐに捕まるのがオチだった。
それをノアはあっさりと、それこそゴミでも払うように消して見せたのだった。
「君の魔力は今、完全に枯渇してる状態だ。でも、回復にはそう時間はかからない。そのうち魔法も使えるようになるだろう」
長年シャーロットを縛り付けていたものが消えた。
魔法が使える。力が戻ってくる。自分の身を守れる。
それがどんなに有り難いことか、シャーロットは身に染みて分かっていた。
突然の僥倖に、すぐには言葉が出てこない。
「あ、ありがとうございます……」
なんとかお礼を言うと、ノアは無表情で答えた。
「期待してるよ、婚約者さん。あ、それと」
ちょっと悪戯っぽく笑って続ける。
「もうちょっと段階を踏めば、そういうお付き合いしても良いの?」
シャーロットは全身の血が顔に集まるのを感じた。羞恥で顔が熱い。
何も答えられないシャーロットを見て、ノアはクスクス笑いながら出て行った。
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