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閉じ込められました
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指導室という名の立派な応接間に通されて。以後気をつけるように! なんて軽めの注意を教師から受けた私たちは、なんともあっさり解放された。
これって呼び出す必要あったの……?
首を捻れば、隣の親切男子――アスラが声を掛けてきた。
ちなみに彼のアスラ・セクリーという名は、呼び出し時に教師が口にしていたので覚えておいた。
「どうした?」
「……いや、なんかあっさり終わったなぁと思いまして」
「そうか? 呼び出しなんてこんなもんだろ」
アスラは興味無さげに答えると、大きな欠伸なんかをしていたりして。
そういえば、私が起こさなければもっと眠れたんだよね……。しかも、怒られることもなかっただろうし……。
なんて沸々と湧いてくる申し訳なさから「そういえば、ごめんなさい」なんて軽く謝れば「なにが?」と、まるで素っ頓狂な返事が返ってきたのだった。
なにが? って。それなりに結構迷惑掛けたと思うんだけど……。
「ほら、私が石なんか当てて話しかけなければ、まだ眠れたし怒られなかったでしょ?」
「あ――、まぁ。でも、その代わりに俺はアンタとの会話を楽しんだんだから、謝ることじゃねぇよ」
気さくな笑顔でそう言われ、何もいえなくなった。
いい人だなぁ……とか思う。
「そういえば、結局アンタの用ってなんだったんだ? 別にルビーの鑑定が本命ってわけでもないだろ」
「あぁ……。えっと、教科書を見せてもらおうと思ったんですよ」
「教科書? あ――、忘れたのか」
「……まぁ、そんな感じです」
その話しようなら、アスラはきっと寝てたりして犯行を目撃してはいないんだろう。それなら、わざわざ嫌な気持ちにさせる必要もない。
そんなわけで、私は適当に誤魔化しながら、ちょうど窓から敷地内を流れる川へと目をキョロキョロ動かした。
多分ここら辺に投げ捨てられてるはずなんだよねぇ……。
ざっと見では中々見つからず、歩きながらも目を皿にしてサーチする。
けれど、校舎内から確認できる範囲からは、一向にその存在を見つけることは出来なかった。
前・の・よ・う・に・、外に出て探すような時間はすでに残されていない。次の授業があと十分程度で始まってしまうのだ。
それなら……。
「では、私は少し上に用事があるので……」
指導室があるのは校舎四階部、私たちの教室は三階だ。普通は下がるところなので、一応ここで別れを告げておく。
手をヒラヒラさせてから、急ぎ足で登っていけば、中段あたりで思い切り後ろに転びそうになった。
「――っわ‼︎」
「おっと!」
理由は、手を後ろから引っ張られたから。しかも思い切り。普通に危ない! おっと、じゃない!
「なにするんですか……」
不安定に崩した私の全身を、力強く片腕で支える様はさぞかしヒーローっぽいんだろうなぁとか思いながら、私は呆れ顔をアスラへと向けていった。
「いや、上は屋上しかないから伝えておこうと思って」
言いながら、アスラは私の身をそっと正しい位置へと戻していく。
私は、ありがとうと言うべきか少し迷いつつも、一応お礼を言った。
「知ってます。屋上に用事があるんですから」
刻々と時間が迫っている今、こんなトークタイムはタイムロスも甚だしい。早く上に上がりたい私の語勢はやや強くなる。
「用事……? でも、じきに鐘がなる時間だぞ?」
「はい、授業の前に確認しておきたいので、急ぎます。すみませんが、行きますね。では――⁉︎」
捲し立てるように説明し、前を向く。しかし、アスラを巻こうと再び進めた足は、片足一歩で勢いを止めることになるのだった。
無論、またアスラに腕を引っ張られたから。
流石にムッとした私は、表情にダイレクトに反映させて、苛立ちあらわでアスラを吠える。
「……だから。なんですか!」
いち早く、鞄と教科書の所在を確認したいのに! 川になければそれこそ何処なのか、首謀者を今日中に問い詰めねばならないのだから。
しかし、アスラは落ち着いた表情で。なんならうっすら笑みすら浮かべつつ、
「なら、俺も手伝おう。なんかお前、急いでるみたいだしな」
「いや、別に……」
言い掛けて、考え直す。
だだっ広い校舎なのだ、屋上だってそれなりに広いはず。
ならば、人手はあった方が絶対に良い! 時間もないし!
そんなわけで私は態度体躯、共にクルリと翻し、空いた手でアスラの手をガシリと握り締めた。
「お……、お願いできますか⁉︎」
「おう、任せておけ!」
快い返事してくれたアスラに、笑みを向け。握った手を今度は私が引っ張り上げて、階段を駆け上がった。
体力はそこそこ自信があるはずだったけど、この宝石等々絢爛に纏われたドレスは非常に重く。ちょっと上がったところで、選手交代、アスラに引っ張り上げて貰うことになった。
これだけでも、一緒に来てもらった甲斐がある。どうかそのスラリと伸びた高身長を生かして、広々見渡し、私の鞄と教科書を見つけてくれ!
そんな他力本願を願いつつも、私たちは屋上扉へと手を掛けた。
はずだったけど。
「流石にこれは想定外だわ……」
開始も僅か数分で、私たちは突如降り注ぐゲリラ豪雨の中、本日最後の始鈴を聞くことになってしまったのだった。
これって呼び出す必要あったの……?
首を捻れば、隣の親切男子――アスラが声を掛けてきた。
ちなみに彼のアスラ・セクリーという名は、呼び出し時に教師が口にしていたので覚えておいた。
「どうした?」
「……いや、なんかあっさり終わったなぁと思いまして」
「そうか? 呼び出しなんてこんなもんだろ」
アスラは興味無さげに答えると、大きな欠伸なんかをしていたりして。
そういえば、私が起こさなければもっと眠れたんだよね……。しかも、怒られることもなかっただろうし……。
なんて沸々と湧いてくる申し訳なさから「そういえば、ごめんなさい」なんて軽く謝れば「なにが?」と、まるで素っ頓狂な返事が返ってきたのだった。
なにが? って。それなりに結構迷惑掛けたと思うんだけど……。
「ほら、私が石なんか当てて話しかけなければ、まだ眠れたし怒られなかったでしょ?」
「あ――、まぁ。でも、その代わりに俺はアンタとの会話を楽しんだんだから、謝ることじゃねぇよ」
気さくな笑顔でそう言われ、何もいえなくなった。
いい人だなぁ……とか思う。
「そういえば、結局アンタの用ってなんだったんだ? 別にルビーの鑑定が本命ってわけでもないだろ」
「あぁ……。えっと、教科書を見せてもらおうと思ったんですよ」
「教科書? あ――、忘れたのか」
「……まぁ、そんな感じです」
その話しようなら、アスラはきっと寝てたりして犯行を目撃してはいないんだろう。それなら、わざわざ嫌な気持ちにさせる必要もない。
そんなわけで、私は適当に誤魔化しながら、ちょうど窓から敷地内を流れる川へと目をキョロキョロ動かした。
多分ここら辺に投げ捨てられてるはずなんだよねぇ……。
ざっと見では中々見つからず、歩きながらも目を皿にしてサーチする。
けれど、校舎内から確認できる範囲からは、一向にその存在を見つけることは出来なかった。
前・の・よ・う・に・、外に出て探すような時間はすでに残されていない。次の授業があと十分程度で始まってしまうのだ。
それなら……。
「では、私は少し上に用事があるので……」
指導室があるのは校舎四階部、私たちの教室は三階だ。普通は下がるところなので、一応ここで別れを告げておく。
手をヒラヒラさせてから、急ぎ足で登っていけば、中段あたりで思い切り後ろに転びそうになった。
「――っわ‼︎」
「おっと!」
理由は、手を後ろから引っ張られたから。しかも思い切り。普通に危ない! おっと、じゃない!
「なにするんですか……」
不安定に崩した私の全身を、力強く片腕で支える様はさぞかしヒーローっぽいんだろうなぁとか思いながら、私は呆れ顔をアスラへと向けていった。
「いや、上は屋上しかないから伝えておこうと思って」
言いながら、アスラは私の身をそっと正しい位置へと戻していく。
私は、ありがとうと言うべきか少し迷いつつも、一応お礼を言った。
「知ってます。屋上に用事があるんですから」
刻々と時間が迫っている今、こんなトークタイムはタイムロスも甚だしい。早く上に上がりたい私の語勢はやや強くなる。
「用事……? でも、じきに鐘がなる時間だぞ?」
「はい、授業の前に確認しておきたいので、急ぎます。すみませんが、行きますね。では――⁉︎」
捲し立てるように説明し、前を向く。しかし、アスラを巻こうと再び進めた足は、片足一歩で勢いを止めることになるのだった。
無論、またアスラに腕を引っ張られたから。
流石にムッとした私は、表情にダイレクトに反映させて、苛立ちあらわでアスラを吠える。
「……だから。なんですか!」
いち早く、鞄と教科書の所在を確認したいのに! 川になければそれこそ何処なのか、首謀者を今日中に問い詰めねばならないのだから。
しかし、アスラは落ち着いた表情で。なんならうっすら笑みすら浮かべつつ、
「なら、俺も手伝おう。なんかお前、急いでるみたいだしな」
「いや、別に……」
言い掛けて、考え直す。
だだっ広い校舎なのだ、屋上だってそれなりに広いはず。
ならば、人手はあった方が絶対に良い! 時間もないし!
そんなわけで私は態度体躯、共にクルリと翻し、空いた手でアスラの手をガシリと握り締めた。
「お……、お願いできますか⁉︎」
「おう、任せておけ!」
快い返事してくれたアスラに、笑みを向け。握った手を今度は私が引っ張り上げて、階段を駆け上がった。
体力はそこそこ自信があるはずだったけど、この宝石等々絢爛に纏われたドレスは非常に重く。ちょっと上がったところで、選手交代、アスラに引っ張り上げて貰うことになった。
これだけでも、一緒に来てもらった甲斐がある。どうかそのスラリと伸びた高身長を生かして、広々見渡し、私の鞄と教科書を見つけてくれ!
そんな他力本願を願いつつも、私たちは屋上扉へと手を掛けた。
はずだったけど。
「流石にこれは想定外だわ……」
開始も僅か数分で、私たちは突如降り注ぐゲリラ豪雨の中、本日最後の始鈴を聞くことになってしまったのだった。
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