10 / 37
初夜オムニバス1・献身の初夜
面倒臭い女に2
しおりを挟む
「お願いします。わわ、私と……。私を、抱いてください!」
叫べば、ラシュエル様は本を置いた。私を真っ直ぐに見つめた。
「何故?」
「何故って……。それは夫婦だから……」
「別に急くことではない、帰れ」
「嫌です! 早く、早くしないと……」
私はきっと婚期を逃してしまう。
そしたら、その先どう生きていけばいいかわからない。
私は、お姉様のように上手く立ち回れない。いずれお父様お母様が亡くなって、一人で生きていく自身はない。
「……お願いします」
情けない声が出た。
やがてラシュエル様が腰を上げた。私に近づいて、顎を掬い上げられた。
綺麗なお顔が私の眼前に。目を閉じたら、唇に柔いものが添えられた。
ストールが落とされていく。肩に腕に、優しい手指が肌に触れる。
ラシュエル様の表情は、いつもと違うような気がした。
最後だ。最後なんだ。もう見れない。会えない。お話できない。
お出掛けも読書も、全て終わってしまう。
「やめるか?」
「えっ」
「何一つ楽しそうではない」
「……そ、そんなことは」
「恐れてするものでもない」
「ち、違います。そんなことは……。き、緊張をしているだけで……」
顔を逸らした。
お姉様の猥本にはなんて書いてあったっけ?
あぁ、そうだ……。
「私は、ラシュエル様をお慕いしておりますので、恥ずかしいのです」
涙が出そうになった。ラシュエル様の瞳が揺れた気がした。
私はラシュエル様を抱きしめて。
無事に初夜を終えることが出来た。
「ありがとうございます、ラシュエル様。ありがとうございました」
『拝啓 お姉様
任務完遂致しました』
『ありがとう。帰還せよ』
翌日、私は屋敷を出た。
実家に用事があると言って出た。
叫べば、ラシュエル様は本を置いた。私を真っ直ぐに見つめた。
「何故?」
「何故って……。それは夫婦だから……」
「別に急くことではない、帰れ」
「嫌です! 早く、早くしないと……」
私はきっと婚期を逃してしまう。
そしたら、その先どう生きていけばいいかわからない。
私は、お姉様のように上手く立ち回れない。いずれお父様お母様が亡くなって、一人で生きていく自身はない。
「……お願いします」
情けない声が出た。
やがてラシュエル様が腰を上げた。私に近づいて、顎を掬い上げられた。
綺麗なお顔が私の眼前に。目を閉じたら、唇に柔いものが添えられた。
ストールが落とされていく。肩に腕に、優しい手指が肌に触れる。
ラシュエル様の表情は、いつもと違うような気がした。
最後だ。最後なんだ。もう見れない。会えない。お話できない。
お出掛けも読書も、全て終わってしまう。
「やめるか?」
「えっ」
「何一つ楽しそうではない」
「……そ、そんなことは」
「恐れてするものでもない」
「ち、違います。そんなことは……。き、緊張をしているだけで……」
顔を逸らした。
お姉様の猥本にはなんて書いてあったっけ?
あぁ、そうだ……。
「私は、ラシュエル様をお慕いしておりますので、恥ずかしいのです」
涙が出そうになった。ラシュエル様の瞳が揺れた気がした。
私はラシュエル様を抱きしめて。
無事に初夜を終えることが出来た。
「ありがとうございます、ラシュエル様。ありがとうございました」
『拝啓 お姉様
任務完遂致しました』
『ありがとう。帰還せよ』
翌日、私は屋敷を出た。
実家に用事があると言って出た。
0
お気に入りに追加
727
あなたにおすすめの小説
王太子殿下の執着が怖いので、とりあえず寝ます。【完結】
霙アルカ。
恋愛
王太子殿下がところ構わず愛を囁いてくるので困ってます。
辞めてと言っても辞めてくれないので、とりあえず寝ます。
王太子アスランは愛しいルディリアナに執着し、彼女を部屋に閉じ込めるが、アスランには他の女がいて、ルディリアナの心は壊れていく。
8月4日
完結しました。
男と女の初夜
緑谷めい
恋愛
キクナー王国との戦にあっさり敗れたコヅクーエ王国。
終戦条約の約款により、コヅクーエ王国の王女クリスティーヌは、"高圧的で粗暴"という評判のキクナー王国の国王フェリクスに嫁ぐこととなった。
しかし、クリスティーヌもまた”傲慢で我が儘”と噂される王女であった――
【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜
七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。
ある日突然、兄がそう言った。
魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。
しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。
そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。
ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。
前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。
これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。
※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です
目を覚ましたら、婚約者に子供が出来ていました。
霙アルカ。
恋愛
目を覚ましたら、婚約者は私の幼馴染との間に子供を作っていました。
「でも、愛してるのは、ダリア君だけなんだ。」
いやいや、そんな事言われてもこれ以上一緒にいれるわけないでしょ。
※こちらは更新ゆっくりかもです。
夫が浮気先から帰らないので兄上とお茶してきます!
月歌(ツキウタ)
恋愛
夫のセドリック・アシュフォードには本命の女がいる。妾として囲っていた女ミア・グリーンが男子を産んでからは、家に帰ってこないことも多い。辛くなった妻のヴィオレットは娘のリリアーナを連れて時折実家に里帰りする。今日も兄のアルフォンス・ルーベンスとお茶をしながら愚痴をこぼす。
☆作者プロフィール☆
商業BL小説を書いています。
よろしくお願いします🙇
「嫌われ悪役令息は王子のベッドで前世を思い出す」(アンダルシュノベルズより刊行中)
ゼラニウムの花束をあなたに
ごろごろみかん。
恋愛
リリネリア・ブライシフィックは八歳のあの日に死んだ。死んだこととされたのだ。リリネリアであった彼女はあの絶望を忘れはしない。
じわじわと壊れていったリリネリアはある日、自身の元婚約者だった王太子レジナルド・リームヴと再会した。
レジナルドは少し前に隣国の王女を娶ったと聞く。だけどもうリリネリアには何も関係の無い話だ。何もかもがどうでもいい。リリネリアは何も期待していない。誰にも、何にも。
二人は知らない。
国王夫妻と公爵夫妻が、良かれと思ってしたことがリリネリアを追い詰めたことに。レジナルドを絶望させたことを、彼らは知らない。
彼らが偶然再会したのは運命のいたずらなのか、ただ単純に偶然なのか。だけどリリネリアは何一つ望んでいなかったし、レジナルドは何一つ知らなかった。ただそれだけなのである。
※タイトル変更しました
王太子殿下の想い人が騎士団長だと知った私は、張り切って王太子殿下と婚約することにしました!
奏音 美都
恋愛
ソリティア男爵令嬢である私、イリアは舞踏会場を離れてバルコニーで涼んでいると、そこに王太子殿下の逢引き現場を目撃してしまいました。
そのお相手は……ロワール騎士団長様でした。
あぁ、なんてことでしょう……
こんな、こんなのって……尊すぎますわ!!
愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。
星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。
グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。
それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。
しかし。ある日。
シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。
聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。
ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。
──……私は、ただの邪魔者だったの?
衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる