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初夜オムニバス1・献身の初夜

面倒臭い女に2

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「お願いします。わわ、私と……。私を、抱いてください!」
 叫べば、ラシュエル様は本を置いた。私を真っ直ぐに見つめた。
「何故?」
「何故って……。それは夫婦だから……」
「別に急くことではない、帰れ」
「嫌です! 早く、早くしないと……」
 私はきっと婚期を逃してしまう。
 そしたら、その先どう生きていけばいいかわからない。
 私は、お姉様のように上手く立ち回れない。いずれお父様お母様が亡くなって、一人で生きていく自身はない。
「……お願いします」
 情けない声が出た。
 やがてラシュエル様が腰を上げた。私に近づいて、顎を掬い上げられた。
 綺麗なお顔が私の眼前に。目を閉じたら、唇に柔いものが添えられた。
 ストールが落とされていく。肩に腕に、優しい手指が肌に触れる。
 ラシュエル様の表情は、いつもと違うような気がした。
 最後だ。最後なんだ。もう見れない。会えない。お話できない。
 お出掛けも読書も、全て終わってしまう。
「やめるか?」
「えっ」
「何一つ楽しそうではない」
「……そ、そんなことは」
「恐れてするものでもない」
「ち、違います。そんなことは……。き、緊張をしているだけで……」
 顔を逸らした。
 お姉様の猥本にはなんて書いてあったっけ?
 あぁ、そうだ……。
「私は、ラシュエル様をお慕いしておりますので、恥ずかしいのです」
 涙が出そうになった。ラシュエル様の瞳が揺れた気がした。
 私はラシュエル様を抱きしめて。
 無事に初夜を終えることが出来た。
「ありがとうございます、ラシュエル様。ありがとうございました」

『拝啓 お姉様
 任務完遂致しました』
 
『ありがとう。帰還せよ』

 翌日、私は屋敷を出た。
 実家に用事があると言って出た。
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