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異世界へ
0082話
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「ソフィア様、敵が撤退を開始しました。追撃を行いますか?」
「いえ、必要ないわ。今の状況を考えれば、ここで追撃を行うだけの戦力を出すのは勿体ないもの。今はまず、他の敵の襲撃に備えましょう」
ソフィアの指示に従い、その場にいた者たちは戦闘が終わったということで休憩する。
そんな中、イオはかなり手持ち無沙汰だった。
杖があるので魔法は使えるものの、普通のメテオを使う訳にはいかない。
であれば、ミニメテオくらいしか使えないのだが……魔法を使ってから発動するまでタイムラグがある以上、乱戦の中では使いにくい。
そのような手持ち無沙汰なままで周囲を見ながら、ふと思う。
(パトリックはあのまま逃がすよりも、こっちの指揮下において戦力として使った方がよかったんじゃないか? ……まぁ、今更の話だけど)
パトリックたちが黎明の覇者と接触したというのは、他の勢力にも何らかの方法で知られたのだろう。
パトリックたちと同じく、他の勢力もソフィアたちと接触してくる者が多かった。
ただしパトリックたちと違うのは、逃がして欲しいと希望するのではなく、見逃してやるからベヒモスの素材を渡せと要求してきたことだ。
イオを寄越せと言わない辺り、ある程度譲歩はしているつもりなのかもしれない。
だからといって、これで大人しく退くからベヒモスの――骨になっていて正確な名前は分からなかったが、とにかくこの巨大なモンスターの――素材を寄越せという言葉に、ソフィアが頷く訳がない。
ベヒモスの素材というだけで、非常に大きな価値があるのだ。
ましてや、このベヒモスは黎明の覇者の新人たちが必死になって倒したモンスターだった。
そんなモンスターの素材を、そう簡単に渡せるはずがない。
何よりも、このモンスターの素材の所有権はイオにもある。
そしてイオは黎明の覇者の客人ではあっても、そこに所属する傭兵ではない。
そうである以上、勝手にその素材を渡すといった真似は出来なかった。
……実際には、この場にイオがいるし、ベヒモスを倒した者たちも揃っている。
そういう意味では、もしソフィアに素材を渡すつもりがあるのなら、イオや新人たちと相談するといったことは出来たのだが……ソフィアは最初からそのようなことをするつもりはなかった。
結果として、向こうも妥協した条件を却下され……それで退くに退けなくなり、攻撃をしてきて、それをソフィアたちが撃退したというのが今の状況だった。
「また他の馬鹿たちが来る可能性があるから、休憩しつつ、周囲の警戒もしておきなさい」
普通なら休憩しつつ周囲の警戒をするというのは難しい。
それこそどちらか片方だけなら何の問題もないだろうが。
休憩の方に力を入れすぎれば、どうしても警戒が疎かになってしまう。
警戒の方に集中しすぎれば、休憩の意味がなくなる。
しかし、この場にいる者たちは黎明の覇者に所属する傭兵だ。
黎明の覇者の中では新人と呼ばれている者たちも、他の傭兵団に行けば即戦力として主戦力になれるだけの力は持っているのが大半だった。
そうである以上、ほとんどの者が休憩しつつ警戒をするといったことも普通に出来る。
黎明の覇者に所属したばかりのレックスや、そもそも傭兵ではないイオのような存在もいるが。
イオは客人ということや、いざというときに流星魔法を使ってもらうために警戒はしなくてもいいので、ゆっくり休むようにと言われている。
いざ流星魔法を使うようになったとき、イオが疲れていて魔法が発動しなかったり、あるいは発動しても狙いがそれて自分たちの方に隕石が降ってきたりといったようなことになったら致命的なのだから。
実際には馬車で走りながらでもきちんと狙い通りに魔法を発動させて命中させたのだから、そういう意味では特に問題がないとイオ本人は思っている。
とはいえ、それはあくまでもイオがそう思っているだけで、実際にどうなるのかというのは分からない以上、念には念を入れた方がいいのは間違いなかった。
そしてレックスの方は……ゆっくりと出来るイオとは違い、先輩たちからビシバシと鍛えられている。
元々レックスはイオの防御を任されている存在だ。
この先どうなるのかは分からないが、今の状況ではそうなってしまう。
ただでさえ黎明の覇者が連れて来たのは精鋭ばかりで、どうしても数は少ないのだ。
だからこそ、イオの護衛に人員を割く訳にはいかない。
もちろんイオの存在が非常に重要だというのは、全員が分かっている。
だが、それでも今の人数を考えると、出来ればレックスに護衛をして貰いたいと思うのは当然だった。
レックスもそれは理解しており、何よりも自分の恩人でもあるイオの護衛をするのは望むところなので、先輩たちからの厳しい指導も真剣に聞いていた。
具体的にはどのくらいのことが自分に出来るのか。
それを知ることこそが、今の状況では重要なことなのだ。
だからこそ、レックスは戦いが終わったばかりだというのに、先輩たちの話を聞いて少しでもそれを今の自分の力にしようとしていた。
「それにしても……当初予想していたよりはこちらに来る勢力の数が少ないわね。ギュンターたちが上手くやってるのかしら」
「そうでしょうね。パトリックたちの影響もあるのかもしれませんが」
「そちらに関しては……そういうこともあると、そう思っておいた方がいいわね。とりあえず、この調子で他の勢力が出来るだけ早く撤退するなり、あるいは壊滅してくれるなりしてくれると、この騒動も終わるんでしょうけど」
「その件ですが、この一件は具体的にいつくらいまで続くと思いますか? 今の状況を思えば、それこそ延々と他の勢力が襲ってくるよう気がするんですけど」
そう尋ねる傭兵の心の中には、やはり疲れの色がある。
明確にどのくらいの敵と戦うと最初から分かっているのなら、そこまで疲れはないだろう。
しかし、今回のようにいつまで戦い続ければいいのかが分からないとなると、そのような相手との戦いはどうしても疲れてしまうのだ。
体力的にはまだ問題なくても、この場合は精神的に。
「具体的にいつまでとは言えないけど、最初からこの辺にいた勢力はもうあまり残っていないはずよ。ただ……問題なのは、現在ここに向かっている勢力もいるということでしょうね」
ソフィアの口から出た言葉を聞いた傭兵は、残念そうにしながらも納得はする。
そういう流れになるというのは、傭兵も理解していたのだろう。
普通ならドレミナを発つのが遅れ、また何らかの理由で移動するのに支障が出て、ここに到着するのが遅れた勢力というのは、警戒すべき相手ではない。
ましてや、既にこの場にいられなくなって撤退した者や、敗走した者たちを見たり、話を聞いたりすれば、そのままここに来るのを諦めるような者もいるだろう。
だが、そのような状況でもここまで来るような相手は、ソフィアたちにとって厄介なのは間違いなかった。
「いっそ、全部纏めてイオの流星魔法で吹き飛ばしたらどうですか? さっきの脅しの一撃は効果があったんですから、もう一度同じような攻撃をすれば今度こそ撤退するのでは?」
少し離れた場所で周囲の様子を見ているイオに視線を向けながら、傭兵の一人が言う。
傭兵にしてみれば、今の自分たちの状況にはイオも大きく関係しているのだ。
そうである以上、イオにはここでもう一度流星魔法を使ってもいいのでは?
そんな風に思っても、おかしくはない。
しかし、ソフィアはそんな言葉に対して首を横に振る。
「いえ、やめておきましょう。見たところ、イオはまだ人を殺すというのにそこまで慣れているようには思えないわ。だとすれば、ここで迂闊にそんな真似を強制させるようなことがあった場合、こちらに対して不信感を抱いてもおかしくないわ」
実際には、イオは水晶の力によって人を殺すといったことに対する抵抗感はかなり減っている。
それこそ自分の命を狙ってくるような相手を殺して、『俺が……人を……殺した?』といったように戦場で苦悩したりといったようなことはないだろう。
ソフィアも何となくそれについては理解しているものの、それでも今の状況でそのような真似はさせない方がいいだろうと思うのは当然の話だった。
「そうですか? まぁ、ソフィア様がそう言うのならそれで構いませんけど……そうなると、これからどうします? ここで延々と敵を待ち受けることにしますか?」
「それでもいいとは思うけど、そうなるとそうなったで無駄に時間がかかるのよね」
ここで敵が来なくなるまで待ち続ける。
その方法も、決して悪い訳ではない。
いや、むしろ普通に考えた場合は最善の方法に近いだろう。
それはソフィアも分かっていたが、だからといって黎明の覇者である自分たちが一般的な行動をして無駄に時間がかかった戦いを行ってしまう……というのは、決して向いていないと思う。
「では……ギュンターさんや白き眼球のパトリックの行動を待つんですか?」
「そうした方がいいかもしれないわね。……この骨を守る必要がなければ、一気に攻撃に移ってもいいんだけど」
一気に攻撃をするということは、暗黒のサソリと戦ったときと同じようなことになる。
ただ、今は暗黒のサソリと戦ったときと違うことがあった。
それが、流星魔法を使うイオの存在。
イオが一度流星魔法を使っている――ミニメテオも含めれば二度だが――だけに、他の勢力の者たちはどうしてもイオを警戒せざるをえない。
だからこそ、今の状況なら全面攻撃に出ても……と、そうソフィアは考えるのだが、それでも今の状況を考えると素直にその選択肢を選ぶような真似は出来なかった。
「取りあえずギュンターたちが戻ってくるまで待ちましょう。そうすれば、現在この周辺にいる戦力がどんな状態になっているのか分かりやすいわ。それを聞いてから決めてもおかしくはないでしょう?」
ソフィアのその言葉に、話を聞いていた者たちは素直に頷く。
内心では若干思うところもあるのだろう。
だが、ソフィアの言うことである以上、明確に反対する理由がない限り、頷くしか出来なかった。
「いえ、必要ないわ。今の状況を考えれば、ここで追撃を行うだけの戦力を出すのは勿体ないもの。今はまず、他の敵の襲撃に備えましょう」
ソフィアの指示に従い、その場にいた者たちは戦闘が終わったということで休憩する。
そんな中、イオはかなり手持ち無沙汰だった。
杖があるので魔法は使えるものの、普通のメテオを使う訳にはいかない。
であれば、ミニメテオくらいしか使えないのだが……魔法を使ってから発動するまでタイムラグがある以上、乱戦の中では使いにくい。
そのような手持ち無沙汰なままで周囲を見ながら、ふと思う。
(パトリックはあのまま逃がすよりも、こっちの指揮下において戦力として使った方がよかったんじゃないか? ……まぁ、今更の話だけど)
パトリックたちが黎明の覇者と接触したというのは、他の勢力にも何らかの方法で知られたのだろう。
パトリックたちと同じく、他の勢力もソフィアたちと接触してくる者が多かった。
ただしパトリックたちと違うのは、逃がして欲しいと希望するのではなく、見逃してやるからベヒモスの素材を渡せと要求してきたことだ。
イオを寄越せと言わない辺り、ある程度譲歩はしているつもりなのかもしれない。
だからといって、これで大人しく退くからベヒモスの――骨になっていて正確な名前は分からなかったが、とにかくこの巨大なモンスターの――素材を寄越せという言葉に、ソフィアが頷く訳がない。
ベヒモスの素材というだけで、非常に大きな価値があるのだ。
ましてや、このベヒモスは黎明の覇者の新人たちが必死になって倒したモンスターだった。
そんなモンスターの素材を、そう簡単に渡せるはずがない。
何よりも、このモンスターの素材の所有権はイオにもある。
そしてイオは黎明の覇者の客人ではあっても、そこに所属する傭兵ではない。
そうである以上、勝手にその素材を渡すといった真似は出来なかった。
……実際には、この場にイオがいるし、ベヒモスを倒した者たちも揃っている。
そういう意味では、もしソフィアに素材を渡すつもりがあるのなら、イオや新人たちと相談するといったことは出来たのだが……ソフィアは最初からそのようなことをするつもりはなかった。
結果として、向こうも妥協した条件を却下され……それで退くに退けなくなり、攻撃をしてきて、それをソフィアたちが撃退したというのが今の状況だった。
「また他の馬鹿たちが来る可能性があるから、休憩しつつ、周囲の警戒もしておきなさい」
普通なら休憩しつつ周囲の警戒をするというのは難しい。
それこそどちらか片方だけなら何の問題もないだろうが。
休憩の方に力を入れすぎれば、どうしても警戒が疎かになってしまう。
警戒の方に集中しすぎれば、休憩の意味がなくなる。
しかし、この場にいる者たちは黎明の覇者に所属する傭兵だ。
黎明の覇者の中では新人と呼ばれている者たちも、他の傭兵団に行けば即戦力として主戦力になれるだけの力は持っているのが大半だった。
そうである以上、ほとんどの者が休憩しつつ警戒をするといったことも普通に出来る。
黎明の覇者に所属したばかりのレックスや、そもそも傭兵ではないイオのような存在もいるが。
イオは客人ということや、いざというときに流星魔法を使ってもらうために警戒はしなくてもいいので、ゆっくり休むようにと言われている。
いざ流星魔法を使うようになったとき、イオが疲れていて魔法が発動しなかったり、あるいは発動しても狙いがそれて自分たちの方に隕石が降ってきたりといったようなことになったら致命的なのだから。
実際には馬車で走りながらでもきちんと狙い通りに魔法を発動させて命中させたのだから、そういう意味では特に問題がないとイオ本人は思っている。
とはいえ、それはあくまでもイオがそう思っているだけで、実際にどうなるのかというのは分からない以上、念には念を入れた方がいいのは間違いなかった。
そしてレックスの方は……ゆっくりと出来るイオとは違い、先輩たちからビシバシと鍛えられている。
元々レックスはイオの防御を任されている存在だ。
この先どうなるのかは分からないが、今の状況ではそうなってしまう。
ただでさえ黎明の覇者が連れて来たのは精鋭ばかりで、どうしても数は少ないのだ。
だからこそ、イオの護衛に人員を割く訳にはいかない。
もちろんイオの存在が非常に重要だというのは、全員が分かっている。
だが、それでも今の人数を考えると、出来ればレックスに護衛をして貰いたいと思うのは当然だった。
レックスもそれは理解しており、何よりも自分の恩人でもあるイオの護衛をするのは望むところなので、先輩たちからの厳しい指導も真剣に聞いていた。
具体的にはどのくらいのことが自分に出来るのか。
それを知ることこそが、今の状況では重要なことなのだ。
だからこそ、レックスは戦いが終わったばかりだというのに、先輩たちの話を聞いて少しでもそれを今の自分の力にしようとしていた。
「それにしても……当初予想していたよりはこちらに来る勢力の数が少ないわね。ギュンターたちが上手くやってるのかしら」
「そうでしょうね。パトリックたちの影響もあるのかもしれませんが」
「そちらに関しては……そういうこともあると、そう思っておいた方がいいわね。とりあえず、この調子で他の勢力が出来るだけ早く撤退するなり、あるいは壊滅してくれるなりしてくれると、この騒動も終わるんでしょうけど」
「その件ですが、この一件は具体的にいつくらいまで続くと思いますか? 今の状況を思えば、それこそ延々と他の勢力が襲ってくるよう気がするんですけど」
そう尋ねる傭兵の心の中には、やはり疲れの色がある。
明確にどのくらいの敵と戦うと最初から分かっているのなら、そこまで疲れはないだろう。
しかし、今回のようにいつまで戦い続ければいいのかが分からないとなると、そのような相手との戦いはどうしても疲れてしまうのだ。
体力的にはまだ問題なくても、この場合は精神的に。
「具体的にいつまでとは言えないけど、最初からこの辺にいた勢力はもうあまり残っていないはずよ。ただ……問題なのは、現在ここに向かっている勢力もいるということでしょうね」
ソフィアの口から出た言葉を聞いた傭兵は、残念そうにしながらも納得はする。
そういう流れになるというのは、傭兵も理解していたのだろう。
普通ならドレミナを発つのが遅れ、また何らかの理由で移動するのに支障が出て、ここに到着するのが遅れた勢力というのは、警戒すべき相手ではない。
ましてや、既にこの場にいられなくなって撤退した者や、敗走した者たちを見たり、話を聞いたりすれば、そのままここに来るのを諦めるような者もいるだろう。
だが、そのような状況でもここまで来るような相手は、ソフィアたちにとって厄介なのは間違いなかった。
「いっそ、全部纏めてイオの流星魔法で吹き飛ばしたらどうですか? さっきの脅しの一撃は効果があったんですから、もう一度同じような攻撃をすれば今度こそ撤退するのでは?」
少し離れた場所で周囲の様子を見ているイオに視線を向けながら、傭兵の一人が言う。
傭兵にしてみれば、今の自分たちの状況にはイオも大きく関係しているのだ。
そうである以上、イオにはここでもう一度流星魔法を使ってもいいのでは?
そんな風に思っても、おかしくはない。
しかし、ソフィアはそんな言葉に対して首を横に振る。
「いえ、やめておきましょう。見たところ、イオはまだ人を殺すというのにそこまで慣れているようには思えないわ。だとすれば、ここで迂闊にそんな真似を強制させるようなことがあった場合、こちらに対して不信感を抱いてもおかしくないわ」
実際には、イオは水晶の力によって人を殺すといったことに対する抵抗感はかなり減っている。
それこそ自分の命を狙ってくるような相手を殺して、『俺が……人を……殺した?』といったように戦場で苦悩したりといったようなことはないだろう。
ソフィアも何となくそれについては理解しているものの、それでも今の状況でそのような真似はさせない方がいいだろうと思うのは当然の話だった。
「そうですか? まぁ、ソフィア様がそう言うのならそれで構いませんけど……そうなると、これからどうします? ここで延々と敵を待ち受けることにしますか?」
「それでもいいとは思うけど、そうなるとそうなったで無駄に時間がかかるのよね」
ここで敵が来なくなるまで待ち続ける。
その方法も、決して悪い訳ではない。
いや、むしろ普通に考えた場合は最善の方法に近いだろう。
それはソフィアも分かっていたが、だからといって黎明の覇者である自分たちが一般的な行動をして無駄に時間がかかった戦いを行ってしまう……というのは、決して向いていないと思う。
「では……ギュンターさんや白き眼球のパトリックの行動を待つんですか?」
「そうした方がいいかもしれないわね。……この骨を守る必要がなければ、一気に攻撃に移ってもいいんだけど」
一気に攻撃をするということは、暗黒のサソリと戦ったときと同じようなことになる。
ただ、今は暗黒のサソリと戦ったときと違うことがあった。
それが、流星魔法を使うイオの存在。
イオが一度流星魔法を使っている――ミニメテオも含めれば二度だが――だけに、他の勢力の者たちはどうしてもイオを警戒せざるをえない。
だからこそ、今の状況なら全面攻撃に出ても……と、そうソフィアは考えるのだが、それでも今の状況を考えると素直にその選択肢を選ぶような真似は出来なかった。
「取りあえずギュンターたちが戻ってくるまで待ちましょう。そうすれば、現在この周辺にいる戦力がどんな状態になっているのか分かりやすいわ。それを聞いてから決めてもおかしくはないでしょう?」
ソフィアのその言葉に、話を聞いていた者たちは素直に頷く。
内心では若干思うところもあるのだろう。
だが、ソフィアの言うことである以上、明確に反対する理由がない限り、頷くしか出来なかった。
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