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ラリアント防衛戦
093話
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夜襲が失敗した翌日、ゼオンは再び空の上にあった。
今までと違うのは、ゼオンがただ飛んでいる訳ではなく、その手に岩を抱えていることだろう。
ゼオンが十八メートルもの大きさがあるので分かりにくいが、抱えている岩はその一つ一つが一メートルほどの大きさを持つ。
中には成人男性ほどの大きさの岩もある。
このような岩が空高くから振ってくれば、その被害は大きい。
「もっとも、こういう大きな岩を少数落とすのと、小さな……拳くらいの大きさの石を大量に落とすののどちらが効果的なのかは、分からないけど」
直接攻撃をするというのは、ガリンダミア帝国軍に待ち伏せをされるから難しい。
昨夜の夜襲は、まさに典型と言ってもいいだろう。
だからこそ、今回はモリクとの話で出た通り、上空から岩を落とすという手段で攻撃することになった。
敵にしてみれば、気が付けば岩の雨が降ってくるのだから、気が気ではないはず。
それこそ移動するときも常に上空を警戒する必要があり、だが警戒しても高度数キロを飛んでいるゼオンを見つけるのは難しい。
運によっては、自分たちに向かって降ってくる岩を見つけることが出来るかもしれないが、それを回避出来るかと言えば、それもまた難しい。
相手に直接与える被害そのものはそこまで大きくはないが、精神的にダメージを与えるという点では非常に効果があると思われる攻撃方法だった。
一種のハラスメント攻撃と言ってもいい。
直接的にダメージを与えるのが難しい以上、このような攻撃をすることしか出来なかった。
「お、見えてきたな」
映像モニタに表示された映像。
ガリンダミア帝国軍の数が数なので、映像を拡大しなくてもしっかりとその姿を確認することが出来た。
「あとの問題は、この攻撃で相手に被害を与えることが出来るかどうかだけど……そこまで心配する必要はないか」
岩で攻撃するのは、ガリンダミア帝国軍の精神だ。
もちろん岩が命中して敵に多少なりとも被害を与えることが出来れば最善なのだが、極論として攻撃が外れて向こう側に精神的なダメージを与えることが出来ればそれで十分だった。
「一度に全部落とすか、それともある程度の時間を置いて落としていくか……一気にだな」
岩を補給する場所まで、ゼオンが飛べばそう時間が掛からない。
であれば、相手が気が付いていないうちに大量に岩を落として、それからこの場から離脱すればいい。
そう判断し、アランはガリンダミア帝国軍の上空まで移動したところですぐ持っていた岩を全て落とす。
本来なら野球で投擲するようにして投げる方が威力は増すのかもしれないが、大量の岩を抱えたままでは、そのような真似も出来ない。
そんな訳で、結局抱えていた岩の全てをその場で放り出すことにした。
本来ならこの場からさっさと逃げればいいのだが、今回に限ってはそのような真似をする訳にはいかない。
岩が具体的にどのように落ちて、どのような被害を与えたのかを確認する必要があるし、それ以外にも今回の一件をやったのは自分であると、そうガリンダミア帝国軍に示す必要があった。
未知というのは恐怖に直結することもあるのだが、今回の場合に限ってはゼオンの姿を見せて、誰がこれをやったのかというのを相手に知らしめることにより、未知の存在よりも明確に自分たちに敵意を持っている存在の仕業であると、見せつける必要があった。
そうすることで、自分たちに敵意を持っている存在が、自分たちからは攻撃出来ない場所から一方的に攻撃をするということを示し、いつまたこのように狙われるのかという恐怖を相手に与える必要がある。
「さて、どうなる?」
呟き、映像モニタをじっと見るアラン。
岩が落下していくことに、まだ下のガリンダミア帝国軍が気が付く様子はない。
これなら、もしかして完全に不意を突けるか?
そう思った瞬間、不意にガリンダミア帝国軍の動きが活発になる。
自分たちに向かって落下してくる多数の岩を確認し、慌てたように落下予想地点からの退避する。
だが……ガリンダミア帝国軍にとっては幸運なことに、そしてアランにとっては不運なことに、地上に向かって落ちていった岩はその途中で岩の形による空気抵抗、もしくは他の岩とぶつかったことによる反動といったもので、アランが狙った場所とは別の場所に向かって落下していった岩も多かった。
「ちっ」
その様子に、思わず舌打ちをするアラン。
もちろん全ての岩がガリンダミア帝国軍に命中するとは思っていなかったのだが、ガリンダミア帝国軍の行動が早かったこともあり、その被害はかなり少ない。
とはいえ、この失敗は次に活かせばいいだけだと判断し、アランはゼオンの高度を下げていく。
元々の高度では、地上にいるガリンダミア帝国軍の者たちも岩を落とすといった真似をしたのが、アランの……ゼオンのやったことだと考えない可能性がある。
もっとも、この状況で上空から攻撃する敵がゼオン以外にいるのかと言われれば、ガリンダミア帝国軍の多くは首を横に振るだろうが。
「騒いでるな」
映像モニタに拡大された光景の中では、多くの兵士たちが上空を見上げて、ゼオンの方を指さしている。
これで自分がやったのだと見せつけることが出来たアランは、最後にビームライフルの一撃でも放とうとし……不意に、映像モニタに何かがアップになったのを確認した瞬間、半ば反射的にウイングバインダーのスラスターを全開にしてその場から移動する。
そうして離れた結果、何が映像モニタにアップで映ったのかを理解した。
地上からサイクロプスに変身した心核使いが、岩を投げてきたのだと。
それも仕返しという意味からか、投げてきた岩はたった今ゼオンが落としたものの一つなのだが……そこまでは、アランにも分からなかった。
判明したのは、地上からサイクロプスによって岩を投擲されたということだけ。
岩を落とした高度を維持していれば、幾らサイクロプスでも攻撃が届くようなことはなかっただろう。
だが、生憎と今は誰が今回の攻撃を行ったのかを、相手に見せつける必要があるということで高度を落としていたことが影響してしまった。
今の一撃は回避したが、再びサイクロプスが岩を構えたのを映像モニタで確認すると、アランはウイングバインダーを使って高度を上げる。
その上昇速度は、空を飛ぶ能力を持つモンスターに変身する心核使いにしても、驚くべき速度。
それこそ、上昇速度という点では絶対にゼオンには勝てないと思わせるほどの速度だった。
……とはいえ、空を飛ぶということにおいて上昇速度、加速性の類が重要なのは事実で、それ以外にも空を飛ぶのに重要なことは多い。
旋回性能……いわゆる運動性と言われる類のものでなら、ゼオンにも何とか対抗出来ると心核使いは自分に言い聞かせる。
そんな地上の様子を全く気にせず、地上からの攻撃が届かない高度まで上がったゼオンは、ゆっくりとその場を飛び去る。
本来ならもっと速く移動出来るのだが、これもまた演出の一覧としての行動だった。
「厄介な真似をしてくれる」
ゆっくりと飛び去っていく小さなゼオンの姿に、ディモは苛立ちを込めて呟く。
今回の被害そのものはそこまで大きくはない。
降ってきた岩に押し潰されて死んだのも、生粋のディモの部下ではなく占領した国々から連れて来た兵士たちだ。
そういう意味では被害は気にしなくてもいい程度なのだが、それはあくまでも実質的な被害にかんしての話だ。
「そうですね。これからも同じような真似をされると、士気が落ちてしまいます。昨夜の一件であのゼオンとかいうゴーレムを追い払ったことにより、ある程度の士気は回復したというのに」
ディモの側で、参謀のイクセルがそう告げる。
若干ディモを責める色があるのは、昨夜の待ち伏せでディモがイクセルを置いて自分だけで――護衛は連れてだが――戦場に行ったためだろう。
イクセルとしては、ディモには危険な場所に行って欲しくはないのだ。
この侵攻軍がまがりなりにも一つに纏まっているのは、ディモの影響力があってのことなのだから。
とはいえ、ディモが相手を直接自分の目で見たかったというのも理解しているために、多少の――イクセル基準でだが――小言ですませたが。
「士気が下がった兵士ってのは、使いものにならねえ。盾代わりにでも使うか? 攻撃は俺たちがやればいいだろうし」
「下手に盾にしようものなら、それこそこれ幸いと逃げ出す者が出て来ますよ?」
その言葉に、ディモは面白くなさそうに頭を掻く。
いっそ後方に戻すか? と思わないでもなかったが、人数が少なくなれば今回のような攻撃を繰り返されたとき、自分の部下たちに被害が出かねない。
今回の攻撃の何が厄介なのかと言えば、こちらからは一切反撃出来ず、ただ攻撃を防ぐなり回避するなりするしかないというところだろう。
かなり上空からの攻撃である以上、命中率そのものは決して高くはない。
だが、向こうも一応こちらのいる方に向かって攻撃をしてくる以上、まぐれ当たりというのは有り得るのだ。
その辺りの事情を考えると、徴兵してきた兵士たちを帰すというのは悪手でしかないのは間違いない。
だからといって徴兵した兵士たちを連れて移動するとなると、その者たちの士気の低さがディモの部下たちにも影響を与える可能性がある。
「そうなると、どうすればいい?」
「ようは、少しでも早くラリアントに到着すればいいんです。そうなれば、向こうもその守備に力を割かなければならない以上、今までのような行動をすることは出来ません。……もっとも、ラリアントの攻略を行う以上、あのゼオン以外の戦力も相手にする必要はありますが」
「ラリアントを攻略している途中で、さっきのように上から攻撃をされたらどうするつもりだ?」
「そのときは、心核使いたちに頑張って貰って何とか攻撃を防ぐなり回避するなりしてから、岩をラリアントに叩きつければいいかと」
「……なるほど」
根本的な解決策という訳ではないが、それでもゼオンに岩の爆撃を止めさせることは出来るかもしれない。
そもそも、場合によっては岩の爆撃がラリアントに命中する可能性すらあるのだ。
そう思いながら、二人は対応策を話し合うのだった。
今までと違うのは、ゼオンがただ飛んでいる訳ではなく、その手に岩を抱えていることだろう。
ゼオンが十八メートルもの大きさがあるので分かりにくいが、抱えている岩はその一つ一つが一メートルほどの大きさを持つ。
中には成人男性ほどの大きさの岩もある。
このような岩が空高くから振ってくれば、その被害は大きい。
「もっとも、こういう大きな岩を少数落とすのと、小さな……拳くらいの大きさの石を大量に落とすののどちらが効果的なのかは、分からないけど」
直接攻撃をするというのは、ガリンダミア帝国軍に待ち伏せをされるから難しい。
昨夜の夜襲は、まさに典型と言ってもいいだろう。
だからこそ、今回はモリクとの話で出た通り、上空から岩を落とすという手段で攻撃することになった。
敵にしてみれば、気が付けば岩の雨が降ってくるのだから、気が気ではないはず。
それこそ移動するときも常に上空を警戒する必要があり、だが警戒しても高度数キロを飛んでいるゼオンを見つけるのは難しい。
運によっては、自分たちに向かって降ってくる岩を見つけることが出来るかもしれないが、それを回避出来るかと言えば、それもまた難しい。
相手に直接与える被害そのものはそこまで大きくはないが、精神的にダメージを与えるという点では非常に効果があると思われる攻撃方法だった。
一種のハラスメント攻撃と言ってもいい。
直接的にダメージを与えるのが難しい以上、このような攻撃をすることしか出来なかった。
「お、見えてきたな」
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ガリンダミア帝国軍の数が数なので、映像を拡大しなくてもしっかりとその姿を確認することが出来た。
「あとの問題は、この攻撃で相手に被害を与えることが出来るかどうかだけど……そこまで心配する必要はないか」
岩で攻撃するのは、ガリンダミア帝国軍の精神だ。
もちろん岩が命中して敵に多少なりとも被害を与えることが出来れば最善なのだが、極論として攻撃が外れて向こう側に精神的なダメージを与えることが出来ればそれで十分だった。
「一度に全部落とすか、それともある程度の時間を置いて落としていくか……一気にだな」
岩を補給する場所まで、ゼオンが飛べばそう時間が掛からない。
であれば、相手が気が付いていないうちに大量に岩を落として、それからこの場から離脱すればいい。
そう判断し、アランはガリンダミア帝国軍の上空まで移動したところですぐ持っていた岩を全て落とす。
本来なら野球で投擲するようにして投げる方が威力は増すのかもしれないが、大量の岩を抱えたままでは、そのような真似も出来ない。
そんな訳で、結局抱えていた岩の全てをその場で放り出すことにした。
本来ならこの場からさっさと逃げればいいのだが、今回に限ってはそのような真似をする訳にはいかない。
岩が具体的にどのように落ちて、どのような被害を与えたのかを確認する必要があるし、それ以外にも今回の一件をやったのは自分であると、そうガリンダミア帝国軍に示す必要があった。
未知というのは恐怖に直結することもあるのだが、今回の場合に限ってはゼオンの姿を見せて、誰がこれをやったのかというのを相手に知らしめることにより、未知の存在よりも明確に自分たちに敵意を持っている存在の仕業であると、見せつける必要があった。
そうすることで、自分たちに敵意を持っている存在が、自分たちからは攻撃出来ない場所から一方的に攻撃をするということを示し、いつまたこのように狙われるのかという恐怖を相手に与える必要がある。
「さて、どうなる?」
呟き、映像モニタをじっと見るアラン。
岩が落下していくことに、まだ下のガリンダミア帝国軍が気が付く様子はない。
これなら、もしかして完全に不意を突けるか?
そう思った瞬間、不意にガリンダミア帝国軍の動きが活発になる。
自分たちに向かって落下してくる多数の岩を確認し、慌てたように落下予想地点からの退避する。
だが……ガリンダミア帝国軍にとっては幸運なことに、そしてアランにとっては不運なことに、地上に向かって落ちていった岩はその途中で岩の形による空気抵抗、もしくは他の岩とぶつかったことによる反動といったもので、アランが狙った場所とは別の場所に向かって落下していった岩も多かった。
「ちっ」
その様子に、思わず舌打ちをするアラン。
もちろん全ての岩がガリンダミア帝国軍に命中するとは思っていなかったのだが、ガリンダミア帝国軍の行動が早かったこともあり、その被害はかなり少ない。
とはいえ、この失敗は次に活かせばいいだけだと判断し、アランはゼオンの高度を下げていく。
元々の高度では、地上にいるガリンダミア帝国軍の者たちも岩を落とすといった真似をしたのが、アランの……ゼオンのやったことだと考えない可能性がある。
もっとも、この状況で上空から攻撃する敵がゼオン以外にいるのかと言われれば、ガリンダミア帝国軍の多くは首を横に振るだろうが。
「騒いでるな」
映像モニタに拡大された光景の中では、多くの兵士たちが上空を見上げて、ゼオンの方を指さしている。
これで自分がやったのだと見せつけることが出来たアランは、最後にビームライフルの一撃でも放とうとし……不意に、映像モニタに何かがアップになったのを確認した瞬間、半ば反射的にウイングバインダーのスラスターを全開にしてその場から移動する。
そうして離れた結果、何が映像モニタにアップで映ったのかを理解した。
地上からサイクロプスに変身した心核使いが、岩を投げてきたのだと。
それも仕返しという意味からか、投げてきた岩はたった今ゼオンが落としたものの一つなのだが……そこまでは、アランにも分からなかった。
判明したのは、地上からサイクロプスによって岩を投擲されたということだけ。
岩を落とした高度を維持していれば、幾らサイクロプスでも攻撃が届くようなことはなかっただろう。
だが、生憎と今は誰が今回の攻撃を行ったのかを、相手に見せつける必要があるということで高度を落としていたことが影響してしまった。
今の一撃は回避したが、再びサイクロプスが岩を構えたのを映像モニタで確認すると、アランはウイングバインダーを使って高度を上げる。
その上昇速度は、空を飛ぶ能力を持つモンスターに変身する心核使いにしても、驚くべき速度。
それこそ、上昇速度という点では絶対にゼオンには勝てないと思わせるほどの速度だった。
……とはいえ、空を飛ぶということにおいて上昇速度、加速性の類が重要なのは事実で、それ以外にも空を飛ぶのに重要なことは多い。
旋回性能……いわゆる運動性と言われる類のものでなら、ゼオンにも何とか対抗出来ると心核使いは自分に言い聞かせる。
そんな地上の様子を全く気にせず、地上からの攻撃が届かない高度まで上がったゼオンは、ゆっくりとその場を飛び去る。
本来ならもっと速く移動出来るのだが、これもまた演出の一覧としての行動だった。
「厄介な真似をしてくれる」
ゆっくりと飛び去っていく小さなゼオンの姿に、ディモは苛立ちを込めて呟く。
今回の被害そのものはそこまで大きくはない。
降ってきた岩に押し潰されて死んだのも、生粋のディモの部下ではなく占領した国々から連れて来た兵士たちだ。
そういう意味では被害は気にしなくてもいい程度なのだが、それはあくまでも実質的な被害にかんしての話だ。
「そうですね。これからも同じような真似をされると、士気が落ちてしまいます。昨夜の一件であのゼオンとかいうゴーレムを追い払ったことにより、ある程度の士気は回復したというのに」
ディモの側で、参謀のイクセルがそう告げる。
若干ディモを責める色があるのは、昨夜の待ち伏せでディモがイクセルを置いて自分だけで――護衛は連れてだが――戦場に行ったためだろう。
イクセルとしては、ディモには危険な場所に行って欲しくはないのだ。
この侵攻軍がまがりなりにも一つに纏まっているのは、ディモの影響力があってのことなのだから。
とはいえ、ディモが相手を直接自分の目で見たかったというのも理解しているために、多少の――イクセル基準でだが――小言ですませたが。
「士気が下がった兵士ってのは、使いものにならねえ。盾代わりにでも使うか? 攻撃は俺たちがやればいいだろうし」
「下手に盾にしようものなら、それこそこれ幸いと逃げ出す者が出て来ますよ?」
その言葉に、ディモは面白くなさそうに頭を掻く。
いっそ後方に戻すか? と思わないでもなかったが、人数が少なくなれば今回のような攻撃を繰り返されたとき、自分の部下たちに被害が出かねない。
今回の攻撃の何が厄介なのかと言えば、こちらからは一切反撃出来ず、ただ攻撃を防ぐなり回避するなりするしかないというところだろう。
かなり上空からの攻撃である以上、命中率そのものは決して高くはない。
だが、向こうも一応こちらのいる方に向かって攻撃をしてくる以上、まぐれ当たりというのは有り得るのだ。
その辺りの事情を考えると、徴兵してきた兵士たちを帰すというのは悪手でしかないのは間違いない。
だからといって徴兵した兵士たちを連れて移動するとなると、その者たちの士気の低さがディモの部下たちにも影響を与える可能性がある。
「そうなると、どうすればいい?」
「ようは、少しでも早くラリアントに到着すればいいんです。そうなれば、向こうもその守備に力を割かなければならない以上、今までのような行動をすることは出来ません。……もっとも、ラリアントの攻略を行う以上、あのゼオン以外の戦力も相手にする必要はありますが」
「ラリアントを攻略している途中で、さっきのように上から攻撃をされたらどうするつもりだ?」
「そのときは、心核使いたちに頑張って貰って何とか攻撃を防ぐなり回避するなりしてから、岩をラリアントに叩きつければいいかと」
「……なるほど」
根本的な解決策という訳ではないが、それでもゼオンに岩の爆撃を止めさせることは出来るかもしれない。
そもそも、場合によっては岩の爆撃がラリアントに命中する可能性すらあるのだ。
そう思いながら、二人は対応策を話し合うのだった。
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