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神、怒髪天を貫く

はい、見っけ。

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  日本では、吐く息が白くなる時期になった。ここ、桜田門高校はどこにでもある普通の公立高校だった。今日がいつもと違うところと言えば、まあ担任の先生がお腹を下した事くらいだろう。それ以外はいつも通りの普通の日だった。


「でさ、やばくない!」

「それ、ちょーやばいんですけど!」

「この間でた新作のゲームなんだが。」

「俺はもう、レベル二十まで行ったぞ。」

  自習になった国語の授業は監督する先生もいない為、煩さが教室を支配していた。そんな時だった。とある一人の男子が他の声をかき消すほどの大声を上げた。

「うわっ!なんだこれ!」

クラスの皆が彼に視線を集めた。しかし、未だに下を向いて驚いている彼を真似て下を見ると、そこにはありえない物があった。

「え!何これ!」

「こんなの、いつ書いたの!」

「さっきまで何も書かれていなかったのに!」

  その教室の床にはびっしりと幾何学的な模様が描かれていた。あまりの事に驚き、席を立ち上がってそこの上から離れようとした瞬間。突然、その模様が目も眩むほどの光を放った。

「うわっ!」

「きゃっ!」

  そして、目を開くとそこはいつも学校の教室ではなかった。辺りは白く、とても広い。もう一色、色があるなら地平線があるのではないかというくらいの広さだ。明らかにここはこの世の場所とは思えなかった。

「なんだここ!」

「さっきまで教室にいたのに!」

「どうなってるんだ!」

  あまりにも、非現実的なことが起こりすぎて皆がパニックに陥っている。ある者は騒ぎ、ある者は頭を抱え、ある者は泣き、ある者はこの現象に見覚えがあり、とある事を期待している、皆さまざまだ。そんな混乱の渦の中、空中に光が現れた。とても、優しいその光は一瞬にしてその場にいる全員を包み込んだ。すると、徐々に落ち着きを取り戻していき、頭の中がクリアになっていく。その光は段々と形を変えていき人の形になったと同時に弾けた。そして、一人の綺麗な女性が現れた。

「はじめまして、皆様方。私の名はリアリー。あなた方の世界でいう所の神様です。」

  全ての者が息を飲んだ。その美しさもさることながら、その慈愛に満ちた表情は到底人程度が出せるものではなかったからだ。しかも、不思議な事に彼女の言う事には疑いを持つこともなく、ストンと胸中に落ちてくる。

「まずは、謝罪させていただきます。申し訳ありません。あなた方を無理やりこちらの世界に転移させました。」

  誰も反応はしない。だが、誰も怒っているものはいなかった。今までにないくらい落ち着いている。これも、彼女の力なのだ。

「皆様を呼ばせていただいたのには理由があります。私の世界を救って欲しいのです。」

  この言葉を聞いた時、何人かの人間が大きな反応を見せた。明らかにこれに見覚えがあったからだ。これは、最近ネットで流行っているあれだと。

「今、私の世界では人類が滅びの一途を辿ろうとしています。私は神として彼らを救わなけれらばなりません。その為には、あなた方の力が必要不可欠なのです。」

  彼女が言うにはこういうことだった。現在、世界では魔王が復活し、人類が脅かされているそうなのだ。しかし、今の人類では彼らに勝つことはできないらしい。その為、とある大国が伝説の勇者を呼ぶ儀式を行った。そして、それに選ばれたの自分たちなのだ。その勇者というのは異世界からやって来て、その巨大な力を持って、かつて人類を救った英雄達の呼称らしい。異世界から来たものには、不思議な力が宿ると言われているが、実際は転生前に彼女が授けているそうなのだ。この力は彼女の世界の住人には耐えることができないらしい。だから、その容量持っている異世界の自分達に頼るしかないのだ。ここまでの説明を聞きいても、誰一人不満のある人はいなかった。そこに

「わかりました、女神様!私たちが世界をお救いしましょう!」

  一人の男子が大きく声を上げた。彼の名前は斎藤守さいとうまもる。クラス1の人気者だ。彼は自他認めるほど正義感が強かった。そんな彼がこんな事を見逃すはずがない。彼はやる気に満ち溢れた視線をクラスの全員へと向ける。

「みんな!女神様の世界を救うことができるのは僕たちだけなんだ!一緒に戦おう!」

  彼の言葉に意を唱える者は誰もいなかった。たださえ、女神様の不思議オーラに当てられてる上に、彼という人気者の言葉だ。日本人特有の正義感が刺激されたのだろう。

「そうだ、やってやろう。」

「私たちしかできないんだもんね。」

「女神様のお願いなら断れない!」

  クラスが一致団結し、さあ、冒険が始まろうとしたその時だった。一人の男子が手を挙げた。

「あの~、すいません。ちょっといかいですか~?」

  明らかに周りと違う温度を持っているその男子に注目が集まる。彼はクラスでも目立たない、というより、目立とうとしない男子だった。

「はい、なんでしょうか?何でもお聞きなさって下さい。」

  女神様が笑顔で答えると、彼は一歩前に出てこう言った。

「舐めるなよ、小娘。」

  彼の姿が一瞬にして消えると、次の瞬間、女神様の腹には刀が突き刺さっていた。

「え?」

初めて女神様の表情が崩れた。

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