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ブランディア編

29頁 レライア7

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「ケガは…ないみたい…よかったぁ」

ぐるぐると俺を点検すること十数周。ベイルは安心した顔で息をついた。


「あの奇襲から無傷生還ってすごいわね。運がいいのかしら…?」

……ちょっとは俺の実力だと思ってくれないかなぁ…いや、実際助かったのは偶然だけどさ。


「あぁ、不思議なこともあるもんだな」

「あははは…そうですねー」


まぁ、神が警告してくれて、偶然スライムの核を真っ二つにして、そのあとタイマー制の時間停止で神様と喋ってました……なんて信じらんねぇよな。俺も今だにちょっと信じらんねぇ。

とりあえず、神の声うんぬんは聞かれるまで黙っとこ。














「そういえば、さっき倒したスライムからヘンなのが落ちたんですけど…」

地面に落ちた無色のプルプルとふたつに割れた核を指さすと、3人の表情が一斉に固まる。



まさか、また10分タイマーか?!


「ご、ゴレイン…これ、『壊れた核』じゃない…?」

「あぁ…そう、だな」

「…こっちは魔導粘体スライムの粘液だよ」

顔を見合わせる3人……ん?壊れた核ってドロップアイテムだよな…あ、剥ぎ取りで倒したから落ちたのか。


ということは……


ゆっくりと振り向いたイザベル。
……なんともいい表情をしております…はい。

「ねぇカイト、剥ぎ取りスキルのレベリングスライムの核の乱獲を…はじめましょうか」

「……りょ、了解」

やっぱりそうなるよねぇ……







あ、プルプルと核、拾っとこう。


ー収納の腕輪ー収納スペース小
 1地図×1
 2コンパス×1
 3水筒(水)×1
 4砥石×1
 5油敷布×1
 6剥ぎ取りナイフ×3
 7古木のおがくず×1
 8無色魔導粘体クリアスライムの粘液×1
 9壊れた核×2
10

そろそろスペースがきついな…おがくず捨てるか?

いや、いつか使えるかもしれないし…もうちょい取っとこう。

これぞ日本人のモッタイナイ精神である。















はじめこそ上手く剥ぎ取れなかったスライムの核だが、実際スライムの動きは結構ノロいもので、慣れるとサクサクと収集が進んだ。


エンカウント率大幅減少のせいであまり数はこなせなかったが、それでも驚異の成果だという。

本日の成果。

核×5
壊れた核×20
無色魔導粘体クリアスライムの粘液×52


ちなみに、(ベイルの索敵で見つけた)30体くらいのクリアスライムを倒したけど、俺が倒し損ねたスライムはゴレインが叩き潰していた。


俺が戦闘にもだいぶ慣れたので、イザベルはレライア特有のダンジョン素材収集に行っていた。ここではレライア鉱という鉱石が取れるらしく、いい値段で売れるそうだ。

イザベルは、鉱石をある程度集めたら先に休憩地に戻ると言ってた……こんなとこでも強者イザベル弱者の差が…うぅ、胸が痛い…。


「よし!そろそろテントに戻るか!」

元気いっぱいなゴレイン。
そりゃそうか、ずっと俺の付き添いばっかりで、ほとんど体を動かせてなかったもんな。

しかも、いつの間にやら核も依頼の目標個数である5個になっていて、ベイルもほくほく顏である。

……俺はヘトヘトです。

















「おかえり、ご飯できてるから、早く荷物置いて手洗って来てね」

テントに戻ると、焚き火でぐるぐると鍋をかき混ぜるイザベルが待っていた。
実に魔女らしい光景です。

「お、今日はスープか?」

「ええ。干し肉とダンジョン野菜のスープ。具材多めにしてるから、いっぱい食べていいわよ」


動いた後は腹が減るもので、俺たちは急いで水場へ向かった。





4人には大きすぎるくらいの鍋を囲んでの夕食(時間がわからないのでおそらくではあるが)は、たっぷりのスープと塩味堅パン。


普段なら味気なく感じるであろう堅パンも、スープに浸せば絶品である。


そのスープはといえば、干し肉に凝縮された旨味が十分に引き出され、新鮮なレライア産の野菜の味を高めている。

そして、空腹は最高のスパイス。
全てが死ぬほど美味く感じる。

30分とかからずに食べ終わりました。


「ごちそうさまでした」


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