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ヒューレー・ミリュー編

100頁 レベリング

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さて、しばらく道を進みますと、またもや下に降りる螺旋らせん階段を発見。

降りると、上の階より若干広くなった通路。

この通路も上階と同じく前後左右に4本続いている。

そして、それぞれの通路には悪霊レイスが2、3体ほどたむろっていた。


おそらく、下層になればなるほど、敵とのエンカウント率が上がり、強さも上がっていくシステムだろうな。


だったら、さっさと最下層に行ってレベリングする方が効率良さそうだ。



ってことで、藍斗あいとあんど火乃かののナビのもと、ドンドン突き進んでいく。

途中エンカウントしたレイスたちは剥ぎ取りスキルでコアを破壊。
美味しい経験値となっていただきました。








そして、夜(詳しい時間は不明だけど、腹具合からして結構遅い時間なのは間違いない)

昼飯は朝の残りのサンドイッチで手早く済ませたから、空腹がヤバイです。


今いる地下10階はセーブポイント的なところで、小さな家程度の広さがある。地面も壁も岩。神秘的な湧き水には銀色の小魚が泳ぎ、中央の下の階に降りる螺旋階段の側にはたわわに実ったミカンの木が生えていた。

骸骨要素は全くない空間である。



「じゃ、今日はここまでな」




ツェントルムで買った食材で、簡単に晩飯を作る。

野菜と干し肉を藍斗に切ってもらっている間に、火蜥蜴サラマンダーに変身した火乃に火をおこしてもらう(変身使えば火も水も使い放題だ。便利)


同じくツェントルムで仕入れた調理セットから、鍋を取り出し、切った材料をざっと炒めて、適当なところで水を加えて煮る、と。


入れた野菜はトマト、白菜、玉ねぎ、ジャガイモ、キノコ。

え?とれる季節がバラバラ?

文句はこの世界の創造主神さまに言ってください。
俺は市場で仕入れただけです。安売りしてたので。




……そろそろいいかな。

トマトの赤色が溶けたスープ。

塩コショウで軽く味を整えて…と。



よし!完成!



「「「いただきます」」」


ふー、ふー…ズズっ。

……おお、トマトの酸味がほどよくて、我ながらいい出来だと思う。

干し肉とキノコの旨味も素晴らしい。
シンプルな味付けながら、具沢山スープは晩御飯として十分なボリュームとなっています。

惜しむらくはここにコンソメがないことだな。絶対あうのに。




カタコンベの(二重の意味での)寒さに襲われていた体をスープでしっかり温めたら、油敷布で簡単な寝床作りをする。

…しかし、

「………さむっ」


動いているときは気にならないけど、ジッとしてると結構冷える。


いちおう、油敷布は1人1枚用意しているものの、あくまでそれは敷くものだ。

毛布的なのはお金が無くて買えなかった…。



いや!
だって、まさか、ダンジョンがこんな寒いとは思わなかったんだもん!!

秋の、ちょっと冷え出したくらいの気温だとは思わなかったんだもん!!


あ、すみません、
「もん」とか言ってすみません!
調子乗りました!!



ふぅ…。


仕方ない、我慢して寝るか…。

こればっかりはどうしようもない……ん?


諦めて寝る体勢をとった俺のとなりに、火乃が腰を下ろす。


「カイト、ボク寒いから、一緒に寝てもいい?」

あ、たしかに。
俺が寒いんだし、火乃だって寒いよな。


「おお、いいぞ」

「やった!」

「…………」


喜ぶ火乃を、藍斗がジッと見ていた気がするが……。
藍斗も寒いのかな。


なんなら、いっそモフ、全員でモフモフ、固まってモフモフモフ雑魚寝してモフモフモフモフモフモフ。


「って、モフモフ?」

全身に当たるモフモフに目を向けてみると、そこには赤毛の大きな鷹頭の獅子グリフォンが……え?


「あ、ボクだよ、ボク。火乃。カイトも寒そうだったし、これで一緒に寝たらあったかいかな、と思って……ダメだった?」


か、神ぞここに降臨せり…!!

モッフモフのフッカフカの生きた毛布!!

あ、あったけぇ…!!


「あ、でもMPは大丈夫か?」

たしか、このスキルは使用時間に応じてMP消費するんだよな…。


「うーん、多分大丈夫だと思うよ?」


火乃のステータス画面を見てみると………たしかに、MPがほとんど消費されてない。

レベルに応じて消費MPが軽減されるとかあったし…火乃、今レベル200だもんな。そりゃ、消費MPも少ないか。



「…じゃあ、このまま寝るか」


手足を伸ばす火乃グリフォンに包まれるように寝転がると、体に当たる手触りのいい獅子の毛が高級布団のようだ。
温かいし、フワフワだし…あぁ、クセになりそう。


「一回この感覚を覚えたら、火乃なしでは夜眠れない気がする……」


と、呟くと、火乃の尻尾がパタパタと動いた。

赤金色の瞳が細められ、とても嬉しそうだ。


「藍斗は大丈夫か?寒くない?」

「……いや、俺は大丈夫だ」

寒いなら固まって寝てもいいか、と思って聞いてみたが…余計な心配だったな。


「じゃあ、おやすみ~」


今日だけでもちょっとはレベル上がったし、これなら結構簡単にレベリングできそうだ。

よし、明日からもガンガンレベリング頑張るぞー!









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