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ブランディア編

10頁 ベイルの異世界教室!

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「はい、カイト」

ベイルがリトルロックドラゴンの皮を売った代金を俺に手渡す。

「ありがとう」

いくつもの硬貨がジャラジャラと入った袋を手にとって、改めて不思議な気持ちになる。異世界から来た勇者なんて、簡単に信じてもらえないと思ってたし。
ベイル曰く、ステータスに嘘はない!ってのが常識らしいけど、この世界にはステを偽る職業ジョブとかないんかね?

「金版1枚で100000ファラン。金貨1枚で10000ファラン。白金貨1枚で1000ファラン。銀貨1枚で100ファラン。銅貨1枚で10ファラン。鉄貨1枚で1ファラン。これは覚えておいた方がいいと思う。後で紙にでも書いておくから、ちゃんと覚えてね?」

「あ、はい。わかりました」

「敬語じゃなくていいよ。なんかむず痒いや」

「……わかった、じゃあ普通に喋るよ」

「うんうん!じゃあ、その辺に座って、代金の確認しよっか!」








やけに機嫌が良くなったベイルに連れられた先は、人気ひとけのない広場。というか、俺とベイルしかいない。


「ここでいっか」

ベイルは風雨に劣化した、しかし頑丈そうな木製の長椅子に座り、ペシペシと隣を叩いた。座れ、ってことらしい。

俺が椅子に座ると、ベイルは手ぬぐいを椅子の上に広げ、そこに袋の中身を取り出すよう指示した。

「……金貨4枚、白金貨8枚、銀貨5枚。合計いくらでしょうか!」


え?!俺???

慌てて綺麗に分けられた硬貨を見つめる。


「えーと…金貨が1万円で?白金貨が千円だったよな?で、銀貨は百円……だから、4万8千5百円?」

「正解!!エンじゃなくてファランだけどね」

よかったー、この調子なら 貨幣に関してはすぐ覚えられそうだな。

本当ほんとはリトルロックドラゴンの皮はあのくらいだと1万ファラン程度なんだけどね、角は珍しいし、あそこの店は僕たちの行きつけだからいろいろサービスしてくれるんだ~」


「そういえば、ベイルはイザベルと姉弟きょうだいなのか?」

世間話でも、と思ってした俺の問いかけに、ベイルが一瞬固まる。
え、俺変なこときいたか?!

しかし、ベイルはすぐにもとの笑顔に戻った。


「……うん!そうだよ!イザベル姉はすっごいんだ!
僕たちのパーティで1人だけ100レベルで、神級しんきゅう魔法をいくつも使えるんだよ!それに、珍しい回復魔法の使い手だし、固有魔法ユニークマジックも使えるんだ!」

ひゃ、100レベル?!
それって、神の話だとMAXのレベルなんじゃ?

というか、なんだか聞きなれない言葉がでたな。
「しんきゅう?とかユニークマジックってなんだ?」

首を傾げる俺に、ベイルは広場の地面の土に近くにあった木の棒でガリガリと文字を書いていく。

「まず、魔法は下から下級、中級、上級、超級、神級ってなってて、実際に戦闘で使われるのは上級からかな」

神級
⬆︎
超級
⬆︎
上級
⬆︎
中級
⬆︎
下級

「それから、属性っていうのがあって、火、風、土、水、光、闇、特殊の7種類だね。で、属性には相性があって……火は風に強く水に弱いって感じ」


光←→闇
                          
火→風
↑〇↓
水←土

(特殊)


「で、この特殊っていうのが、回復魔法とか、固有魔法ユニークマジックのことだよ。あと、カイトの○○の魔法っていうのも特殊に入るね」

「なるほど…」



「で、固有魔法ユニークマジックっていうのは、下級とか神級とか関係ない魔法のこと。火とか水の属性魔法は下級から神級まで5種類の魔法があるんだけど、属性が関係ない魔法もあって、そういうのが固有魔法ユニークマジックって呼ばれてる。技が1種類しかないのが由来らしいよ」

属性魔法→5種類

固有魔法ユニークマジック→1種類


「他にもスキルとか、パッシブとかがあってね…」

ベイルは硬貨を袋に戻し、俺の手に渡す。

「スキルは、そうだな……例えば剣なら『三連斬さんれんざん』とか、僕の弓なら『矢生成』とかだね。まぁ、MPを消費する魔法以外のすごい技って感じかな?パッシブは常に発動してるんだけどMPは消費しなくて……うーん…なんて説明すればいいかな……?」


しばらく唸っていたベイルが、ポンっと手を叩く。

「そーだ!!カイト、僕のステータス見てみてよ!」

「え?あ、うん」

ステータス…!!

って、こんな強く念じなくてもいいのか…?


ーステータスー 「カイト」 LV1

職業ジョブ 勇者
種族 人間

HP30   MP5
攻10    防15
器用さ30   

スキル
『神の加護ON』『剥ぎ取りLV3』『洗濯の魔法』『調理の魔法』『眠りと警戒の魔法』



って、これ俺のステータスじゃん。

「自分のじゃなくて、僕のステータスをみたいって念じなきゃ」

笑いを含んだ声でベイルが教える。
目には、妙に暖かな光が浮かんでいた。

ときどき、ベイルが外見よりも年上に見える時があるだが……気のせいか?


と、今はステータスこっちに集中!


『「ベイル」に閲覧申請をしますか?』

『Yes』『No』


Yesっと。


『「ベイル」から閲覧申請の許可が降りました』

俺のステータスの隣に別のステータス画面が現れる。


ーステータスー 「ベイル」 LV40

職業ジョブ 狩人
種族 エルフ

HP500   MP100
攻100+50    防100+50
器用さ100
属性・草A

スキル
『連射』『連射改』『集中』『矢生成』
『パッシブ 森の精霊』


よ、40…


いや、さすがにレベル1で対抗心燃やそうとは思ってなかったけどさ……(外見)10代前半の男の子に圧倒的に負けてるのは…ちょいとへこむな。


「どうかした?」

「え?!いや!なんでもない」

「そう?じゃあ、この、『連射』と『パッシブ 森の精霊』ってとこの説明読んで。あ、改も見ていいよ!」

言われた通りに、項目をタップし、説明を開く。

『連射』
矢を続けて射ることができる。
最大3射。消費MP3

『連射改』
矢を続けて射ることができる。
最大10射。消費MP5

『パッシブ 森の精霊』
植物系モンスターに対し攻撃力アップ。
植物系アイテムの使用時に効果アップ。
森林エリアにいる際は全ステータスがアップする。
また、森にいるモンスターの言葉を理解できるようになる。

このパッシブはエルフに所持者が多いが、森とともに生き、森とともに死ぬモノは得ることがある。
特にモンスター系では銀狼シルバーウルフ白狼ホワイトウルフ、森に住む人型モンスター(特にメス)に取得しやすい傾向がある。

なるほど。
つまり、スキルは攻撃用。パッシブはそれを補佐する…みたいな感じか?

うーん、パッシブ……すごいんだろうが、後半の説明が引っかかるな。

神…もの○け姫でも観たかな?




「パッシブはこんな感じだよ。種類がいっぱいあるから、全部知ってる人は多分いないんじゃないかな?」


ベイルが木の棒をぽいっと投げ捨てた。








どうやらベイルの異世界教室はこれにて終了のようだ。






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