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第六話 捕縛と騒乱罪
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やがて民衆の声は「証拠を出せ! イライザ様が可哀想だ!」という内容に達した。
イライザは講師たちのそろそろ締めろ、という視線を受け仕方ないか、と口を開く。
もう少し、この理不尽な虐め。
普段は絶対にできないだろう、王族弄りを楽しんでたかったのだけれども。
「ありがとうございます、殿下。愛していただきました、感謝しております」
「……なんっ、だと?」
いきなり告白された婚約破棄に対して、公女イライザは表面上は何ひとつ感情を揺らがせることなく、別れを告げた。
「いえ、殿下がお望みのとおり、婚約破棄を正しく拝受いたしました。見届け人はあちらに」
と、イライザは壁のほうを指示してやる。
そこには法律に認められたさまざまな契約が適法である、と証明する公証人の資格を有した講師たちが数名。
中にはエレン直属の講師であったり、現国王がこの学院に在籍時に担任をしていた現学院長の姿も見え隠れしている。
「あっ、いや、これは。だって、俺がこうしたら俺たちは、なあ?」
「えっ、エレン様が命じられたのではないですか、ローザはそれに従ったままです……あんなに愛しているとささやいてくれた、のですから。責任を」
やっぱり真紅の悪女、最低の泥棒猫はここにいた。
イライザはローザに余裕をもって歩み寄る。
その耳元にたっぷりの嫌味を含んでささやいてやった。
「あなたのご実家。我が公爵家と王家と因縁で結ばれそうですわね。没落しなければよいのだけれど……殿下をよろしくね。泥棒猫さん」
ローザは先を予見したのだろう、瞳の色を失い、その場にへなへなとしゃがんでしまった。
エレンはまだ自分は優勢だと思いこんでいるらしい。
騒動を諫めようと三人の間に入ってくる講師陣や警備兵にイライザが王家にたてついた反逆者だから捕らえるようにと叫んでいたが、それは即座に無視された。
「殿下、騒乱罪を適用させていただきます。この学院の法は王族には適用されませんが、王国の法は適用されます。さあ、こちらで詳しく事情を釈明していただきますぞ!」
いつの間にか学院関係者の筆頭に立っていた学院長が、エレンの手を力強く引くと人込みを分け、どこかに連れ去っていった。それはローザも同様で。
「結局、なんだったのかしら。この乱痴気騒ぎは……」
と残された被害者イライザのぼやきが、すべてを的確にとらえ皮肉っていた。
イライザは講師たちのそろそろ締めろ、という視線を受け仕方ないか、と口を開く。
もう少し、この理不尽な虐め。
普段は絶対にできないだろう、王族弄りを楽しんでたかったのだけれども。
「ありがとうございます、殿下。愛していただきました、感謝しております」
「……なんっ、だと?」
いきなり告白された婚約破棄に対して、公女イライザは表面上は何ひとつ感情を揺らがせることなく、別れを告げた。
「いえ、殿下がお望みのとおり、婚約破棄を正しく拝受いたしました。見届け人はあちらに」
と、イライザは壁のほうを指示してやる。
そこには法律に認められたさまざまな契約が適法である、と証明する公証人の資格を有した講師たちが数名。
中にはエレン直属の講師であったり、現国王がこの学院に在籍時に担任をしていた現学院長の姿も見え隠れしている。
「あっ、いや、これは。だって、俺がこうしたら俺たちは、なあ?」
「えっ、エレン様が命じられたのではないですか、ローザはそれに従ったままです……あんなに愛しているとささやいてくれた、のですから。責任を」
やっぱり真紅の悪女、最低の泥棒猫はここにいた。
イライザはローザに余裕をもって歩み寄る。
その耳元にたっぷりの嫌味を含んでささやいてやった。
「あなたのご実家。我が公爵家と王家と因縁で結ばれそうですわね。没落しなければよいのだけれど……殿下をよろしくね。泥棒猫さん」
ローザは先を予見したのだろう、瞳の色を失い、その場にへなへなとしゃがんでしまった。
エレンはまだ自分は優勢だと思いこんでいるらしい。
騒動を諫めようと三人の間に入ってくる講師陣や警備兵にイライザが王家にたてついた反逆者だから捕らえるようにと叫んでいたが、それは即座に無視された。
「殿下、騒乱罪を適用させていただきます。この学院の法は王族には適用されませんが、王国の法は適用されます。さあ、こちらで詳しく事情を釈明していただきますぞ!」
いつの間にか学院関係者の筆頭に立っていた学院長が、エレンの手を力強く引くと人込みを分け、どこかに連れ去っていった。それはローザも同様で。
「結局、なんだったのかしら。この乱痴気騒ぎは……」
と残された被害者イライザのぼやきが、すべてを的確にとらえ皮肉っていた。
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