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エピローグ
第六十九話 家族の肖像
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息子をその場に招いてやれるなら、自分はすべてを差し出すだろう。例え命ですらも。
両親がここにいてくれたなら、温かい腕で抱きしめてくれたはずだ。胸の狂おしい痛みを癒してくれるだろう。
もう願っても届かないその場所はどこにもない。息子を抱きしめ、もう傷つけないで、と願い訴えることしかセナにはできなかった。
本当はロバートの腕に抱かれ、彼の微笑みと、笑い声、自分勝手な傲慢さと彼ながらの優しさをたたえた皮肉めいた口調、その優しさ。
すべてに触れて、彼に会いたくてみずからもその腕で息子とともに三人で抱き合いたくて仕方がない。
それはもう終わった願いだ。彼を拒絶したあの夕方に終わってしまったのに……。
「何故……」
「もう終わった。なにもかも、君を困らせる者はもういない」
大きくてあたたかな手のひらが、そっとセナの頬を包んでくれる。
そこに流れていた涙をそっと、指先で拭われて、セナはえっ? えっ? と自分とロバートを交互に見ている、息子に目をやった。
母親は明らかに動揺し、救いを求めている。
ここは自分の出番だろうと、ディーノは胸を張って、セナの頭を抱きしめた。
「殿下、いきなりきて母を泣かせるのはどういうことか、せつめいしていただけますか」
なんとなく難しい言葉を使い、舌を噛みそうになる。
ロバートは祖母や皇弟以上の難敵と対決している気分だった。ここでしくじれば、この先すべてを失う……。
「君に理解してもらえるかどうかがわからない。だがこれだけは真実だ。公爵家の全ては君のものに戻った。セナ、悪人たちはもう戻ってこない。君の悪夢は終わった。後は俺と君と彼の問題だと俺は思う」
「どう、いう……ことなの」
震える声で、それだけをようやく絞り出して、セナは質問する。
息子の真っ青な髪の中に埋めていた顔を上げて、涙で揺れる世界の中にロバートを見つめた。
「難しいことじゃない。いろんな人たちの手助けのおかげで、君が本来持つべき全ての財産は、君のもとへと戻る。ただそれだけだ」
「でも!」
それだとしても、義理の姉と彼の婚約は――。それが続いている限り、私たちに未来はない。
「俺と彼女の関係は終わった。だがこれは子供の前でするべき話じゃない。後から二人の時にゆっくりと君に説明したい。その時間を俺に与えてもらえないだろうか?」
「時間なんていくらでもあるわ。そんなもの戻ってきてなってほしくない。最後に困るのは私達なの。あなたにだって報告という未来があるじゃない!」
切実な悲しみの訴えだった。
セナは肩ほどまでの銀髪をポニーテールに結んでいたが、今はそれが緩んでしまい、顔の前と落ちている。
それは彼女の涙が、銀色の輝きをまとったかのように悲しみに満ちて、陽光を照り返していた。
ディーノは母親を守るように立ち上がってもいいと思った。
息子としてそれは正しい行いだと思った。
しかしその前に傷ついたセナの魂をそっと拾い上げる誰かが必要だと思った。それは多分自分じゃない。
ロバートをじっと見つめると、二人の真紅の瞳がそれぞれ交錯する。
父と息子は男だけに分かり合える感情で母親を慰めようとしていた。
「君が不安に思うことはもうない。それはもうないんだ、セナ」
「どういうことかわからない。ちゃんと説明してくれなきゃ何もわからない」
「……俺は王位継承権を捨てた」
「嘘っ、そんな。そんなこと……だって、あなたには」
「国王になるよりも、君たちとともにいたいんだ。王国に行く必要ない。俺も戻る気はない。君が許可してくれるなら一月に一度だけでもいい。彼と会いたい。それは駄目か?」
「……」
拒絶の言葉は出てこなかった。
王位継承権を捨てた。そんな最後の切り札まで捨て去って、彼はこれからどうやって生きてくつもりなんだろう。
セナは口がきけなくなり、呆然となって彼を見つめた。
それまで恐怖に打ち震えていた心臓が、急速に鼓動を早めた。
二人の視線がゆっくりと絡み合い、互いの瞳の内側にある感情を読み取ろうとして、未熟な男女の愛はその輝きを確かなものへと変化させる。
「家に戻りたい」
「どこの家だ? ロアッソと過ごしていた――」
ロバートがそう告げると、セナは大きく頭を振った。
そうではない。自分の生まれた家、父母の懐かしい記憶の残る、実家に戻りたいとセナは深く願った。
「カーバンクル公爵邸の本宅……奥まったところにある屋根裏部屋に、お父様はいろんなものを。おじい様やひいおじい様、家を始められた聖女様に関わるものまで全て納めているの。いつかお前がこの家を継ぐ時にここを開けるがいいと、そう言われた」
「亡き公爵殿の遺産が、そんなところあるとはな」
「財産なんていらないの。あの部屋に残っている、両親の面影だけ。家族で写っている写真だけ欲しい。ただそれだけ」
「一緒に取り戻しに行こう。今度は最後まで俺がそばにいる」
そう言って差し出されたロバートの手を、セナはなぜか素直に受け止めた。
それまで拒絶していた様々なものが、まるで春の日差しを浴びて溶けていく雪のように、どこかへと流れ去っていく。
不器用に互いの気持ちを確認する二人の関係は、擦れ違いが終わり絡み合ったらしい。
息子は満足そうに両親を見上げると、「それじゃあ三人で行ったらもっと早いよね?」と提案する。
両親がここにいてくれたなら、温かい腕で抱きしめてくれたはずだ。胸の狂おしい痛みを癒してくれるだろう。
もう願っても届かないその場所はどこにもない。息子を抱きしめ、もう傷つけないで、と願い訴えることしかセナにはできなかった。
本当はロバートの腕に抱かれ、彼の微笑みと、笑い声、自分勝手な傲慢さと彼ながらの優しさをたたえた皮肉めいた口調、その優しさ。
すべてに触れて、彼に会いたくてみずからもその腕で息子とともに三人で抱き合いたくて仕方がない。
それはもう終わった願いだ。彼を拒絶したあの夕方に終わってしまったのに……。
「何故……」
「もう終わった。なにもかも、君を困らせる者はもういない」
大きくてあたたかな手のひらが、そっとセナの頬を包んでくれる。
そこに流れていた涙をそっと、指先で拭われて、セナはえっ? えっ? と自分とロバートを交互に見ている、息子に目をやった。
母親は明らかに動揺し、救いを求めている。
ここは自分の出番だろうと、ディーノは胸を張って、セナの頭を抱きしめた。
「殿下、いきなりきて母を泣かせるのはどういうことか、せつめいしていただけますか」
なんとなく難しい言葉を使い、舌を噛みそうになる。
ロバートは祖母や皇弟以上の難敵と対決している気分だった。ここでしくじれば、この先すべてを失う……。
「君に理解してもらえるかどうかがわからない。だがこれだけは真実だ。公爵家の全ては君のものに戻った。セナ、悪人たちはもう戻ってこない。君の悪夢は終わった。後は俺と君と彼の問題だと俺は思う」
「どう、いう……ことなの」
震える声で、それだけをようやく絞り出して、セナは質問する。
息子の真っ青な髪の中に埋めていた顔を上げて、涙で揺れる世界の中にロバートを見つめた。
「難しいことじゃない。いろんな人たちの手助けのおかげで、君が本来持つべき全ての財産は、君のもとへと戻る。ただそれだけだ」
「でも!」
それだとしても、義理の姉と彼の婚約は――。それが続いている限り、私たちに未来はない。
「俺と彼女の関係は終わった。だがこれは子供の前でするべき話じゃない。後から二人の時にゆっくりと君に説明したい。その時間を俺に与えてもらえないだろうか?」
「時間なんていくらでもあるわ。そんなもの戻ってきてなってほしくない。最後に困るのは私達なの。あなたにだって報告という未来があるじゃない!」
切実な悲しみの訴えだった。
セナは肩ほどまでの銀髪をポニーテールに結んでいたが、今はそれが緩んでしまい、顔の前と落ちている。
それは彼女の涙が、銀色の輝きをまとったかのように悲しみに満ちて、陽光を照り返していた。
ディーノは母親を守るように立ち上がってもいいと思った。
息子としてそれは正しい行いだと思った。
しかしその前に傷ついたセナの魂をそっと拾い上げる誰かが必要だと思った。それは多分自分じゃない。
ロバートをじっと見つめると、二人の真紅の瞳がそれぞれ交錯する。
父と息子は男だけに分かり合える感情で母親を慰めようとしていた。
「君が不安に思うことはもうない。それはもうないんだ、セナ」
「どういうことかわからない。ちゃんと説明してくれなきゃ何もわからない」
「……俺は王位継承権を捨てた」
「嘘っ、そんな。そんなこと……だって、あなたには」
「国王になるよりも、君たちとともにいたいんだ。王国に行く必要ない。俺も戻る気はない。君が許可してくれるなら一月に一度だけでもいい。彼と会いたい。それは駄目か?」
「……」
拒絶の言葉は出てこなかった。
王位継承権を捨てた。そんな最後の切り札まで捨て去って、彼はこれからどうやって生きてくつもりなんだろう。
セナは口がきけなくなり、呆然となって彼を見つめた。
それまで恐怖に打ち震えていた心臓が、急速に鼓動を早めた。
二人の視線がゆっくりと絡み合い、互いの瞳の内側にある感情を読み取ろうとして、未熟な男女の愛はその輝きを確かなものへと変化させる。
「家に戻りたい」
「どこの家だ? ロアッソと過ごしていた――」
ロバートがそう告げると、セナは大きく頭を振った。
そうではない。自分の生まれた家、父母の懐かしい記憶の残る、実家に戻りたいとセナは深く願った。
「カーバンクル公爵邸の本宅……奥まったところにある屋根裏部屋に、お父様はいろんなものを。おじい様やひいおじい様、家を始められた聖女様に関わるものまで全て納めているの。いつかお前がこの家を継ぐ時にここを開けるがいいと、そう言われた」
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「一緒に取り戻しに行こう。今度は最後まで俺がそばにいる」
そう言って差し出されたロバートの手を、セナはなぜか素直に受け止めた。
それまで拒絶していた様々なものが、まるで春の日差しを浴びて溶けていく雪のように、どこかへと流れ去っていく。
不器用に互いの気持ちを確認する二人の関係は、擦れ違いが終わり絡み合ったらしい。
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