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第二十話
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馬車が王宮につき、三重になっている城壁を通過してようやく、揺れる車内から解放されたのはそれから三十分ほどしてからだった。
官吏が十数人の部下とともに私達を出迎える。
不思議なことに数年前に国王陛下と対面した玉座の間に向かうのではなく、女神教を奉じる国の王宮ならばどこにでもある神殿へと案内される。
そこで、これからあるお父様の受勲式を行うのだ、と説明された。
女神様の彫像が祀られている神殿の最奥で、私達は‥‥‥いえ、私は見覚えのある二人と対面することになった。
一人は昼間、私を救ってくれた彼、アレクセイ。
そして、もう一人は国王陛下と共にいた、私の元婚約者である、ロイデンだった。
陛下のそばには他にも大勢の家臣と第一王子、第三王子や公爵様など、王族を代表する面々もずらりと揃っていて、その中にはロイデンの生みの母である王妃様も混じっておられた。
ただ、彼女の顔は深い海の底のように沈んでしまっていて、夫の全快を祝うにしては重苦しい雰囲気を醸し出していた。
お父様は陛下からお褒めの言葉と謝辞を頂き、それから多くの勲章とさらに領地の加増。
それから、運輸大臣の職を辞して、外務大臣に昇進するという官吏の報告があった。
ロイデンは真っ青な顔のまま、ただ黙ってうつむくままで、こちらを見ようともしなかった。
あれからミザリーはどうなったのだろう。
私達の婚約は正式に破棄されたのだろうか。
そんなことが胸の中を過ぎる中、一通り最後まで式が行われ、聖女様とアレクセイ、その他の方々が父親を褒め称えていた。
国王陛下を助けたのだからそれくらいは当たり前だのかもしれないけれど。
でも、私のことについて彼らは何も触れないまま歓談の時となった。
「待っていたぞ、バーセナル。娘さんは立派に育ったな?」
「アレクセイ。お前、娘に会うならば会うと一言、言っていくのが礼儀だろう」
「いいじゃないか。その挨拶をしていたら、あの場には間に合わなかった。あんな不名誉な婚約破棄なんて俺は聞いたことも見たこともない」
周囲に聞こえるようにアレクセイは大きな声でこれみよがしに喧伝する。
彼の言葉を背に受けて、会場の隅の方で他の兄弟たちと食事をしていた第二王子ロイデンは、青い顔をさらにどす黒いものに染めて震えていた。
「おい、アレクセイ。ここでその話は‥‥‥」
「いいだろう、兄弟子。あんたの娘が被害にあったんだ。俺は声を大にして言いたいね。補償しろと!」
「アレクセイ!」
お父様はそう言い、止めようとした。
形だけでも。
アレクセイに感謝の謝辞を述べ、彼の側から離れていた私は、その声の大きさにびっくりとしていた。
そして、会場の最奥に座りこの会話をじっと見守っていた人物が一人。
我が資源国家ロイデンを統べる国王陛下、その人が口を開いた。
「ロイデン。我が国の名を与えたお前は王族にふさわしいのか?」
「ちっ、父上。陛下!」
第二王子ロイデンは、陛下の命を受けた衛士たちにより、会場のまんなか。
私と聖女様の目の前に引きずり出されていた。
官吏が十数人の部下とともに私達を出迎える。
不思議なことに数年前に国王陛下と対面した玉座の間に向かうのではなく、女神教を奉じる国の王宮ならばどこにでもある神殿へと案内される。
そこで、これからあるお父様の受勲式を行うのだ、と説明された。
女神様の彫像が祀られている神殿の最奥で、私達は‥‥‥いえ、私は見覚えのある二人と対面することになった。
一人は昼間、私を救ってくれた彼、アレクセイ。
そして、もう一人は国王陛下と共にいた、私の元婚約者である、ロイデンだった。
陛下のそばには他にも大勢の家臣と第一王子、第三王子や公爵様など、王族を代表する面々もずらりと揃っていて、その中にはロイデンの生みの母である王妃様も混じっておられた。
ただ、彼女の顔は深い海の底のように沈んでしまっていて、夫の全快を祝うにしては重苦しい雰囲気を醸し出していた。
お父様は陛下からお褒めの言葉と謝辞を頂き、それから多くの勲章とさらに領地の加増。
それから、運輸大臣の職を辞して、外務大臣に昇進するという官吏の報告があった。
ロイデンは真っ青な顔のまま、ただ黙ってうつむくままで、こちらを見ようともしなかった。
あれからミザリーはどうなったのだろう。
私達の婚約は正式に破棄されたのだろうか。
そんなことが胸の中を過ぎる中、一通り最後まで式が行われ、聖女様とアレクセイ、その他の方々が父親を褒め称えていた。
国王陛下を助けたのだからそれくらいは当たり前だのかもしれないけれど。
でも、私のことについて彼らは何も触れないまま歓談の時となった。
「待っていたぞ、バーセナル。娘さんは立派に育ったな?」
「アレクセイ。お前、娘に会うならば会うと一言、言っていくのが礼儀だろう」
「いいじゃないか。その挨拶をしていたら、あの場には間に合わなかった。あんな不名誉な婚約破棄なんて俺は聞いたことも見たこともない」
周囲に聞こえるようにアレクセイは大きな声でこれみよがしに喧伝する。
彼の言葉を背に受けて、会場の隅の方で他の兄弟たちと食事をしていた第二王子ロイデンは、青い顔をさらにどす黒いものに染めて震えていた。
「おい、アレクセイ。ここでその話は‥‥‥」
「いいだろう、兄弟子。あんたの娘が被害にあったんだ。俺は声を大にして言いたいね。補償しろと!」
「アレクセイ!」
お父様はそう言い、止めようとした。
形だけでも。
アレクセイに感謝の謝辞を述べ、彼の側から離れていた私は、その声の大きさにびっくりとしていた。
そして、会場の最奥に座りこの会話をじっと見守っていた人物が一人。
我が資源国家ロイデンを統べる国王陛下、その人が口を開いた。
「ロイデン。我が国の名を与えたお前は王族にふさわしいのか?」
「ちっ、父上。陛下!」
第二王子ロイデンは、陛下の命を受けた衛士たちにより、会場のまんなか。
私と聖女様の目の前に引きずり出されていた。
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