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第5話 望んでイタ夢が壊されタときニワ、ニワタリタちがタすけに来タリする

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 目が覚める

 とても長い夢だった。しかし、すがすがしい気分でもあり、もっと寝ていたいという感情も生まれなかった。ここはどこだろうか。いや知っている。ここで死ぬはずだった。末期のがんであった僕はここで衰弱するはずだった。だけど、あのへんな影に誘われて・・・・・・。

 ベットから体をおこす。窓から夕陽が差し込み、部屋のほこりやごみが反射して、きらきらと僕の目の前に降ってくる。その時、目の前に胡散臭い恰好をしたギターケースを背負った男がいることに気が付いた。会うのは初めてだが、きっと僕もしっている人なんだろうとなんとなく感じた。

「おはよう。こうやって話すのは初めてだね。彼から名前を聞いてたと思うけど。気分はどうだい?」

 その男は、優しい声で話かける。

「はい。やっと目が覚めたって感じです。カシマさん・・・・・・ですよね?」

「その通り」

 カシマはベッドサイドに寄る。

「いやぁ、たまたま この病室に人がはいってなくてよかったよ。もし、ベットで寝ていたら君はその人の上に突然現れるという、おもしろい現象が起こっていたよ」

「えっ、そうだったんですか・・・・・・」

 僕は、ベットをさする。

「あの、僕が眠ってからどれぐらい日があったのでしょうか?」

「ああ、説明しないとね。いつもはニワタリがやる役割なんだけど、彼、急いで帰っちゃったからなぁ」

「はぁ・・・・・・」

「ああ、ごめん。簡単に説明するよ」


僕は身構える。

「君が眠ってから約3年経った。君は突然病室からいなくなり、行方不明者として今も捜索されている」

「やっぱり、そうなんですね・・・・・・家族や環奈は?」

「確かに、君がいなくなったことで、かなりの混乱は起きたよ。だけど、みんな君の死というか失踪を乗り越えて、健康的に生活しているみたいだよ。環奈ちゃんも結婚して新しい家族がいるみたい」

「そうですか、よかった・・・・・・」

 家族や彼女は幸せに生活している。それだけで心が安心する。

「これから僕はどうしたらいいんでしょうか・・・・・・?今更家族にあって、納得してもらえるかどうか・・・・・・」

「それは確かにそうだね・・・・・・」

 カシマは廊下に繋がる扉へ歩く。

「君次第さ・・・・・・、家族のもとに行ってもいいし、彼女を寝取ってもいい、ああこれは言い過ぎた。でも、これだけは約束してくれ、今までの夢の話、僕やニワタリと出会ったことは絶体に誰にもいわないでくれ。でもこう言っちゃうと、かなり君の行動が制限されちゃうけどね・・・・・・でももうここは夢の世界じゃない。誰も君のやろうとすることに反対はしないよ。自分で決めるんだ」

 そう言って、カシマは扉を開き部屋を出る。

「あといいこと教えてあげる。一度夢に囚われた人間はなぜか、健康体になってみな戻ってくるんだ。つまり、君のなかにあったがんはもうなくなっているよ」

「やっぱり、そういう感じなんですね・・・・・・不幸中の幸いという感じですかね」

 カシマはフフッと笑顔になる。

「またな青年」

「はい、ありがとうございました」

 僕は今度こそ返事を返し、しばらく窓から指す夕日を眺めた。時間はいっぱいあるんだ。今日ぐらい休んでもいいだろう。まずは、ばれないようにここを出ないとね。































「はぁ、はぁ、はぁ」

 まさか、2週間近く夢の中にいることになるなんてな。これはあいつらにかなり心配かけちまった。

 早く帰ってやらねば!

 あたりは日が沈み、ヒグラシも鳴き止み始めている。

 山を登り、神聖な雰囲気がただよう空間をただ走る。そして神社に向かって伸びる約20段ほどの階段が見える。その階段を登るため、神社の鳥居をくぐり階段を登り始める。

 しかし、ニワタリの目標はその神社ではなかった。鳥居をくぐった瞬間、現実とは違う空間に繋がり、一軒の和風の屋敷、一階建てでニワタリの先祖から続く屋敷がそこに現れる。

「はぁ、はぁ、たっただいまぁぁ!!」

 勢いよく玄関の扉を横にスライド。目の前にメイド服を着た黒髪でショートカットの女性が一人、座って待っていた。

「やぁ、セラ。ただいま・・・・・・」

「・・・・・・おかえりなさい」

 セラはむすっとした表情で、座布団から立ち上がり、部屋の奥へ。

「んだよ・・・・・・。もっと喜んでくれてもいいじゃねえか」

 靴を脱ぎ、中へ入る。畳の部屋でニワタリは倒れこみ。走ってきた疲れを癒す。部屋は真っ暗だが、月明かりが部屋を照らす。

 この木と畳と庭の花たちの匂い。あぁ 落ち着く。

 このまま、寝てしまおうかと思っていた時、タオルがニワタリの顔をめがけて降ってくる。

「わふっ」

 タオルを取るとセラが自分の顔を覗いていた。

「お風呂は沸かしてあります。好きな時にどうぞ。上ったらごはんにしましょう」

「それ最高」

 そういい、彼女は部屋の中心にある照明のぶら下がる紐を引き、明かりをつける。そして台所へ。俺は風呂に入ろうと立ち上がる。

「あっニワタリ! おかえりなさーーい!」

 突然俺の腹にめがけて飛び込んで切る少女が一人。凛子だ。 

「ウェップ、はは!大人しくお留守番できてたか~」

「できてたよー、でも、ニワタリ汗臭い・・・・・・」

 凛子は飛びのく。

「ええっ、ぎゅっとさせろよ~」

 空いている両手をわしわしする。

「わっやだ! くんじゃねーー!」

 汗臭いおっさんと少女が部屋のなかでグルグル。いやぁ~こりゃ犯罪かもな。

「やかましいな~もう。ははっ ニワタリさんお疲れさまでした」

 次に出てきたのは錦にしき君。

「ただいま!、もしかして背が伸びた?」

「いや、それ一年以上会ってない甥っ子にいうセリフだろ」

 俺含め男2人と女子2人のまるで家族みたいなつながり、これが俺の力の源。

 彼らがどうしてここに来ているかはまた今度にして、とりあえず風呂に入って今回の騒動は終わりにしよう。













「今回の騒動で、わかったことは一つ。奴らはこの星を奪おうとしているってことだ。こっちは大人しく生活したいだけなのにね」

「しかしカシマさん。このままでは、侵略されるのは時間の問題だと思われます」

「そうだね。もしもの時のため、僕の代わりにこの星、世界を守ってくれる人を覚醒させなければならないね」

 そういい、カシマはギターをポロンと鳴らした。
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