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ブランシェット家と王子の攻防1
しおりを挟む舞踏会当日より半年前。
良い子のレイラが床についた21時。その時、
ブランシェット家では秘密の地下室で悪魔たちの饗宴ともいえるレイラ及びブランシェット家に仇なす愚か者を血祭りにあげるための極秘会議が開かれる。
元々地下牢や拷問室であった地下をロードナイト夫妻監修の元スパイ対策を綿密に行って改築された地下会議室である。
ここはブランシェット家の中枢であり、レイラ親衛隊本部でもある。
地下空間でありながらも圧迫感を感じさせないように天井の高さまで計算され、機密保護のためにも作れないため大きな窓はないが、元魔術師団長であり現レイラの家庭教師でもある孤高のオールドミス、アルメリア・バートリがこの部屋のために開発した魔力灯の壁掛け燭台を使用しているため明るい。
それに地下であるが、天井まで一部をぶち抜き天窓から自然光を取り入れると共に換気も行える設計になっている。
それに敷き込まれた毛足の長い絨毯に調度は最高級なもので揃えられている。地下であることを除けば最高の一室である。
素晴らしい部屋であるここが、最も普通でないところは存在感を放つ10人がけの巨大な円卓だろう。
普段は使用人として立場を守るがこの場に立つことを許された者はブランシェット家、レイラを守る同志であり等しく発言権を持つのだ。
辺境伯夫人であるオリアーナを議長とし、4人の姉弟、ロードナイト夫妻、それにレイラの家庭教師アルメリア、庭師であり元近衛騎士団長ゴードン、唯一のブランシェット家の良心であり過激になりがちな会議を常識の範囲に収めるストッパーでもある辺境伯家当主ドミニクがメンバーである。
この場であっても給仕のためにオリアーナの背後に控えるセバスを除き、みな円卓についているため空席は1つだけだ。
「今日みんなを招集したのは他でもないわ。
セバス。」
スッとセバスが差し出した一通の手紙。
何ということもない上質な紙でできており品のよいものだ。
「段々としつこさを増しているわ。
レイラが3歳のころから始まってもう13年になるわね。今度の手紙には王都限定のチョコレートを食べに来られませんかと。
添えられていたチョコレートはこちらのブランシェット店でも買える普通のチョコレートだった。」
「奥様。申し訳ありません。
子どもであると見くびった私どものミスですわ。
初手を誤りました。」
「アニタとセバスは良くやってくれているわ。
けど腹が立つわ。昔は手紙くらいだったけど、レイラの好みや今一番欲しがっている物を正確に送りつけてくるなんて、こちらの情報は漏れていると誇示してくるところが性格が悪いわ。」
最初は可愛い物だったのだ。
手紙や花くらいで。王宮付きの暗部が相手であっても、こちらはオリアーナが退位した時に元暗部のトップと目ぼしいものが皆付いてきてしまったため、諜報に関してはこちらがずっと上に立ち、子どもをあやす様に片手間で相手できるほどだった。
しかし、最近ではこちらの防衛を抜いて入り込むことができるものが現れた。
「我が家は情報を漏らすものがいません。
相手はこちらの収支報告書や輸入品の内容からこちらの統計をとって推測もしているようですね」とアルメリアが続く。
オリアーナは、
「レイラに直接手紙が渡せないならとでも考えたのでしょうね。王子肝いりの洋菓子店にチョコレート店を王都に出店。
鶏ガラたちはダイエット大好きだけど流行りものが大好きだもの。お菓子は別腹とでもいって殺到しているみたいね。
それをこちらにもワザと出店して、
王都店には限定品があると広告を出す。その内容も王都店のものは焼きたてだとか、生乳や旬のフルーツを使っただとか王都まで馬車で1週間かかるこちらでは食べられない日持ちのしないものばかり。
レイラはお菓子が大好きだもの。呼び寄せようと撒き餌を撒かれているわね。
それにこちらでレイラの目に入らないようにと思っても、少女向けの童話や小説の中にまでお菓子の名前を仕込んでくるんだもの。広告と一緒にね。
それに包装ね。レイラの好きな人魚に一角獣に妖精なんかをモチーフにして、箱を木箱やアルミなんかの女の子が宝物箱にするのにでも丁度良さそうなものを出してくる。王都に行ったブランシェット領の女の子から自慢でもされたものならみんな欲しくなるような。
手間も金もかけて。それでも利益を莫大に出してるところも可愛げがない。
最近はレイラは王都のお菓子の話ばかりしているし、嵌められたわね。」
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