立つ鳥跡を濁す

湊賀藁友

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おかしかったのか、おかしくなったのか

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「あ゙ーッ、あ゙ーッ!♡あ゙ぐっ、ぅ゙、ッきゅッ、きゅぅゔっ♡」
「あとちょっとですよ。これで最後のプラグ──じゃないや、総排出口拡張器ですからね」
「ゃ゙っ、や゙ッ、ゆぅ゙しぇ゙っ♡きゅぅ゙っ、ぅ゙、~ッッ゙♡♡」
「……聞こえてないか」
「ッッあ゙ぐ!?♡♡」

 ぬぶぷ……ッ♡と音をたてて、私の総排出口の外へと拡張器が出ていく。
 しかしもう時間感覚も曖昧になるほど責め立てられた私はそのことすら上手く理解しきれなくて、ビクビクと全身を震わせることしかできなかった。

「先生、一回お水飲ませるので、口開けさせますよー」
「ぅ、……?」
「よいしょっと。はい、ごっくん」
「っん゙、…………」

 私の頭とスポイトを両手で器用に扱い水を与えられて、熱に溶かされていた理性が段々と形を取り戻してきて。

「先生、意識ハッキリしてますか?」
「…………ああ。……いちおう、大丈夫だ」

 ぼんやりとはしているが問題はない。
 何というか、寝起きのような感覚だ。

「良かった。色んな意味でぐちゃぐちゃになっちゃったので一回防水シート変えたいんですけど、動けます?」
「……? ……!」

 ぼんやりとしていた意識が、その言葉で一気に覚醒したのが分かった。

「っす、すまない!」
「大丈夫です。寧ろ痛そうではなくて安心しました」
「っあ、えと……だな。…………いや、すまない……!」

 先程まで夢うつつで晒していた醜態に、先程まで行われていた施術とは違う理由で身体が熱くなる。
 顔から火が出るどころか全身から火が出そうだし、何なら羞恥で焼き鳥にでもなってしまいそうだ。

「あはは、だから大丈夫ですって。どれだけ謝るんですか、もう」

 穏やかに笑う彼に、先程までの私の醜態を気にしているような素振りなど微塵も見えないのが唯一の救いだ。
 気持ちが悪いとすら思われかねない有様だったろうに、本当になんていい子なのか。

 なんて私が考えている内にテキパキと防水シートを敷き直した彼は、着けていた医療用手袋を新しいものに変えると、今日何度か見たのと同じ微笑みでまたこちらを見た。

「じゃ、施術を再開するのでもう一度こちらに座ってください」

 ……再開って、つまり。

「ま、また、拡張器か……?」
「いえ、もう疑似産卵なので安心してください」

 ──何を?
 何を安心すれば良いんだ私は。今の説明に安心材料なんてなかっただろう。

「ア、リガトウ……」

 だがここまで来たらやるしかない。というか逆に考えるべきだ。ここまで恥を晒したら、これ以上恥ずべきものなど無いと。

 必死に自分にそう言い聞かせた私は、のそのそと防水シートの上に先程と同じように座った。

「……よ、よろしく、頼む……」
「……はい。任せてください」
「?」

 ……今何か、彼の表情に違和感があったような……?

 そう考えかけるが、衣染いぞめくんにどうしたのかと訊くことは叶わなかった。

「それでは、まず拡張が充分されているか確認しますね~」
「あぎゅッ!?♡」

 告げると同時、彼の指がずぷりと私の総排出口内に侵入してきたからだ。

「わあすごい。いっぱい精液おもらししてるせいで指二本同時に入っちゃいましたよ」
「ッあ゙♡あ゙っ、あ゙♡♡っゃ゙、ナカっ、こしゅ、の、ゃ゙、めぇ゙ッ!♡♡」
「ほらもう四本入りますよ。
 どこまで拡がるかな~?」

 両手の人差し指と中指を挿入れているのだろう。
 総排出口を四本の指でゆっくりと四方向に拡げられた私のナカは、自分でも見たことのない場所は、今恐らく衣染くんに丸見えになってしまっている。

「やめ゙ッ、みっ、みないでくれ……っ!」
「見るために拡げてるんですよ?
 先生の体内を傷つけないために、必要な工程なんです」
「っで、でも……!」
「でももだってもありません。湿潤具合チェックしますね~」
「ッあ゙、ぎ~~~っっ!!?♡♡♡」

 拡げられた孔に突然息を吹きかけられて、私は耐えることもできず嬌声を上げた。
 そのせいでじわじわと総排泄腔から精液がにじみ出ていくのを感じるが、衣染くんは何やら不満そうで。

「うーん、タマゴ挿入れるには精液がサラサラし過ぎです。潤滑油足しますね」
「ぎゃゔぅッ!♡♡……ぉ゙、ぎゅ、~~…………っっっ!♡♡」

 潤滑油のボトルをナカに突っ込まれて、そのままどくどくと潤滑油を注ぎ込まれる。
 かと思えばそのままじゅぽじゅぽとナカを甚振られて、理性を失ったままでいなかったことを後悔するような快楽が叩きつけられた。

「こんなに精液がサラサラになるなんて、大分早い段階から精液分泌してたんですねぇ。
 これはぜぇんぶ、産卵症候群を治すための医療行為なのに」

 そうだ。これは医療行為で、気持ちよくなるためのことじゃなくて、そもそも相手は元生徒で。
 ああもう、さいていだ。

「あ゙っ、ひッ゙、ごめッ゙、な゙、ァ゙あ゙っ……♡♡ぅ゙、ごぇ゙ッ、な、しゃ゙あ……ッッ♡♡」
「ちょ、なんで泣くんですか……!?
 ……あーもう、頭は良いくせになんでこんなに騙されやすいのかなぁ……!」
「っえ゙、ぁ゙?いま、なん、ぇ゙あ゙っ♡」

 騙されやすい?
 騙されやすいって、いったい。

 必死に頭を回すが、抱いた疑問が快楽でどこかへと押し流されないようにするので精一杯で答えなんて出せそうにもない。

 そんな私に、どこか苛立った様子で彼がボトルを引き抜いた。

「……ほら、お待ちかねのタマゴですよ。総排泄腔まで、頑張って呑み込んでくださいね」
「お゙、ッぎゅぅゔっっ!♡っあ゙、あ゙、あ゙ーッ!♡ぁぐ、っひ、~~~ッッあ゙♡♡」

 自分で試した時は痛みや恐怖しか生まなかった偽卵が、拡張に伴って快楽の味を覚えさせられてしまったナカを強く擦りながら総排出口のナカへと入っていく。

 それだけ強く擦られたら痛い筈なのに、散々行われた拡張のお陰か、大量に挿入れられた潤滑油のお陰か、はたまたその両方によるものか。
 ナカをゴリゴリと擦る──強くナカを圧迫しながら侵入してきていると言った方が近いかもしれない──偽卵に、目の前の景色すら上手く認識できない程脳が快楽に溶かされていって。

 偽卵が入ると同時に総排出口と偽卵の隙間から溢れる潤滑油のぶぷ……っ♡なんて音が嫌に耳に響いて、またそれに身体が跳ねるというのだからまったくもって嫌になる。

「全部呑み込めましたね~」

 そして頭がおかしくなりそうになりながらも漸く偽卵が全て体内に入ったというのに、衣染くんはそこで終わりにしようとはせず、残酷な言葉を吐きながらにこりと笑うのだ。

「あとは総排泄腔までごっくんするだけですよー」
「いやだっ♡やだやだやだっ♡ふかい゙ぃ゙っ♡♡ も゙ッ♡あだま゙っ、ぉがしぐなぅ゙ゔッ♡♡」
「暴れちゃダメですよ。ほら、もうちょっとですからね~」

 だめだ。だめ、だ。
 だってもう私の快楽許容値は限界で、そこは拡張器でも届いていなかった場所で、そこに入ってしまったら、そこで、快楽を覚えてしまったら。

「あ゙っ、あ゙ーっ!♡あ゙ーっ!♡♡ぎゃぅゔ♡♡きゃ゙、ぁ゙あ゙~~~~~ッッ!!♡♡♡
 ────ッ、あ゙?」

 抵抗虚しく偽卵はどんどんと私のナカまで押し込まれて。
 ぐぼッ♡と偽卵が何かにハマった直後、全ての感覚が一瞬消えて、それから。

「~~~ッッぁあぁ゙あ゙あ゙!!♡♡♡」
「上手く入りましたね、今ココですよ」

 バチバチと強い電流で脳を焦がされるような感覚に藻掻く私を嘲笑うように、腹側へと手を差し込んだ衣染くんがタマゴの入っている部分を手のひらでなぞる。
 タマゴの形をより鮮明に認識させるような、また時折圧迫するような動きに、正に生き地獄と形容すべき快楽が逃がすこともできないまま全身で暴れ回った。

「あ゙ーッ!♡あ゙ーッッ゙!!♡おなかっ、ッおしゅの゙、や゙、ぁあ゙っ!!♡♡」
「でも産まなきゃ。
 はい、一気に押し込みますよー」
「ま゙、ッッぁ゙、ひぎゅ、────~~~ッッ!!♡♡♡」

 もう自分の意志で自由に力を込めることすら難しくなっている私の身体は、しかし衣染くんの手にはしっかりと従ってしまうらしい。

 腹を押し込まれるままにタマゴが体外へと移動を開始して、総排泄腔から出口へと続く管へと向かうタマゴがそこの分かれ目に存在する段差をゴリゴリと擦るのが分かって。
 快楽を得る為の器官ではない筈のそこが、自分の役割を見失ったかのようにちかちかと私の視界を点滅させる。

「あ゙ーっ!♡ぎゅっ、ぎゅッ!きゅるぅ゙ッ!♡きゅぅぅううゔ!♡♡」
「あはは。甘えた声出しても終わりませんよ」

 ああ、こわれる。
 もう、おかしくなる。

 このまま快楽に蕩かされて死ぬのだと、そんな発想すら脳裏をよぎった、直後。

「ひッ♡♡」

 ごぶっ、ぶぷ……こつん。
 なんて些か間抜けな音をたてて、やっとタマゴが外へと排出された。

「……♡……ぎゅ…………ぅ………………?」

 これで、やっと……?

 碌に動かない身体をくたりと脱力させているが、もう気絶寸前だ。
 それでもかろうじて意識を保っていると、不意に衣染くんの声がして。

「もう一回疑似産卵やっときましょうか。
 ほら、今のが上手くいってなかったら嫌ですし」

 切れかけの意識を一瞬引き戻される程の驚愕のままに力を振り絞って彼の方を見て、しかし私は固まってしまった。

 先程の違和感の正体に──彼の笑顔に隠れた歪さに、気が付いたからだ。

「…………きみ、へんだぞ」
「………………は、はは。あはは。
 今更気づきました?」


 笑顔が何か変だ、無理をしているのではないかと訊きたかったのだが、彼には違う意味で伝わってしまったらしい。
 しかし訂正する間もなく、私の意識の糸は切れてしまった。
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