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6・評判
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「つまらんなぁ、クルーディス」
「どなたか気になる令嬢はいらっしゃらなかったの?」
パーティーの後、食事を取りながら家族団らんの時間。
父上も母上もそりゃあもう相当ながっかり具合を隠しもしないでため息をついていますよ。
「そうは言っても挨拶に忙しくてそこまで気にかけてられませんでしたよ。お二人とも無駄に張り切り過ぎです」
「だってなぁ、あんなに可憐な華々が咲き乱れていたんだぞ。誰か一人位見つけたっていいじゃないか」
父上、なんであなたが拗ねてるんですかね。
「そうですわ。私達はあなたが素敵な令嬢を紹介してくれるのをそれはもう楽しみに待っていたのですよ」
母上まで残念な表情でこちらを見つめてますけど無理ですからね。わたしのどこにそんな余裕があると思ってるんですか!
みんながみんな父上や母上の様な出会いで婚姻する訳じゃないですから。わたしにはそんなスキルはありませんよ。
しかも今回は目的の令嬢アイラヴェントにも会えないというオチ迄ついているのに。
あんなに色々回ったのに会えないなんて……うちってそんなに広かった?……って訳でもないんだけどなぁ。挨拶が出来なくてもちょっと位は姿を見せてくれてもいいのに……。
あれ?でもこれで彼女と婚約する流れはなくなるのかな?そうなると逆にラッキーなんじゃない?
「しかしお前は今後社交界ではいい評価を得られそうだな」
「はい?」
先程とは一転、急に父上は真面目な顔になりそんな事を言った。
その切り替えについて行けず思わずすっとんきょうな声をあげてしまった。
「いやな、今日のお前の動きをずっと見ていたが挨拶はもとより、どの客にも如才ない態度で接していたじゃないか。あれ程の社交性が我が息子にあったとは思わなかったぞ」
父は息子の行動を思い出しているのかとても満足気だ。まぁ営業経験者として言わせてもらえば今日のパーティーは巨大な接待会場でしたから。自分の経験を遺憾無く発揮させてもらいましたよ。
今までの引きこもりと比べたらそりゃびっくりだよね。頑張って情報収集もしたし、笑顔もガンガン撒き散らしましたよ。
あんなに笑顔を作ったのは久しぶり過ぎてちょっと大変だったけど、わたしなりに頑張りましたからね!顔の筋肉が痛いのは仕方がない事ですよ。
「どの令嬢達もあなたと話をした後は皆うっとりとあなたを見つめていましたわ。ご子息達にも素晴らしい対応をして皆笑顔でしたものね。この母も感服しました」
「ありがとうございます。……そう言っていただけて良かったです」
二人に手放しで褒められてちょっと恥ずかしいけど、自分のスキルがこんなに役に立つとは……営業職万歳!
「でもねぇ」
「何でしょう?」
「やっぱり素敵な令嬢に会わせてもらいたかったのよね……」
「そうだな。そこは残念でしかないぞクルーディス」
えー、持ち上げといて落としますか。二人とももう勘弁してくださいよ。
「災難だったな、クルーディス」
「全くだよ。あの会場でそんな余裕なかったし」
パーティーからしばらく経ったある日、セルシュが我が家に遊びに来た。どうやら彼は両親の思惑を知っていたので成果を確認しに来たらしい。
パーティー後のやり取りを彼に話したところやっぱりなと苦笑された。
「お前には無理だと思ってたよ。そういう話興味ないじゃん」
「う。まぁそうだけどさ……」
「おっさんもお前のその性格をわかってるから興味を持たそうとしてたんじゃないか?」
「多分ね。でも接待に追われてそれどころじゃなかったよ。挨拶と名前を覚えるのに必死だったんだから」
この世界に名刺でもあればもっと楽に覚える事が出来たのに。なんて事を考えたりもしたけど、他の人はこうやって人脈を広げて社交性を養ってるんだと思うと何か悔しさが出てきて、これからはもう少し余裕を持っていける様に頑張らなきゃなと一人反省をしていた。
「なぁ、今度は客側で参加しないか?」
「客側?」
「今度俺が参加するパーティーがあるんだけど、知り合いがこの間のお前のパーティーの話を知ってて、今度お前と話をしてみたいって言ってきたんだ」
「僕と話を?」
「ああ、あの後色んなパーティーで貴族の令嬢だけでなく子息達迄が一様にお前を誉めちぎっているらしいからな。どんな奴なのか興味を持ったみたいだぞ」
え?何で?知らない所で誉めちぎられているって……何だかむず痒いな。照れくさいけど評価してもらえているのだと思うと素直に嬉しかった。
でも、パーティーでわたしと話をしたいと言ってもそのパーティーに招待されてなきゃそれ以前の問題では?そんな疑問も湧いたのだが
「おっさんも勿論招待されているから安心しろ」
セルシュは爽やかな笑顔でウインクをした。
父にセルシュの話を確認したところ、やっぱり招待を受けているそうでそのパーティーにわたしも参加する事になった。
今迄わたしはパーティーやそういった集まりには極力参加せずに過ごして来たので両親はそりゃあもう喜びましたよ。そんなに喜ばれると少し気まずいんですけどね。これからはもう少しちゃんと参加した方がいいかもしれないのかな。
妹のリーンフェルトもお兄様と一緒にお出かけ出来るのは嬉しいです、なんて可愛い事を言ってくれましたよ。
これは面倒くさいけどやっぱり頑張らないといけないな。まぁ頑張ると言ってもわたしはきっと、今までと変わらず父上と一緒に主催者に挨拶をしたらすぐ隅っこに行っちゃいますけどね。
OL時代の記憶が無かった頃は『相手を喜ばせ楽しませるなんて面倒なだけ』と思っていた。まぁ、実際面倒ではあるけど。
今度のパーティーはセルシュの顔を立てて、誰かわからないけど紹介された人にはまた笑顔で頑張ってみようかな。
今度は招待を受ける側で少しは気楽だし素直に楽しんでみるのもいいかもしれないなぁなんて、珍しくそんな事を思った。
◆ ◆ ◆
読んでいただきましてありがとうございます。
「どなたか気になる令嬢はいらっしゃらなかったの?」
パーティーの後、食事を取りながら家族団らんの時間。
父上も母上もそりゃあもう相当ながっかり具合を隠しもしないでため息をついていますよ。
「そうは言っても挨拶に忙しくてそこまで気にかけてられませんでしたよ。お二人とも無駄に張り切り過ぎです」
「だってなぁ、あんなに可憐な華々が咲き乱れていたんだぞ。誰か一人位見つけたっていいじゃないか」
父上、なんであなたが拗ねてるんですかね。
「そうですわ。私達はあなたが素敵な令嬢を紹介してくれるのをそれはもう楽しみに待っていたのですよ」
母上まで残念な表情でこちらを見つめてますけど無理ですからね。わたしのどこにそんな余裕があると思ってるんですか!
みんながみんな父上や母上の様な出会いで婚姻する訳じゃないですから。わたしにはそんなスキルはありませんよ。
しかも今回は目的の令嬢アイラヴェントにも会えないというオチ迄ついているのに。
あんなに色々回ったのに会えないなんて……うちってそんなに広かった?……って訳でもないんだけどなぁ。挨拶が出来なくてもちょっと位は姿を見せてくれてもいいのに……。
あれ?でもこれで彼女と婚約する流れはなくなるのかな?そうなると逆にラッキーなんじゃない?
「しかしお前は今後社交界ではいい評価を得られそうだな」
「はい?」
先程とは一転、急に父上は真面目な顔になりそんな事を言った。
その切り替えについて行けず思わずすっとんきょうな声をあげてしまった。
「いやな、今日のお前の動きをずっと見ていたが挨拶はもとより、どの客にも如才ない態度で接していたじゃないか。あれ程の社交性が我が息子にあったとは思わなかったぞ」
父は息子の行動を思い出しているのかとても満足気だ。まぁ営業経験者として言わせてもらえば今日のパーティーは巨大な接待会場でしたから。自分の経験を遺憾無く発揮させてもらいましたよ。
今までの引きこもりと比べたらそりゃびっくりだよね。頑張って情報収集もしたし、笑顔もガンガン撒き散らしましたよ。
あんなに笑顔を作ったのは久しぶり過ぎてちょっと大変だったけど、わたしなりに頑張りましたからね!顔の筋肉が痛いのは仕方がない事ですよ。
「どの令嬢達もあなたと話をした後は皆うっとりとあなたを見つめていましたわ。ご子息達にも素晴らしい対応をして皆笑顔でしたものね。この母も感服しました」
「ありがとうございます。……そう言っていただけて良かったです」
二人に手放しで褒められてちょっと恥ずかしいけど、自分のスキルがこんなに役に立つとは……営業職万歳!
「でもねぇ」
「何でしょう?」
「やっぱり素敵な令嬢に会わせてもらいたかったのよね……」
「そうだな。そこは残念でしかないぞクルーディス」
えー、持ち上げといて落としますか。二人とももう勘弁してくださいよ。
「災難だったな、クルーディス」
「全くだよ。あの会場でそんな余裕なかったし」
パーティーからしばらく経ったある日、セルシュが我が家に遊びに来た。どうやら彼は両親の思惑を知っていたので成果を確認しに来たらしい。
パーティー後のやり取りを彼に話したところやっぱりなと苦笑された。
「お前には無理だと思ってたよ。そういう話興味ないじゃん」
「う。まぁそうだけどさ……」
「おっさんもお前のその性格をわかってるから興味を持たそうとしてたんじゃないか?」
「多分ね。でも接待に追われてそれどころじゃなかったよ。挨拶と名前を覚えるのに必死だったんだから」
この世界に名刺でもあればもっと楽に覚える事が出来たのに。なんて事を考えたりもしたけど、他の人はこうやって人脈を広げて社交性を養ってるんだと思うと何か悔しさが出てきて、これからはもう少し余裕を持っていける様に頑張らなきゃなと一人反省をしていた。
「なぁ、今度は客側で参加しないか?」
「客側?」
「今度俺が参加するパーティーがあるんだけど、知り合いがこの間のお前のパーティーの話を知ってて、今度お前と話をしてみたいって言ってきたんだ」
「僕と話を?」
「ああ、あの後色んなパーティーで貴族の令嬢だけでなく子息達迄が一様にお前を誉めちぎっているらしいからな。どんな奴なのか興味を持ったみたいだぞ」
え?何で?知らない所で誉めちぎられているって……何だかむず痒いな。照れくさいけど評価してもらえているのだと思うと素直に嬉しかった。
でも、パーティーでわたしと話をしたいと言ってもそのパーティーに招待されてなきゃそれ以前の問題では?そんな疑問も湧いたのだが
「おっさんも勿論招待されているから安心しろ」
セルシュは爽やかな笑顔でウインクをした。
父にセルシュの話を確認したところ、やっぱり招待を受けているそうでそのパーティーにわたしも参加する事になった。
今迄わたしはパーティーやそういった集まりには極力参加せずに過ごして来たので両親はそりゃあもう喜びましたよ。そんなに喜ばれると少し気まずいんですけどね。これからはもう少しちゃんと参加した方がいいかもしれないのかな。
妹のリーンフェルトもお兄様と一緒にお出かけ出来るのは嬉しいです、なんて可愛い事を言ってくれましたよ。
これは面倒くさいけどやっぱり頑張らないといけないな。まぁ頑張ると言ってもわたしはきっと、今までと変わらず父上と一緒に主催者に挨拶をしたらすぐ隅っこに行っちゃいますけどね。
OL時代の記憶が無かった頃は『相手を喜ばせ楽しませるなんて面倒なだけ』と思っていた。まぁ、実際面倒ではあるけど。
今度のパーティーはセルシュの顔を立てて、誰かわからないけど紹介された人にはまた笑顔で頑張ってみようかな。
今度は招待を受ける側で少しは気楽だし素直に楽しんでみるのもいいかもしれないなぁなんて、珍しくそんな事を思った。
◆ ◆ ◆
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