上 下
56 / 117
ブァルファーレ奪還戦争

ブァルファーレ最終決戦

しおりを挟む
再びお姉様の牢屋の前にいくと、ジーク達が待っていた。
ライザスもかなりのダメージを喰らっていたが、一緒にいた。
それにしてもジークさん達、あれだけの連中を無傷のまま倒したのか。
流石としか言いようがない。

「随分と男前になったじゃねぇか、グレン」
ボロボロの僕の姿を見てジークが言った。

「お陰様でね」
僕はニコリと笑って返事をした。

「あの大人しくて引っ込み思案のグレンが……こんなにも逞しく…」
僕の成長を実感したのか、お姉様が泣いていた。

僕はジークにもらった鍵を使って、お姉様を牢屋から解放した。

「ライザス。お姉様を頼む。
僕はこれから王の間に向かう」
そう。
戦いはまだ終わっていないんだ。
ライザスにお姉様を預けて、僕は2階の王の間に向かった。

王宮内ではまだ激戦が繰り広げられていた。

死んでいる国民の姿も目に入ってくる。
みんなごめん。
みんなありがとう。
そんな感謝と懺悔の気持ちが同時に押し寄せてくる。

こんな戦いを終わらせるためにも、僕が敵の大将を討ち取る。

ジークとマオさん、クリスさんの3人が私の後ろを追ってきてくれ、私の道を拒もうとする敵をやっつけてくれる。

王の間にたどり着いた。
本来僕の父上が座るべき場所には、若くガタイのいい男が座っていた。
そいつは王様のように煌びやかな鎧と純白のマントを身に付けていた。


「貴様らか。
私の国でこんなくだらんクーデターを起こしたのは?」

「私の国…だと?
ブァルファーレは僕の…僕達の国だ!」

「ふん。貴様らは我らに降伏をしただろう。今は我らの国だ。
まぁよい。これまでのようにまた我らの力で降伏させるだけだ。
かかれ」

国王がそういうと、あたりから兵が集まってきて、襲いかかってきた。

「グレン。雑魚は俺らに任せろ。
お前はあの国王もどきをやれ」
ジーク、マオさん、クリスが僕の道を作ってくれた。
僕はそのまま国王の元に駆けていき、剣を振るった。ナイトドラグルをも倒せた一撃だ。

グレンはその一撃で全てを断ち切ることができると思っていた。
しかし、国王はそれを軽々と受け止めた。

「くははは。
それが本気か?そんなんじゃ国は取り戻せんぞ?」

国王が攻撃を仕掛けてくる。
スピード、パワーもナイトドラグル以上だ。
ナイトドラグルとの戦いで負傷をしているグレンは攻撃の糸口を掴めずに防戦一方となっていた。

「くはははは。
その程度の実力しかないのか?
所詮貴様は誰かに助けてもらわないと何も出来ない弱き者!力無き者に王の資格などないのだ。
潔くここで死ねぇ!」

王の猛攻は凄まじく、避けきることは出来ず、剣は何度か肌をかすめ、ダメージが少しずつ蓄積されてゆく。

このままじゃ負ける…。
王がグレンにトドメの一撃を振り下ろそうとしたとき、一筋の黒き閃光が飛び込んできた。
王は攻撃を止め、後ろにステップをして避けた。
王が閃光の出どころに目を向ける。
そこにはマオさん達が立っていた。
周りには襲ってきた兵士全員が倒れていた。

「貴様ら!あの数を全て倒したというのか?!しかもこんな短時間で…!」

「こんなザコどれだけ数が集まろうとわけないわね。はっきりいって、私達が本気だせばあんたなんか秒殺して、こんな戦争も一瞬で終わらせられるのよ。 」

ジークさん、マオさん達はそんなにも強かったのか…。
王は眉間に皺を寄せ、ジリジリと後退りした。

「でも安心なさい。私達はただの旅人。
国の行方を決める最後の一手には口を出すつもりはないわ。
つまり あなた達の戦いに手を出すつもりはない。
グレンが勝てば国は返してもらう。あなたが勝てば私達もここを引くわ」

「本当だな!?このガキを倒せば見逃してくれるんだな?」
国王はニタァっと笑みを浮かべた。

「えぇ。ただし勝てたらね」

「ぐふふふ!こんなガキに私を倒す実力があると思っているのか?」

「じゃあ聞くけど、あなたにこの国を支配するだけの実力があると思って?」

「当然だ!国民の力やお前達の力に頼って、自分1人では何も出来ないような奴よりも、私のような強者の方が王には相応しいのだ」

「それぞれに考え方はあるから、あなたの考えを否定するつもりはないわ。
だけど1つ気に入らないことがあるわね。
あんたそれだけのことを語っていて、自分1人の力でなんとかしてきたと思っているの?」

そう言うと、マオさんは肩に乗せていた黒い小さな豚を手に掴んだ。

「誰かの力を借りないと何もできないのはあんたの方でしょっ!?」

マオさんは王に向かってその黒豚を思いっ切り投げ付けた。

「リーナ。何をするべきか分かっているわよね?ちゃんとやらないと、お・し・お・き・よ」

その投げつけられた黒豚は国王に噛み付みついた。

「なんだ…これは……。
力が抜けていく…」

「その黒豚ちゃんはね、元龍神族なのよ。
あなた達 龍神族の手下が、何かしらの魔法で身体能力が強化されているのは知ってるわ。
その黒豚ちゃんは今、その魔法を解いたのよ」

「な……なんだと!
龍神族をペットにしているなんて…きさまら何者なんだ…」
国王の表情には明らかに恐怖が伺えた。

「何者?私達は通りすがりの魔王と勇者よ。
人の力を借りないと何も出来ないのはどっちかしらね?
さぁ、グレン。あとはあなたの仕事よ」

僕は剣に力を込めて、再度国王に向かっていった。

「これで!終わりだぁーー」

「くそっ!こんなガキぐらい私の実力だけでなんとかしてみせるわ!」

僕の攻撃を防ごうとするが、今までのような反応速度はなく、僕の攻撃は王の体を真っ二つに切り裂いた。

「ぐふっ。そんな……。王の私が敗れるなんて…。
せっかく力を、富を名声を手に入れたのに……」

「国民達をないがしろにした貴方に王の資格などなかったんだ。
確かに僕は1人じゃ何も出来ない。
だからこそ、国民達みんなの助けが必要なんだ。
僕は国民達に支えてもらう。
だから僕もその国民達の幸せのために出来る限りのことをする。
ブァルファーレはそれでいいんだ」

敵はゆっくりとその場に倒れた。

終わった……。
安堵で体の力が抜け、意識が遠のいていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

転生した俺が神様になるまで

HR
ファンタジー
ゲーム廃人の佐藤裕は強盗に銃で撃たれて、異世界に転生! ・・・の前に神様とあって 「すべての職業になったら神になれるよ。」 と言われた佐藤裕改め、テル=ハングルはアルファ王国を支えるハングル家に転生して神様になる っていう感じの作品です。 カクヨムと、小説家になろうでも連載しています。 面白いと思ったら ブックマーク、感想、レビュー、評価をお願いします。

転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?

N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、 生まれる世界が間違っていたって⁇ 自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈ 嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!! そう意気込んで転生したものの、気がついたら……… 大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い! そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!! ーーーーーーーーーーーーーー ※誤字・脱字多いかもしれません💦  (教えて頂けたらめっちゃ助かります…) ※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...