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ブァルファーレ奪還戦争

援軍

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裏手から攻めたクリスはどんどんと兵を倒していった。
そんなに強い敵はいない。
恐らくは龍神族の手下ではなく、寝返ったブァルファーレの騎士がほとんどなのだろう。
龍神族の手下も混ざっているのか時折、化け物みたいに強い奴が紛れている。

現に戦いが始まってすぐに、龍神族の手下と思われる奴にリガンがやられ、気絶している。

くそっ。
ただでさえこっちは数が少ないのに。
ブァルファーレの騎士程度の相手なら今のリガンなら簡単に倒せるのに貴重な戦力を最初に失ってしまった。

とはいえ、反乱軍の戦士たちもみんな頑張っている。
私が教えたことが身についているのか、寝返ったブァルファーレの騎士相手なら、ものともしていない。

龍神族の手下は自分で引き受けて、弱いブァルファーレの騎士は反乱軍の兵士達に任せた。

それでも時間が経つにつれて、状況は悪化していく。
このままじゃ持ちこたえられない。
ユウナさん。
早く王女を奪還してくれ……。

気付けば残りの反乱軍は3人と私だけになっていた。
やはり無謀な作戦だったのか?
マオさんに頼って、全員での正面突破を提案すべきだった…。

…なんて後悔している場合じゃない。
少しでも時間を稼ぐんだ!

剣を持つ手に力を入れ、再度敵に向かって行こうとすると、遠くから怒号のような声が近づいてくる。

声は段々と大きくなり、地鳴りのように地面が揺れ始めた。
アレは……?

『俺たち手でブァルファーレを取り返すぞー』
みんな口々にそう叫んでいた。
そうかブァルファーレの国民達か!
私達の戦いをみて、立ち上がってくれたんだ!
100名程が駆けつけてくれ、裏手は再度 大混戦となった。
所詮はただの国民だが、ブァルファーレの騎士達はそんなに強くない。
この援護は素直にありがたかった。

おかげで私は強敵の龍神族の手下だけに集中することが出来る。

戦いが進んでいくと、戦場に異変が起こり始めた。
国を取り戻そうと必死になる国民達に感化され、ブァルファーレの騎士達も少しずつこちらの味方なっていく。

いつしか数の利はこちらに傾いていた。

その後は一気に反乱軍が押し勝ち、後門を制圧した。

国民達は後門を解放すると王宮へと雪崩れこんでゆく。
私は気絶したリガンを抱え、後門から王宮に入った。中央の広場に行くとそこにはマオさんとライザス、グレン王子がいた。

「グレン王子…!!
なんでここに??」
キャンプで待機していたはずのグレン王子の姿に困惑した。

「ジークが けしかけたみたいなのよ」
マオさんは呆れたように言った。
そうか、国民達が急に立ち上がったのはグレン王子が来たからだったのか!

「お姉様の奪還はもちろんするが、ブァルファーレも今日で取り返す。
みなさんもう少しだけ力を貸してください」
グレン王子が力強く言った。

さっきまでのテントで大人しくしていたグレン王子とは別人のように覇気がある。
そう。
これは れっきとした王の風格。
この短期間で一体何があったのだろうか。

「王子…ご立派でございます」
グレンの成長に感動してライザスが涙を浮かべている。

「…で、そのけしかけた張本人は??」
マオさんに聞いた。

「また行方不明よ。
グレン王子の話だと城下町までは一緒にいたらしいけど」

あの人の行動は本当に理解が出来ない…。
けど あの人なら また何かやってくれる。
そんな期待が胸に湧いてきた。

「まずはお姉様を奪還します。
地下牢に行きましょう」
ライザスとグレンが先行し、私達はその後を追った。
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