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ブァルファーレ奪還戦争

ブァルファーレ王国

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時魔道士の島を出てから私達は再びトワイザランに向けて旅を始めた。
ここ数日は町や村などが全くなく、馬車を借りることも出来ず徒歩での移動と野宿が続いていた。

「つーかーれーたー。そろそろ川や湖の水浴びじゃなくて、お風呂に入りたいー」
ユウナさんの不満が爆発していた。

「ユウナさん落ち着いてください。
もうすぐブァルファーレって小さな王国があります。そこに着いたら たまには少し豪華な宿に泊まりましょう」
クリスがユウナをなだめた。

「もうすぐってどれくらいなのよー」

「怠けずに進めば今日の夜にでも着きますよ」

「じゃあ、今日は頑張って一気にそこまで移動しちゃいましょう。
私も久々にゆっくり宿で休みたいわ。
ほら!ジーク!ダラダラ歩いてないでシャキッとしなさい!」
マオさんがジークを一喝する。

女性陣の宿屋への執念は凄まじく、ブァルファーレへは予定よりも大分早く、夕方前に着いた。
私達はさっそく宿屋を手配し、荷物を宿に置くと、夕飯を食べに城下町に出た。

「なんか辛気臭せー国だなぁ。
活気が全くねぇ」
ジークが言った。

ブァルファーレは小国とはいえ、1つの国だ。
その辺の町や村に比べたら、かなり大きいし、人口も多い。
この国は外食文化が栄えているようで、城下町には屋台や屋外フードコートのような施設は多くあり、夕飯時ということもあって、かなり多くの人たちがいる。
なのにこの国の人達はどこか元気がなさそうに見えた。

私達も屋外フードコートで夕食を食べ終わって宿屋への帰り道、他愛のない会話をしながら歩いていた。
街角を曲がるとジークが1人の男とぶつかって転んだ。

「いてててて。あー。すまなかったな。
まさか人がそっちからも歩いてくるとは思ってなくて」
転んだ際に落とした宝剣を拾いながら言った。
ジークとぶつかった男はその宝剣を見て表情を変えた。

「そんな剣を持ってるなんて…。あなた方は旅人ですか?」

「あぁ。そんなもんだな。
トワイザランに向かって旅をしてる最中だ」

そんな会話をしているとぶつかった男の後ろから6人の男が武器を持って駆けつけてきた。

「貴様ら見ない顔だな!そいつと一緒ってことは貴様らも反乱軍の一員か?!」

「はんらんぐん??」
その男たちは有無を言わさずに襲ってきた。

ジークはひらりと攻撃を躱し、ルクスの宝剣を抜き そのまま一瞬のうちにその男達を片付けた。
ぶつかってきた男は目を丸くしていた。

「あなた方……強いんですね!
お願いします!是非力を貸してください!」
その男はその場に土下座をした。

「やだ!帰るぞ」
ジークは即答し 何事もなかったように歩き始めた。

「あの…ジークさん。話ぐらい聞いてあげてもいいんじゃないですか?」

「これ以上やっかいなことに巻き込まれるのはごめんだな。
急ぐ旅じゃなくなったとはいえ、無駄なことはしたくないの」

「お願いします。話だけでも…」
男が再度頭を下げるが、ジークは無視をして歩き始めた。
すると、奥の方から更に大人数の男達が武器を持ってこっちに向かって走ってくるのがみえた。

「おいおい!お前なんでこんなに追われてるんだよ!凶悪な犯罪者か何かか?」

「…今はそのようなものです…」

「全員逃すなー!!」
大人数の先頭を走る男が叫んだ。
どうやら私達も標的に含まれてしまっているようだ。

「ふざけんなよ。厄介なこと持ち込みやがって。とりあえず街中でアレを相手にすると後々めんどくさそうだ。みんな逃げるぞ!」
私達はすぐにその場を離れることにした。

私達は追われている男と一緒に城下町の外まで逃げだした。

「一体なんなんだお前は?」
ジークが半分怒りながら、追われていた男に聞いた。

「私はこのブァルファーレ王国の元騎士団長でライザスと申します。私達はこの王国の奪還をしようとしている反乱軍なんです」

「反乱軍?クーデターってやつか?
本物の犯罪者じゃねぇか!!
ひっ捕らえてあいつらに引き渡してやる!!」
ジークが宝剣の柄に手をかけた。

「待って!ジーク!話だけでも聞きましょう!」
クリスはジークにしがみ付いて止めた。

「嫌だ!!こいつのせいでうちらも反乱軍に勘違いされたに違いない!
このままじゃ久々の宿屋でのゆっくりした時間が過ごせなくなるんだぞ!!
離せ!!」

ジークは一層激しく暴れ回る。
そこにマオさんが、ジークに強烈なゲンコツをかました。
「ジーク。話だけでも聞くぞ」
マオさんはギロリとジークを睨みつけた。

「…はい」
ジークはその一言で大人しくなる。

ライザスは自分達の身に起こったことを語り始めた。
「実は先日にこの国は龍神族の襲撃にあって、龍神族に降伏をしたんです。その後この王国には龍神族の手下が住み着いているんです。
奴らは王族とその家臣達を皆殺しにして、自分達がこの国を支配しているんです。
やつらはやりたい放題で、城下町の人達に若い女性や金品を上納させているんです」

「元々王国にいた騎士達は?」

「王族と家臣達が殺されてからは、龍神族の手下の言いなりとなってます。
騎士団長をしていた私と部下の数十名だけが、国を離れてこの町の近くで反乱軍を組織して王国奪還のチャンスを伺っているんです」

「龍神族の支配……」
私はこの国に起こったことをトワイザランに置き換えて考えたら とても放って置けない気分になった。

「ジークさん。なんとかうちらで助けてあげられませんか?」
私が力強く言った。

「やだね。めんどくさい」
一瞬でジークが即答する。

「あなたには血も涙もないんですか?
それでも勇者ですか?」

「俺たちが助けて、その後どうなる?
所詮は龍神族の手下の襲撃を抑えきれなかった国だ。
俺達が一時的に助けたところで、またいつか襲撃に遭ったら同じことの繰り返しだ」

冷酷なようだが、それは正論だった。

「それに王族は皆殺しにされたんだろ?
あんたらが国を取り返した所で誰が国を仕切るんだ?」

「それは……問題ありません
詳しくお話しをしたいので、うちらの反乱軍の基地に来てもらえませんか?」

「そんなに簡単に信用していいのか?
その反乱軍の場所をあいつらに売るかもしれないぞ?」

「あなた方の眼をみていれば、いい人か悪い人かは分かりますよ。
力を貸してくれるかは別としても、あいつらに私達の場所を教えたりはしないと信じてます」
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