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ジャカンからの出発
コンテストの行方
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ションさんの救出は無事に成功し、私達は東都に戻ってきた。
結局今回の戦いもほとんど役に立てなかったな…。
クリスはもやもやとした気持ちになっていた。
私達が戦った敵は強かった。
だがサムライのトシキさんは、それを遥かに上回る強さを持っていた。
だがそのトシキさんですら龍神族には手も足も出なかった。
その龍神族すら退けた、ジークとマオさん。
一体どれだけ上には上がいるのだろうか。
誰よりも強いと信じていた昔の自分が馬鹿みたいに思えた。
トシキさんはジークとマオさんを尊敬したらしく、帰りの道中ずっとジークの戦いの感動を伝えていた。
ジークはちょっとウザそうな表情をしていた。
マオさんはトシキさんの話を聞き流して、肩に乗せた黒豚をつついて遊んでいる。
あの元龍神族の黒豚リーナは、この姿でいる以上はもう悪い事はできないということで、マオさんが連れて行くことにしたのだ。
伝説の龍神族をペットにするなんて……。
発想が桁違いだ。
リガンは私と同様に落ち込みながら帰っていた。
「なぁ、クリス。
うちら戦いの度に、いつもこんな気持ちで帰ってきてるな」
「そうだな。
でも確実に強くはなってる。
焦らずにいこう」
いつもの落ち込み方といつもの立ち直り方。
もはや戦闘後のルーティンと化していた。
東都に着くと、コンテストの中継映像がまだ流れていた。
そうか。まだコンテストの途中だったのか。
「そうじゃ!!ユウナくん!
君、発表はどうしたのじゃ!」
ションさんが突如叫びだした。
「あんたのせいで、おじゃんだよ!
私は自分の発表をすっぽかしたからね」
「なんじゃってーー!
ワシの為に……」
ションさんはまたも目に涙を浮かべていた。
この人はユウナさんのことを本当の子供のように想っているんだろうな。
「そうじゃ!これはワシの責任じゃ!
ワシが大会の委員に掛け合って事情を説明して、今からでもユウナくんの再出場を認めてもらおう!」
「ションさん。
もういいよ。とりあえず今日はゆっくりしてな」
ユウナの中にあったションへのわだかまりはすっかり無くなったらしく、優しく言った。
「ダメじゃ!
君はこの日の為に頑張ってきたんじゃ!
科学技術者にとって、研究や開発、機械の組み立ては楽しい物であると同時に、失敗と挫折の繰り返しで辛いものでもある。
その研究の成果の発表の時は科学技術者にとって全てが報われる瞬間なのじゃ!
すぐにコンテスト会場に向かうぞ!」
そういうと、ションさんは大会会場に向けて走っていった。
「私も行ってきます。
我ら聖天衆の手伝いをして、M&Sの会長を救出したとあれば、政府も納得してくれるでしょう」
トシキさんもションさんの後を追っていった。
30分後。
街中でコンテストのテレビ中継をジークとマオさんとリガンで眺めていた。
ションさんの誘拐については秘密裏にされていたのだが、無事に身柄が確保されたことで経緯が公に発表がされた。
そして、その誘拐事件の捜索の為にユウナさんとM&Sの社員達が大会をボイコットしていたという事実も。
それらの状況を加味して、大会本部は特例としてユウナさんとM&Sの社員5名のコンテストへの復帰を承認した。
私達はその後TVでコンテストを最後まで観ていた。
M&Sの社員たちの研究成果はすごく、明らかに他の研究者たちより秀でていた。1人発表が終わる度に、会場の客席でスタンディングオベーションが起きていたのはとても印象的だった。
だけど
一番印象的だったのは
あの気の強いユウナさんが、グランプリを受賞したときに見せた涙だった。
受賞が決まった瞬間は私達4人は飛び上がって喜んだ。
結局今回の戦いもほとんど役に立てなかったな…。
クリスはもやもやとした気持ちになっていた。
私達が戦った敵は強かった。
だがサムライのトシキさんは、それを遥かに上回る強さを持っていた。
だがそのトシキさんですら龍神族には手も足も出なかった。
その龍神族すら退けた、ジークとマオさん。
一体どれだけ上には上がいるのだろうか。
誰よりも強いと信じていた昔の自分が馬鹿みたいに思えた。
トシキさんはジークとマオさんを尊敬したらしく、帰りの道中ずっとジークの戦いの感動を伝えていた。
ジークはちょっとウザそうな表情をしていた。
マオさんはトシキさんの話を聞き流して、肩に乗せた黒豚をつついて遊んでいる。
あの元龍神族の黒豚リーナは、この姿でいる以上はもう悪い事はできないということで、マオさんが連れて行くことにしたのだ。
伝説の龍神族をペットにするなんて……。
発想が桁違いだ。
リガンは私と同様に落ち込みながら帰っていた。
「なぁ、クリス。
うちら戦いの度に、いつもこんな気持ちで帰ってきてるな」
「そうだな。
でも確実に強くはなってる。
焦らずにいこう」
いつもの落ち込み方といつもの立ち直り方。
もはや戦闘後のルーティンと化していた。
東都に着くと、コンテストの中継映像がまだ流れていた。
そうか。まだコンテストの途中だったのか。
「そうじゃ!!ユウナくん!
君、発表はどうしたのじゃ!」
ションさんが突如叫びだした。
「あんたのせいで、おじゃんだよ!
私は自分の発表をすっぽかしたからね」
「なんじゃってーー!
ワシの為に……」
ションさんはまたも目に涙を浮かべていた。
この人はユウナさんのことを本当の子供のように想っているんだろうな。
「そうじゃ!これはワシの責任じゃ!
ワシが大会の委員に掛け合って事情を説明して、今からでもユウナくんの再出場を認めてもらおう!」
「ションさん。
もういいよ。とりあえず今日はゆっくりしてな」
ユウナの中にあったションへのわだかまりはすっかり無くなったらしく、優しく言った。
「ダメじゃ!
君はこの日の為に頑張ってきたんじゃ!
科学技術者にとって、研究や開発、機械の組み立ては楽しい物であると同時に、失敗と挫折の繰り返しで辛いものでもある。
その研究の成果の発表の時は科学技術者にとって全てが報われる瞬間なのじゃ!
すぐにコンテスト会場に向かうぞ!」
そういうと、ションさんは大会会場に向けて走っていった。
「私も行ってきます。
我ら聖天衆の手伝いをして、M&Sの会長を救出したとあれば、政府も納得してくれるでしょう」
トシキさんもションさんの後を追っていった。
30分後。
街中でコンテストのテレビ中継をジークとマオさんとリガンで眺めていた。
ションさんの誘拐については秘密裏にされていたのだが、無事に身柄が確保されたことで経緯が公に発表がされた。
そして、その誘拐事件の捜索の為にユウナさんとM&Sの社員達が大会をボイコットしていたという事実も。
それらの状況を加味して、大会本部は特例としてユウナさんとM&Sの社員5名のコンテストへの復帰を承認した。
私達はその後TVでコンテストを最後まで観ていた。
M&Sの社員たちの研究成果はすごく、明らかに他の研究者たちより秀でていた。1人発表が終わる度に、会場の客席でスタンディングオベーションが起きていたのはとても印象的だった。
だけど
一番印象的だったのは
あの気の強いユウナさんが、グランプリを受賞したときに見せた涙だった。
受賞が決まった瞬間は私達4人は飛び上がって喜んだ。
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