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龍神族との激闘
勇者vs龍神族
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ドガァーーン
トシキは凄まじい勢いでション達の近くの地面に叩きつけられた。
トシキは先ほどから刺青の男と1人で戦っているが、全く歯がたたない…。
トシキは攻撃魔法は使えず、刀による接近戦のみで戦っている。
刺青の男は様々な魔法を駆使してくるが、それさえ避け切り、接近戦に持ち込めば勝てると踏んでいた。
何発かの魔法攻撃を喰らいつつも何とか接近戦の間合いに持ち込んだのだが、剣術勝負でも相手の方が一枚上手だった。
まさか龍神族というのがこれ程の強さとは…
魔法で吹き飛ばされようと、剣での攻撃を受けようと、トシキは何度も立ち上がり刺青の龍神族に立ち向かった。
こいつに勝つには もうあの技しかない。
刺青の男に向かって突進し、間合いを詰めながらトシキは刀を鞘に納める。
ふぅーっと息を吐き、刀の柄を持つ右手と鞘を持つ左手に全神経を集中させた。
今の自分が繰り出せる最高の居合切りを放つために。
刺青の男は右手を前に出し、氷魔法と火炎魔法の球を何発も放った。
トシキはその魔法をくぐり抜け、刺青の男との間合いを更に詰めて行った。
「いまだ!」
トシキは刺青の男を居合切りの間合いに捉えた。
「くらえ!蛍火閃!!」
シュピーーィン
鋭く繊細な金属音が鳴る。
トシキはフッと軽く微笑んだ。
今までに何百万、何千万回も刀を振ってきた。
その中でも今の蛍火閃は間違いなく最高かつ最速の一閃だ。
それだけの一撃を放てたのに……躱された!
そう。
刺青の男はトシキの抜刀の瞬間に身を引き、神速の一閃を紙一重で躱していた。
その刺青の男の身のこなしの見事さにトシキは思わずに軽く微笑んでいたのだ。
刀を振り切り 無防備な状態のトシキに向かい、刺青の男は強烈な火球を投げつけた。
火球はトシキの体に触れると同時に大爆発を起こした。
「ぐはぁーーっっ」
トシキの体が地面に何度も打ち付けられながら吹き飛んだ。
「ぐっ…」
トシキはかなりのダメージを受けたが意識は何とか保てていた。
立たねば…。
私がこいつらを倒せなければ、きっと誰もこいつらには勝てない。
せっかく救出したションさんは また連れて行かれる。
トシキは全身の切り傷と火傷の痛みに耐えながら起き上がろうとする。
「ジーク。これ以上は無理よ!もう替わりなさい!!」
声の方を振り向くと、先程まで女の龍神族と戦っていた人が言っていた。
あの人がここにいるということは……
まさか……あの女性…
龍神族を倒したというのか?
トシキはジークとマオの強さを知らなかった。
クリスやリガンが一緒に戦ってくれ、その2人の実力を見て、ジークとマオもその程度の実力なのだろうと思っていた。
それ故にマオが龍神族の1人を倒せるとは思ってもなかったのである。
この人達は一体……
「えぇー。めんどくさいからマオちゃんが また戦ってよぉ。」
「私にこれ以上戦わせるつもりなの!?
信じられない!!
たまにはちゃんと働きなさい!」
マオがジークのお尻を強く叩いた。
「いてっ。……しょうがないなぁ。
確かにこれ以上はおサムライさんも持たないだろうし」
そう言うとジークは倒れてる私の元へと歩いてきた。
「おサムライさん!悪いが選手交代だ。
もし、あんたがもっと強くなりたいと思うなら、俺の戦い方をじっくりみてな」
そう言うとジークはゆっくりと刺青の男の元へと歩いていった。
「次は貴様か?」
刺青の男が言った。
「みたいだね。本当はめんどくさいから戦いたくないんだけどね」
ジークは後頭部で両手を組み、おどけたポーズを見せた。
「ふん!どうせすぐに終わるわ!!」
刺青の男はジークに向かって突進し、間合いを詰めると、激しい剣術での連撃を繰り出した。
ジークはそれらの攻撃を全て剣で受け止めた、
ジークは隙をついて、剣撃と蹴りで反撃をするが、同様に刺青の男も回避している。
ジークが後ろにさがり、一旦間合いを空けると、刺青の男はすぐに氷系魔法を放ち追撃をした。
ジークはすぐさま炎の魔法を繰り出し、壁を作った。
凄い。
私はあのラッシュを防ぐことが出来なかったのに、ジークという男は互角に渡り合っている。
「噂には聞いてたけど、やっぱり強いなぁ。
龍神族ってのはみんなこんなに強いのか?」
「その通りだ。しかし私も先ほどお前の仲間にやられたリーナも一般兵に過ぎん。
我らが王と、本物の龍神族の選ばれし戦士達は私達など足元に及ばぬ程の強さを持っているぞ」
「あぁー。嫌なこと聞いたなぁ。
龍神族ってのはどれぐらいいるんだ?」
「貴様は我らの事を何も知らんのだな」
「まぁ、異世界から来たからね。
この世界のことはあんまり分からないんだ」
「ほぅ。あのハイエルフ同様に異世界から迷い込んできたのか」
「そういうこと。まぁ、マオちゃんがハイエルフって種族なのかは知らないけどな」
「ならば教えてやろう。
我らは400人程の種族だ」
「げっ。そんなにいるのか。
せいぜい100人ぐらいだったら何とかなると思ったのに…。」
「なんとかなる……だと?
我々を舐めるなよ!」
刺青の男は怒り、両手に魔力を溜め、その魔力を剣に伝えてゆく。
剣は青白き光を発している。
刺青の男はジークに突進し、再び連撃を繰り出した。
ジークも先ほどと同じように剣で嵐のような剣撃を受け止める。
「なかなかの攻撃力だな。
お前の武器も神獣の素材で出来てるのか?」
「その通りだ。
しかも神獣素材に加え、我々龍神族が武器を作り出せば、高伝道、高増幅の武具を作るなど容易い。
我ら種族全員が魔法伝道、魔法増幅共に80%を超える武器を持っているのだ」
「そいつはキツイな。
早いとこ元の世界に逃げ帰りたいわ。
そういえば、お前らそれだけの魔力と神のような知識があるっていうんだったら、俺達を元の世界に戻す方法とか知らないか?」
「異世界転移魔法か。
確かに我ら龍神族なら可能だろうが、俺達がそんな親切そうに見えるか?」
「見えねぇな。
なら力ずくで聞き出してやる!」
今度はジークが剣を構え、先制を仕掛けた。
最初に斬りかかるがそれを躱されるとすぐに体制を立て直し、蹴りを繰り出す。
それを避けられてもまたすぐに剣での攻撃を繰り出す。相手がそれを嫌がり間合いを空けようとすれば魔法を繰り出した。
相手に息つく暇も与えない体技と剣技と魔法の複合だ。
「くっ!貴様!
この戦い方、誰に教わったものだ!?」
刺青の男の表情からは余裕が消えた。
「これは完全に自己流だよ。
俺は誰からも戦いを教わったことがないもんでね」
「そんな馬鹿な!
これ程の戦闘技術を…
しかも、この戦い方、何処かで体験したことが…」
ジークの攻撃のスピードが増して行く。
2人の戦いは激しく、肉体がぶつかる衝撃音、魔法の爆音、剣がぶつかり合う金属音が瞬間瞬間で無数に鳴り響く。
廃屋は吹き飛び、2人の戦いは工場跡地一帯を使った戦いに発展していた。
超速で動く2人の戦いは目で追うのが精一杯だ。
いや。刺青の男の動きは何とか見えるが、ジークの動きは速すぎて時折見失う。
なんてスピードだ。
トシキはクリスとリガンの方に目を向けた。
この2人はジークと刺青の男の動きを全く見えていない。衝突する音がした後にその方向に目を向けていた。
これだけの超スピードだ。
目で追いきれなくても仕方ない。
トシキは目をジーク達の戦いに戻す。
今はこの戦いを目に焼き付けねば。
刺青の男も時折反撃を試みるが、ジークはそれをことごとく躱す。
刺青の男の攻撃後の隙を突いて、剣撃を放つがそれを避けられる。
が避けた先に鋭い魔法のビームが飛んでくる。
刺青の男は間一髪でしゃがんでそれを躱すが、その動きを読んでいたジークはしゃがんだ刺青の男に強烈なローキックをかました。
「おサムライさん。
アレがジークがじっくりみろって言ってた答えよ」
マオと呼ばれていた女性が私に言った。
「あなたはかなり強いわ。
だけどあなたの戦い方は剣技にのみ特化している。
それだけの魔力を全て刀の威力とスピード強化にのみ使っている。
いくら速くて強くても単調だから避けるのは容易い。
ジークのように体技や魔法などで相手を撹乱してこそ、相手は次の攻撃を絞れなくなる。
だから、その迷いで反応が一瞬遅れる」
マオの言うことはその通りかもしれない。
現に私の居合よりもスピードが多少劣るジークの攻撃の方が遥かに当たっている。
「あなたの居合は既に神速の域よ。
あの戦い方を覚えたら、あなたの居合を躱せる人はほとんどいないでしょうね」
マオはニコリと笑った。
そうだったのか。
私は今まで剣術を極めることにのみ専念してきた。
だが、ここから先の領域は極めた力を活かすためにどうするのかを考えていかなければならないのか。
私はこれからの自分を高めるためにも、ジークの戦い方を刮目した。
ジークの連続攻撃はどんどん刺青の男を追い詰めてゆく。
刺青の男の表情には余裕はなくなっていた。
「くっ。馬鹿な!身体能力でも魔力でも我らを超えているなど。そんなことあるはずがない…!」
刺青の男は少しの間合いを空けると、両手に魔力を集中した。
「くらえ!バルーガ!!」
刺青の男が放った魔法は周りの大気を凍らせながらジークへ突き進んでゆく。
「アレは氷の極大魔法!!?
なんて奴だ!こんな短時間の溜めで出せるのか!!マズい!」
ジークは咄嗟に魔法壁を繰り出すが、極大魔法はジークの魔法壁にぶつかると、大爆発を起こしジークを吹き飛ばした。
ジークは建物の壁に激突した。
「ぐわぁ。」
ジークは爆発と衝突で多少ダメージを喰らっているが、立ち上がった。
「なんて奴だ。あの一瞬で魔法壁を作って被害を最小限に抑えやがった………ん?」
刺青の男は何かに気が付いたような表情をした。
「き…きさま!その胸のアザは…!?」
ジークは爆発の衝撃で上半身の服がボロボロになっていた。
その左胸の破けた部分から、紋章にも見えるアザが覗けていた。
そのアザをみて龍神族の男は小刻みに震えていた。
「きさまっ!!!!そのアザ……。まさかファルファーの末裔かっ!!」
「あぁ?ファルファー?誰だそれ?」
ファルファーとはこの世界に伝わる、世界で1番有名な『裏切りの騎士』の名だ。
「そうか……きさまの戦い方、何処かで体験したことがあると思ったら1200年前のファルファーと同じ戦い方だからか!!」
刺青の男は追撃をやめ、しばらく考えこんだ。
「絶滅したはずのハイエルフ族とファルファーの末裔か……」
ブツブツと呟いている。
「流石に分が悪いな……。
お前らを始末するのは今日はやめだ!!
次にあった時は覚えてろよ」
龍神族の男はそう言うと空を飛び逃げていった。
「おい!待てっ!
まるで俺達が見逃されたみたいじゃないか!
お前の方が負けてたくせに、かっこつけた台詞吐いて逃げてんじゃねーー!」
ジークが去り行く龍神族に叫ぶが、龍神族はそのまま空へと消えていった。
「くそっ。
まぁ追うのもめんどくさいし、ションさんも助かったからいいか」
ジークは剣を鞘に納めると、ゆっくり私の元へ歩いて来た。
「どうだお侍さん?
わざと見えるスピードで戦ったから、少しは分かっただろ?」
えっ!
わざと手を抜いていたっていうのか?!
ということは本気になったらまだスピードが上がるというのか!?
あれでも一部見切れない動きがあったというのに……
トシキはジークの底の見えない強さに驚愕をするしかなかった。
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何発かの魔法攻撃を喰らいつつも何とか接近戦の間合いに持ち込んだのだが、剣術勝負でも相手の方が一枚上手だった。
まさか龍神族というのがこれ程の強さとは…
魔法で吹き飛ばされようと、剣での攻撃を受けようと、トシキは何度も立ち上がり刺青の龍神族に立ち向かった。
こいつに勝つには もうあの技しかない。
刺青の男に向かって突進し、間合いを詰めながらトシキは刀を鞘に納める。
ふぅーっと息を吐き、刀の柄を持つ右手と鞘を持つ左手に全神経を集中させた。
今の自分が繰り出せる最高の居合切りを放つために。
刺青の男は右手を前に出し、氷魔法と火炎魔法の球を何発も放った。
トシキはその魔法をくぐり抜け、刺青の男との間合いを更に詰めて行った。
「いまだ!」
トシキは刺青の男を居合切りの間合いに捉えた。
「くらえ!蛍火閃!!」
シュピーーィン
鋭く繊細な金属音が鳴る。
トシキはフッと軽く微笑んだ。
今までに何百万、何千万回も刀を振ってきた。
その中でも今の蛍火閃は間違いなく最高かつ最速の一閃だ。
それだけの一撃を放てたのに……躱された!
そう。
刺青の男はトシキの抜刀の瞬間に身を引き、神速の一閃を紙一重で躱していた。
その刺青の男の身のこなしの見事さにトシキは思わずに軽く微笑んでいたのだ。
刀を振り切り 無防備な状態のトシキに向かい、刺青の男は強烈な火球を投げつけた。
火球はトシキの体に触れると同時に大爆発を起こした。
「ぐはぁーーっっ」
トシキの体が地面に何度も打ち付けられながら吹き飛んだ。
「ぐっ…」
トシキはかなりのダメージを受けたが意識は何とか保てていた。
立たねば…。
私がこいつらを倒せなければ、きっと誰もこいつらには勝てない。
せっかく救出したションさんは また連れて行かれる。
トシキは全身の切り傷と火傷の痛みに耐えながら起き上がろうとする。
「ジーク。これ以上は無理よ!もう替わりなさい!!」
声の方を振り向くと、先程まで女の龍神族と戦っていた人が言っていた。
あの人がここにいるということは……
まさか……あの女性…
龍神族を倒したというのか?
トシキはジークとマオの強さを知らなかった。
クリスやリガンが一緒に戦ってくれ、その2人の実力を見て、ジークとマオもその程度の実力なのだろうと思っていた。
それ故にマオが龍神族の1人を倒せるとは思ってもなかったのである。
この人達は一体……
「えぇー。めんどくさいからマオちゃんが また戦ってよぉ。」
「私にこれ以上戦わせるつもりなの!?
信じられない!!
たまにはちゃんと働きなさい!」
マオがジークのお尻を強く叩いた。
「いてっ。……しょうがないなぁ。
確かにこれ以上はおサムライさんも持たないだろうし」
そう言うとジークは倒れてる私の元へと歩いてきた。
「おサムライさん!悪いが選手交代だ。
もし、あんたがもっと強くなりたいと思うなら、俺の戦い方をじっくりみてな」
そう言うとジークはゆっくりと刺青の男の元へと歩いていった。
「次は貴様か?」
刺青の男が言った。
「みたいだね。本当はめんどくさいから戦いたくないんだけどね」
ジークは後頭部で両手を組み、おどけたポーズを見せた。
「ふん!どうせすぐに終わるわ!!」
刺青の男はジークに向かって突進し、間合いを詰めると、激しい剣術での連撃を繰り出した。
ジークはそれらの攻撃を全て剣で受け止めた、
ジークは隙をついて、剣撃と蹴りで反撃をするが、同様に刺青の男も回避している。
ジークが後ろにさがり、一旦間合いを空けると、刺青の男はすぐに氷系魔法を放ち追撃をした。
ジークはすぐさま炎の魔法を繰り出し、壁を作った。
凄い。
私はあのラッシュを防ぐことが出来なかったのに、ジークという男は互角に渡り合っている。
「噂には聞いてたけど、やっぱり強いなぁ。
龍神族ってのはみんなこんなに強いのか?」
「その通りだ。しかし私も先ほどお前の仲間にやられたリーナも一般兵に過ぎん。
我らが王と、本物の龍神族の選ばれし戦士達は私達など足元に及ばぬ程の強さを持っているぞ」
「あぁー。嫌なこと聞いたなぁ。
龍神族ってのはどれぐらいいるんだ?」
「貴様は我らの事を何も知らんのだな」
「まぁ、異世界から来たからね。
この世界のことはあんまり分からないんだ」
「ほぅ。あのハイエルフ同様に異世界から迷い込んできたのか」
「そういうこと。まぁ、マオちゃんがハイエルフって種族なのかは知らないけどな」
「ならば教えてやろう。
我らは400人程の種族だ」
「げっ。そんなにいるのか。
せいぜい100人ぐらいだったら何とかなると思ったのに…。」
「なんとかなる……だと?
我々を舐めるなよ!」
刺青の男は怒り、両手に魔力を溜め、その魔力を剣に伝えてゆく。
剣は青白き光を発している。
刺青の男はジークに突進し、再び連撃を繰り出した。
ジークも先ほどと同じように剣で嵐のような剣撃を受け止める。
「なかなかの攻撃力だな。
お前の武器も神獣の素材で出来てるのか?」
「その通りだ。
しかも神獣素材に加え、我々龍神族が武器を作り出せば、高伝道、高増幅の武具を作るなど容易い。
我ら種族全員が魔法伝道、魔法増幅共に80%を超える武器を持っているのだ」
「そいつはキツイな。
早いとこ元の世界に逃げ帰りたいわ。
そういえば、お前らそれだけの魔力と神のような知識があるっていうんだったら、俺達を元の世界に戻す方法とか知らないか?」
「異世界転移魔法か。
確かに我ら龍神族なら可能だろうが、俺達がそんな親切そうに見えるか?」
「見えねぇな。
なら力ずくで聞き出してやる!」
今度はジークが剣を構え、先制を仕掛けた。
最初に斬りかかるがそれを躱されるとすぐに体制を立て直し、蹴りを繰り出す。
それを避けられてもまたすぐに剣での攻撃を繰り出す。相手がそれを嫌がり間合いを空けようとすれば魔法を繰り出した。
相手に息つく暇も与えない体技と剣技と魔法の複合だ。
「くっ!貴様!
この戦い方、誰に教わったものだ!?」
刺青の男の表情からは余裕が消えた。
「これは完全に自己流だよ。
俺は誰からも戦いを教わったことがないもんでね」
「そんな馬鹿な!
これ程の戦闘技術を…
しかも、この戦い方、何処かで体験したことが…」
ジークの攻撃のスピードが増して行く。
2人の戦いは激しく、肉体がぶつかる衝撃音、魔法の爆音、剣がぶつかり合う金属音が瞬間瞬間で無数に鳴り響く。
廃屋は吹き飛び、2人の戦いは工場跡地一帯を使った戦いに発展していた。
超速で動く2人の戦いは目で追うのが精一杯だ。
いや。刺青の男の動きは何とか見えるが、ジークの動きは速すぎて時折見失う。
なんてスピードだ。
トシキはクリスとリガンの方に目を向けた。
この2人はジークと刺青の男の動きを全く見えていない。衝突する音がした後にその方向に目を向けていた。
これだけの超スピードだ。
目で追いきれなくても仕方ない。
トシキは目をジーク達の戦いに戻す。
今はこの戦いを目に焼き付けねば。
刺青の男も時折反撃を試みるが、ジークはそれをことごとく躱す。
刺青の男の攻撃後の隙を突いて、剣撃を放つがそれを避けられる。
が避けた先に鋭い魔法のビームが飛んでくる。
刺青の男は間一髪でしゃがんでそれを躱すが、その動きを読んでいたジークはしゃがんだ刺青の男に強烈なローキックをかました。
「おサムライさん。
アレがジークがじっくりみろって言ってた答えよ」
マオと呼ばれていた女性が私に言った。
「あなたはかなり強いわ。
だけどあなたの戦い方は剣技にのみ特化している。
それだけの魔力を全て刀の威力とスピード強化にのみ使っている。
いくら速くて強くても単調だから避けるのは容易い。
ジークのように体技や魔法などで相手を撹乱してこそ、相手は次の攻撃を絞れなくなる。
だから、その迷いで反応が一瞬遅れる」
マオの言うことはその通りかもしれない。
現に私の居合よりもスピードが多少劣るジークの攻撃の方が遥かに当たっている。
「あなたの居合は既に神速の域よ。
あの戦い方を覚えたら、あなたの居合を躱せる人はほとんどいないでしょうね」
マオはニコリと笑った。
そうだったのか。
私は今まで剣術を極めることにのみ専念してきた。
だが、ここから先の領域は極めた力を活かすためにどうするのかを考えていかなければならないのか。
私はこれからの自分を高めるためにも、ジークの戦い方を刮目した。
ジークの連続攻撃はどんどん刺青の男を追い詰めてゆく。
刺青の男の表情には余裕はなくなっていた。
「くっ。馬鹿な!身体能力でも魔力でも我らを超えているなど。そんなことあるはずがない…!」
刺青の男は少しの間合いを空けると、両手に魔力を集中した。
「くらえ!バルーガ!!」
刺青の男が放った魔法は周りの大気を凍らせながらジークへ突き進んでゆく。
「アレは氷の極大魔法!!?
なんて奴だ!こんな短時間の溜めで出せるのか!!マズい!」
ジークは咄嗟に魔法壁を繰り出すが、極大魔法はジークの魔法壁にぶつかると、大爆発を起こしジークを吹き飛ばした。
ジークは建物の壁に激突した。
「ぐわぁ。」
ジークは爆発と衝突で多少ダメージを喰らっているが、立ち上がった。
「なんて奴だ。あの一瞬で魔法壁を作って被害を最小限に抑えやがった………ん?」
刺青の男は何かに気が付いたような表情をした。
「き…きさま!その胸のアザは…!?」
ジークは爆発の衝撃で上半身の服がボロボロになっていた。
その左胸の破けた部分から、紋章にも見えるアザが覗けていた。
そのアザをみて龍神族の男は小刻みに震えていた。
「きさまっ!!!!そのアザ……。まさかファルファーの末裔かっ!!」
「あぁ?ファルファー?誰だそれ?」
ファルファーとはこの世界に伝わる、世界で1番有名な『裏切りの騎士』の名だ。
「そうか……きさまの戦い方、何処かで体験したことがあると思ったら1200年前のファルファーと同じ戦い方だからか!!」
刺青の男は追撃をやめ、しばらく考えこんだ。
「絶滅したはずのハイエルフ族とファルファーの末裔か……」
ブツブツと呟いている。
「流石に分が悪いな……。
お前らを始末するのは今日はやめだ!!
次にあった時は覚えてろよ」
龍神族の男はそう言うと空を飛び逃げていった。
「おい!待てっ!
まるで俺達が見逃されたみたいじゃないか!
お前の方が負けてたくせに、かっこつけた台詞吐いて逃げてんじゃねーー!」
ジークが去り行く龍神族に叫ぶが、龍神族はそのまま空へと消えていった。
「くそっ。
まぁ追うのもめんどくさいし、ションさんも助かったからいいか」
ジークは剣を鞘に納めると、ゆっくり私の元へ歩いて来た。
「どうだお侍さん?
わざと見えるスピードで戦ったから、少しは分かっただろ?」
えっ!
わざと手を抜いていたっていうのか?!
ということは本気になったらまだスピードが上がるというのか!?
あれでも一部見切れない動きがあったというのに……
トシキはジークの底の見えない強さに驚愕をするしかなかった。
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☆8月23日単行本販売☆
気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。
チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。
第一章 テンプレの異世界転生
第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!?
第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ!
第四章 魔族襲来!?王国を守れ
第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!?
第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~
第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~
第八章 クリフ一家と領地改革!?
第九章 魔国へ〜魔族大決戦!?
第十章 自分探しと家族サービス
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
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