上 下
26 / 117
ルクスの惨劇

極大魔法

しおりを挟む
敵の女リーダーが放った渾身の一撃を、ジークは片手で持った剣で軽く受け止めている。

「パル、プル、ポル。
悪いがあいつはお前達の手に負えない。
ルクス族の今後を考えても、今お前たちを死なせるわけにはいかない。
残念ながら選手交代だ」

ジークが言った。

3賢者の卵達は反論したそうだったが、自分達の力では歯が立たないことを痛感したのか、ぐっと言葉を飲み込んだ。

「分かってくれたな。よし!
マオちゃん!やっちまえ!」

「あたし!!?
あんたが出てったんだからあんたがやりなさいよ!」

「んー。俺も流石に女性相手じゃ、気が引けてなぁ。
女性の相手は女性のマオちゃんがするべきだよ」

「私が相手の時には全力で殺しに掛かってきたくせに…」

マオさんが白けた眼をジークに向ける。

「まぁ、ケースバイケースってやつだ。
任せたよ」

またジークの怠け癖が出てきた。
なんでもかんでも、面倒なことは他人に押し付ける悪い癖が…。

「しょーがない。私が相手してやる。
掛かってきな」

マオはジークと言い争っても無駄と思ったのか、すんなりと戦いを引き受けた。

「貴様ら。私を前にして なんて緊張感のなさだ。
しかもどちらも私に勝てるような口ぶりが気に入らないね!」

敵は猛スピードでマオに突進してくる。

「タンノノロークフレア」
マオさんがそう唱えると、紫の炎が飛び出した。

が、やはり敵の斧の一振りでかき消された。

「ふーん。やっぱりダメなのね」

「ふん!私はアーブルグの族長。
一族の誰よりも魔力無効の力は強く受け継いでいる!
私の前には龍神族以外の魔法なんて無力なんだよ!」

そう言いながら敵がマオさんに向かって斧で激しい連撃を繰り出す。
マオさんはそれらを剣で全て捌ききる。

流石の身のこなしだ。
敵は斧という巨大かつ重量の武器を使用している。
その攻撃は一直線で読みやすいのは確かだが、パル達が躱せなかったのは、そのスピードがあまりにもすさまじかったからだ。

私でもあのスピードの連撃は躱す自信はない。

しかしマオさんは敵の攻撃を受けるので精一杯なのか、全く攻撃に転ずることが出来ていない。

とはいえ息注ぐ暇もないような怒涛の攻撃を一撃も食らわずに剣でいなし、躱しているマオさんも凄い。

「なかなかやるようだね!
だがこれならどうだい!くらいな!
アクスエクレール!!」

敵のスピードは更にあがり、私の目には敵の姿そのものが消えたように見えた。

敵の姿を見失い、次にその姿を確認するより先に斧が激しい轟音を響かせながら地面を砕いていた。

地面はすり鉢状に激しく凹んでいた。
なんて威力だ。
こんな一撃を喰らったらいくらマオさんでもひとたまりもないだろう。

が、そこにマオさんの姿はなかった。

一体どこに!?
よく見てみると いつの間にかマオさんは敵の背後に立っていた。

「遅すぎるね。どれ程の戦闘力があるのかとわざと攻撃を全て受けてみたけど期待外れだったわ」

マオさんがそう言った後に剣を鞘に納めた瞬間に、敵の全身に無数の切り傷が現れ鮮血を吹き出し、膝をついた。

なんて強さだ。
敵のアクスエクレールという技ですら見切れなかったのに、マオさんはそれを更に上回るスピードで攻撃をしていた。
次元が違う。
クリスはマオのあまりの強さを再実感し、心底震え上がった。

「ぐっ。馬鹿な。
私の秘技アクスエクレールのスピードを凌ぐとは…」

「本当はいまので終わらせられたけど、それじゃあ納得できないことがあってね」

そういうとマオさんは敵から離れ距離を取った。

「あんたは魔法で倒さないと気が済まないのよ!」

そう言って、両手に魔力を集中させていく。

マオさんの前に黒い球体ができ、その周りには炎、氷、雷、風などの様々な魔法が出現してはその黒い球体に飲み込まれていく。
魔法のことはよくわからないが、凄まじい魔力が放たれていることはわかる。

「ジークさんアレは一体なんですか!?」

「あれは闇の極大魔法だ」

「極大魔法??」

「そうだ。各属性の頂点にある魔法だ。闇の魔法は本来は全てを飲み込む力。
マオは全属性の魔法をあの球体に飲み込ませることで、闇の力を極限まで増幅させてるんだ。」

「そうするとどうなるんですか?」

「この世から何でも消し去る程の威力を持った恐ろしい魔法ができあがる」

「なんでそんな凄い魔法があるならレヴィーアの時に使わなかったんですか?」

「使ってもかき消されただけだ。
俺たちが全魔力を使って防いだレヴィーアの最初の攻撃も光属性の極大魔法だったからな。
それに極大魔法は魔力の消費が激しすぎる。
1発で仕留められなかったら後がキツイからな。」

「そうだったんですか」

「もっとも本来の力とうちら専用の武器をちゃんと持ってたら、あの極大魔法の威力もレヴィーアの一撃に勝るとも劣らないものになってたけどな」

今のままですらこんなに強いのに。。。
話の次元がぶっとびすぎてて、ただ普通に驚くことしかできない。
この人達の本当の力ってどこまで凄いんだ。。


そんな話をしている間にマオさんの極大魔法が完成した。


「くらいな。ダークマター」
マオさんが極大魔法を放った。

黒いビームは周囲の物を全て飲み込みながら、敵は向かってゆく。

「こんなもの。
掻き消してくれるわー」

敵は傷ついた体を起こし、全体重を乗せて斧を振るった!
斧とダークマターが激しく衝突した。

「くっ。か…かき消せない…!!?」

斧と衝突をしてもダークマターは消える気配がない。
しかし何でも消し去るはずのダークマターに斬りかかって、斧が消滅しないで堪えているのも、きっと彼女の魔力無効化の力が少しは作用しているのだろう。

それでもダークマターが消えないのはマオさんの力の方が遥かに勝っているからだろう。
私の目からみても、彼女が力尽きるのは時間の問題に見えた。

「くっ……。これ以上はもう…」

ぱきぃーん
彼女の斧が粉々に砕けちる音が響くと同時にダークマターは敵の体ごと全てを飲み込んでいった。

ダークマターは敵を飲み込んだ後も直進を続け、木々や地面、岩を飲み込んで行った。

ダークマターの通った跡には何も残っていない。

これが闇の極大魔法……
クリスはその威力を目の当たりにし、ゴクリと唾を飲み込んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

転異世界のアウトサイダー 神達が仲間なので、最強です

びーぜろ@転移世界のアウトサイダー発売中
ファンタジー
告知となりますが、2022年8月下旬に『転異世界のアウトサイダー』の3巻が発売となります。 それに伴い、第三巻収録部分を改稿しました。 高校生の佐藤悠斗は、ある日、カツアゲしてきた不良二人とともに異世界に転移してしまう。彼らを召喚したマデイラ王国の王や宰相によると、転移者は高いステータスや強力なユニークスキルを持っているとのことだったが……悠斗のステータスはほとんど一般人以下で、スキルも影を動かすだけだと判明する。後日、迷宮に不良達と潜った際、無能だからという理由で囮として捨てられてしまった悠斗。しかし、密かに自身の能力を進化させていた彼は、そのスキル『影魔法』を駆使して、ピンチを乗り切る。さらには、道中で偶然『召喚』スキルをゲットすると、なんと大天使や神様を仲間にしていくのだった――規格外の仲間と能力で、どんな迷宮も手軽に攻略!? お騒がせ影使いの異世界放浪記、開幕! いつも応援やご感想ありがとうございます!! 誤字脱字指摘やコメントを頂き本当に感謝しております。 更新につきましては、更新頻度は落とさず今まで通り朝7時更新のままでいこうと思っています。 書籍化に伴い、タイトルを微変更。ペンネームも変更しております。 ここまで辿り着けたのも、みなさんの応援のおかげと思っております。 イラストについても本作には勿体ない程の素敵なイラストもご用意頂きました。 引き続き本作をよろしくお願い致します。

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

処理中です...