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ルクス族の村へ

修行開始??

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昨晩の遅くにマオさんに殴り飛ばされたジークは明け方近い時間に帰ってきた。
とてつもなく遠くまで飛ばされていたらしいが、自業自得だ。

陽が昇り始めて、周りが明るみ始めると、みんなほぼ同じタイミングで目がさめた。

ジークだけ二度寝に入ろうとするが、マオさんが叩き起こした。

再度焚き火に火を付け朝食を取り始めた。

「そういえば稽古つけてくれるって言ってましたけど、修行はいつから始めるんですか?」

リガンが聞いた。

リガンよ。よくぞ聞いてくれた。
私も昨日までの4日間一緒に旅をしてきたが、私に関しては勝手についてきただけなので、2人の旅の邪魔をするわけにはいかず、ずっと2人の戦いを見てきているだけだった。
本当はちゃんと稽古などをつけて欲しかったが、言い出せずにいた。

このリガンに乗じて私も…。

と思っていると、ジークが口を開いた。

「まぁ、俺とマオちゃんの戦いを見てるだけでも充分勉強になるだろう。上には上がいるって気持ちで自身で修行に励みなさい」

バナナをモグモグしながら言った。
この人はただ修行がメンドくさいだけだ。

自分でリガンを連れてくと言いながらなんて無責任な…。

「あんた、ちゃんと面倒みるって言ったでしょ!?」

マオさんがジークを叱咤した。
マオさんの右手に魔力が集まっていく。

それを見てジークの額に汗が湧き出てくる。

「んー。」

ジークはしばらく考えこんだ。
メンドくさいから修行はしたくないが、ここで無責任な態度を取ったらまたマオさんの怒りを買って、ぶっ飛ばされるかもしれない。

そう思ってなんとか楽にことを解決する方法を捻り出そうとしているのだろう。

「しょうがない。自分で言い出したことだしな」

ジークは仕方なさそうに言った。

「2人は魔法は使えるか?」

「私は魔法の類は一切使えません。私の父は優秀な王宮魔道士だったのですが、研究に失敗して魔導爆発を起こして、その爆発に巻き込まれて亡くなったもので…。それで私は魔法に頼らずに剣一本で騎士の道を歩むと決めたんです」
私が答えた。

「僕も魔法は今まで使おうと思ったこともないですね。
なにより魔法なんて小手先のものに頼らずに、僕もこの槍と自身の身体で世界最強になりたいんです」
リガンが続けて答える。

「おぉーおー。魔法は覚えたくないってか。我儘な弟子だこと…
そうだなぁ……。
あっ!!ちょっと待ってろ」

ジークは自身の持ち物袋をガサガサと漁ると2つの腕輪を取り出し、うちら2人に渡した。

「2人ともこの腕輪を付けろ」

言われるがままに腕輪を身につけると、力が少し抜けていき、身体がズンと重たくなったように感じた。

「こ…これは…?」

「呪いの腕輪だ!」

ジークがケラケラと笑う。
なんの悪ふざけだ。
怒りにも似た感情が込み上げてくる。

「それを付けてると常に大きな虚脱感に襲われるはずだ。
その虚脱感の中でも常に普段通りに動いて、普段通りの修行をしていくだけで、かなり効果的だと思うぞ!
腕輪を外した時には大いなる力を身に付けてるはずだ。
だからその腕輪は俺が外して良いという日までずっと付け続けること!
いいな?」

確かにこの虚脱感の中で修行をすれば、精神も肉体も鍛えられそうだ。

私もリガンも渋々と従うことにした。

「んで、早速修行に入るんだが…
マオちゃん。手伝ってくれ」

ジークがマオさんを呼ぶ。

「マオちゃんて呼ぶな!!それに私はお前達よりも大分年上なんだぞ!」

マオさんがぷりぷりしながら近づいてくる。

マオさんはうちらの腕輪を間近で見ると。
「ジーク!!!これは…!」
と言い、驚きの表情を見せた。
そりゃ、呪われた道具を身に付けててるのを見たら驚くだろう。
ジークはマオさんの顔を見てニヤリと笑った。

「クリスとリオンは布で目隠しをして、マオちゃんに背を向けろ。
マオちゃん。その2人の後ろでなんの属性でもいいから、手の平に魔法を発現させてくれ。出来るだけ静かに
2人はその魔法がなんの属性かを当ててみてくれ」

言われるがままに目隠しをして、マオさんに背を向けた。

「よし、始めるぞ。
マオ!宜しく」

後ろのマオさんの気配に神経を集中させる。
微かな音、空気の流れ、温度に気を配る。

が、全くわからない。

「どうだ2人とも。分かったか?」

ジークが聞いてきた。

「全くわかりません」

リガンが答える。

「これは一体なんの修行ですか?」

リガンが続けて聞いた。

「これは目に頼らずに相手の動きや攻撃を察知する練習だ。一瞬で相手の攻撃をイメージ、理解することで、対応も早くなる。
大事なのはイメージだよ!」

そういうことか。
その後しばらくその修行をしたが、今日は1度も当てることができなかった。

その後は次の修行に入った。
ただ景色を眺めるだけの修行。。

「いいか。心を空にするんじゃなくて、自然を感じるんだ。
焚き火の火の色、温度
風の強さ、音、香り
空の青さ、太陽の光
全てに気を配る」

ジークはそう言った後に間抜けな表情でぼーっとし始めた。

これのどこが修行なんだ……。

その後このわけの分からないただぼーっとするだけの修行がたびたび行われた。

下山をしながら、川に着いては川を見ながらぼーっとし

草原に着いては草原を見ながらぼーっとした。

こんなんで強くなれるなら苦労はないだろ。
この人はダラダラと過ごすのが好きだ。
これは修行なんかじゃなく、ただのこの人の趣味だ。

「おいおい。クリス。
雑念が入ってるぞ。もっと景色を、自然を楽しめ」

これも修行だというのだから、うちらは渋々とこれに従った。
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