わたし、メリーさん

ントゥンギ

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メリーさん、見舞いに来る

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 ブルブルと携帯電話が振動する。

 僕は懸命に手を伸ばして電話を取った。

「……わたし、メリーさん。
今、あなたの後ろにいるわ」
「そう……」
 
 静かに応えた。

「床が冷たいわ」

 ぼそりとメリーさんは呟いた。
 きっと今、メリーさんは病室の床に寝転がっているのだろう。確かに病院の床は冷たそうだ。

「どうしてこうなったの」

 どうして、と言われても僕の方が理由を聞きたいものだ。
 メリーさんとカフェで会ったあの日。メリーさんがケーキを食べようとした瞬間、突然トラックが突っ込んで来たんだ。
 お陰で僕は両足骨折の大怪我を負ってしまった。つまり、今、僕は病院のベッドの上で両足を吊られて、寝返りすらうてない状態だった。
 恐らくメリーさんはベッドの床板を挟んでベッドの下の床に寝転んでいるのであろう。

「わたし、メリーさん。
あなたの後ろにいるのよ。
ねぇ、振り向いてよ」

 いや、無理だって。と、内心思う。

「……振り向いてくれないのね。
いいわ。また、来る」

 メリーさんの声は少し寂しそうだった。

「早く良くなってね」

 それきり、メリーさんの声は聞こえなくなった。
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