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第二章 自重を知らない回り

戦争開始、グラディアの場合

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 帝国軍が陣を張ったのは、砦付近の草原地帯だった。
 そこを基点に軍を3つに分け包囲をする作戦を立てていた。

「将軍、軍議の準備が出来ております」

 「ふむ、軍議など必要ないのだがな」と笑いながら陣幕内に入っていく。
 陣幕内では各隊の将、副将が待っており、酒もたっぷりと準備されていた。

「では、各隊将の意見を聞こうか?」

「は!こたびは鶴翼の陣でいかがでしょうか?どのみちあいつ等は篭城しか手が無いでしょうからな」

「いやいや、ここは一気に魚鱗で攻めかかりましょうぞ」

「ふむ・・・斥候からの報告は?」

「は?こたびは蹂躙劇、斥候など必要有りますまい」

 ここに来て始めてヒャクタケは油断のし過ぎに気がついた。
 いまさらながらに、ある程度の綱紀引き締めを必要と感じ、すぐさま各隊に通達を行うが今更と言う事もあるが、緩みきった兵達がいきなり緊張感を持つことは出来なかった。

「斥候には明日朝までに報告をと伝えよ」

 その日ヒャクタケは言い知れぬ不安を拭うかのように、酒をあおり眠りに付いた。

 次の日斥候の報告を受けるまでも無く驚愕することになった。

「あ、あれは何だ!!」

「ワイバーンが何故蛮族側にいる!!!」

 砦上空に200のワイバーンの姿が見え、自分たちの国が龍に守られた国であり、当然ワイバーンも自分たちの味方であるはずだった。
 その、根拠の無い事が崩れ去ったのだ、当然の混乱であった。

「静まれ!!もしあれがフォースに加担しているワイバーンであれば、すでに攻撃を受けているはずだ!
攻撃を受けていないのはどちらの味方でも無いからだ!!刺激さえしなければ問題ない!
総員鶴翼の陣で行く!持ち場に着けぃ!」

 あわてて陣を決め、将を集めるように部下に告げると、自分の陣幕に戻り対策を考え始めた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

フォース王国の場合

「陛下、各陣営配置完了です」

「ご苦労、グラディア将軍、クラウス傭兵団長、トッポ殿、改めて参戦感謝する」

「なに、我が国でも帝国の行動を問題視する意見が出ておりましてな、丁度良い機会とも言えますな」

「母国を滅ぼされるわけにいかんからな。
しかし、ワイバーンまで出てくるとはあやつらも思っておらんかっただろうな」

「うちの隊は少数っすから遊撃メインっすけど、頑張るっす」

「「「いやいや、明らかに過剰戦力だろう!!」」」

「あはは、そうっすね・・・」

 だが、今回の軍議には悲壮感が無いが適度の緊張感がある、一番良い状態で話は進んでいった。
 連合軍であるため、各戦場は各国の将に指揮を任せる事にし柔軟に対応すると決まった。

「しかし、相手がかわいそうな陣容ですな、我が国からもハインツ特務部隊も出ておりますからな。
ブラウン殿の参戦など悪夢でしかないですからな」

 シール王国援軍は砦から見て右に布陣、傭兵団は左、フォース王国軍は中央に配置し、中央軍はファランクスの陣をひいた。

 シルバーナ国王が指揮をする事で兵の士気は最大限に高まり、各部隊長への作戦も恙無く通達が終わった昼過ぎ、ついに帝国軍が姿を現したのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 グラディア将軍の場合

  シール王国軍は横陣をひき、ハインツ部隊を遊撃として配置した。
  グラディア将軍は昼過ぎに姿を見せた帝国軍に向けて口上を述べるべく両軍の中央に進み出た。

「自らの欲望のみで動く帝国兵共!!そのスライムと変わらぬ行動を恥じ入るのなら!尻尾を巻いて逃げるが良い!!」

「愚かなり、フォースの将よ!ワイバーンを使い我らを欺かんとする策は解っておるわ!帝国左将ノブカツ・マツナリが討ち取ってくれる」

「情報も知らぬ愚か者めが!我はシール王国がグラディア・デュ・シールドなり!!」

 名乗りを聞きあわてて自軍に戻るマツナリを冷めた目で見つめ、グラディアも自陣に戻り各隊長を呼び出した。

「どうやら帝国は斥候さえ出していないようですな、マツナリという将は確か武勇に優れた将と聞くが・・・」

「は、騎馬の突撃が得意とも聞きます」

「では、スフィアトラップ隊に例の準備をさせておけ」
 
 恥をかかされたと、進軍を急遽始めたマツナリ軍を確認するとグラディアは迎撃の準備に入ったのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 第一次決戦

 マツナリ軍はマツナリを戦闘に、突撃体制でグラディア軍に向かって雪崩れ込んできた。
 だが、グラディア軍まで後一歩という所で、いきなり横合いから猛スピードの歩兵隊が雪崩れ込んできた。
 見事に横を突かれた軍は分断され、先陣部分はグラディア本隊に包囲され、後続部分は横合いらか来た部隊と対峙する事になった。

「ハインツサマノタメニ、テキヘイセンメツ」

 部隊長らしきタr・・・ふくよかな男はハンマーを振り回し、後続の中央を分断していく。

「とめろ!!敵は少数だ!かこめ~」

 叫び声があちらこちらから上がり、油断しきっていた帝国兵はあっさり混乱の坩堝に叩き落されていた。

「あ!あれは、イノブタだ!イノブタ辺境伯だ!間違いない」

「何故シールの辺境伯がこんな所に!!!」

「ぎゃ~!」

 そう、部隊長はあの辺境伯だった。

「ギギ・・・テキヘイヲホロボス・・・ギギ」

 超重量のフルプレートメイルを纏った突撃部隊は、敵兵1万5千をありえない速度で蹂躙していく、たった1000の兵と思えない無双状態だ。
 人間と思えない怪力と恐怖を感じていないかのような動きで混乱した兵など物の数で無いように次々と襲い掛かっていく。

「後続はどうなっている!!」

 先頭を行っていたマツナリは混乱の中に居た、分断されても敵兵をなぎ倒せば後続は付いてくると思っていたのに地面に張られた網で馬は足を取られ、抜けたと思ったら火矢が放たれ完全に後続と分断されたのだった。

「ばかな!我が軍は精強なる6万だぞ、軟弱なシール兵など物の数では無いはずだ」

 だが現実は劣勢に追い込まれており、抜けようにも中途半端に深く入り込んで抜けられない。

「しかし、帝国将は間抜けですな」

 グラディアはピンと時計の針のような髭を整えるように撫でつつ、後方で少数ずつバラバラに分断されて行く様子を観察していた。

「そろそろですかな」

 日が暮れ始めたのを確認するとトドメとばかりに私兵を率いて突撃を開始、マツナリ兵はバラバラに逃げ始めこの日の決着が着いた。
 まさに完全勝利のはずが、しぶとい帝国兵は6万のうち4万がほうほうの体で陣に戻り前日とは違いかなりの緊張感で夜を明かすことになった。

 だが、敵も油断しているだろうと、マツナリは少数の兵を率いて夜明け前にグラディアの本陣を突入した。
 グラディアはそれを読んでいたかのように、私兵で待ち伏せをしていた。

「馬鹿な!」

「馬鹿なはないですな、あれだけの損害で引かない辺り、こういった動きは読めるのですな」

 結局日が昇る頃にはマツナリ以下精鋭部隊は捕縛され、残された兵も投降し決着が着いた。
 グラディアは他の戦場の情報を元に、マツナリ軍が居た陣地を取り込み、次の戦の準備を整えて行った。
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