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第二章 自重を知らない回り

外伝:レオナの過去

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「クラウス公爵令嬢、貴様との婚約をこの場で解消する」←このお話は最強の男です

 辺りは驚きのあまり静まり返り、5人の男性と1人の女性以外の時間が止まっていた。

「はぁ、そうですか」

「何だその気の抜けたような返事は、私はこのブーランと結婚することにした」

「・・・どうぞ?」

 クラウス公爵令嬢はこいつ何言ってるんだと言わんばかりの顔をして首をかしげる。

「ブーランを侮辱したことも許しがたい、貴様を国外追放とする!やれ!!」

 取り巻き四人に拘束され引きずられていくクラウス公爵令嬢に向かって

「クラウスさまぁ14歳のお誕生日プレゼントですぅ」

 とブーランがのたまわり、嬉しそうに手を振る。
 あまりの出来事に回りは更に混乱し、呆然としている間に、悲劇は進んでいったのだった。

「何処に連れて行くのですか?」

「魔境の森だ、貴様には丁度良かろう、毒婦を食らってモンスターが死ねば一石二鳥だ」

 クラウス公爵令嬢は体に力を入れて逃れようとするが、男4人に拘束されて逃げることも出来ない。
 必死にもがくが結局逃げることも出来ず、拘束の魔道具で拘束されて、護送馬車に乗せられてしまう。

「ま、自分の行いが悪かったと実感しながら死ぬがいい」

「生きながら食われるなんて、中々経験できないから楽しんでね」

 そう言って見送る4人に恨みの視線を送るが、祖父や父の教えで「無駄口を利く暇があれば、最後まであがけ」を実行し続けるが、びくともしない拘束具に皮膚が切れ血が滴る。

 どのぐらい時間がたったのだろうか?馬車が止まり真っ黒い仮面をつけた御者に担ぎ上げられると、森の奥に捨てられた。

「こんな所で死ぬわけにはいかない」

 必死に近くにあった岩に拘束具をこすり付けて、壊すためにあがき始めるが、血を流していたために、鼻の良い狼型のモンスター、ハウンドがクラウス公爵令嬢を囲むように出てきた。

「いや、やぁ」

 ここに来て始めてクラウス公爵令嬢の心が折れ始めた、ただの貴族令嬢がモンスターの放つ威圧に耐えれるわけ無かった。

「助けて!!」

 目をつぶり体を硬くした瞬間、「ギャウン」とハウンドの悲鳴が聞こえ、恐る恐る目を開けると、そこに巨大な剣を肩に担いだ大男がハウンドの死体の中心に立っていた。

「こんな所で何をしている?」

 拘束具を巨大な剣で切ながら聞いてくれる男に涙ながらに感謝を伝え、今まであった事の話をした。
 男は黙って話を聞き、涙で言葉が詰まると、背中をさすってくれた。

「これからどうするんだ?」

 少し落ち着いてきた時に聞かれた一言で、は、と気がつき少し恥ずかしそうに。

「申し遅れてすいません、わたくしは、レオナ・フォン・クラウスです、出来れば父の元に戻り今後を決めたいと思います」

「俺はブラウン、そう言う事なら公爵の屋敷まで俺が送って行こう」

 ブラウンのその姿にレオナは恋をした、これがレオナの初恋と言える出来事だった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 クラウス公爵およびクラウス大公の場合

 クラウス家は代々武門の家であり、先代クラウス大公は先の戦争で手柄をあげ”鬼神ブラグニア”の贈名を王より送られた伝説の大将軍であり、現公爵フェルマは大将軍であり、軍師として国の防衛線を100戦100勝の”双頭の鷹”と呼ばれる男であった。
 また、フェルマの奥方はフォース国において知らぬ者がいない最大の商家であった。
 その家の公爵令嬢がパーティーの席で婚約者である王子に侮辱され、どこかに連れ去られたとの報告を、パーティーに参加していた貴族から急報で知らされ、私兵を率い王城に乗り込む寸前に、令嬢であるレオナが一人の男を連れ帰って出来たのだから当然のように騒ぎになった。

「レオナ!無事であったか!!」

「け、怪我はないか?乱暴はされなかったのか?」

 レオナの無事を確かめるように抱きしめ確認をする二人は、両手に付いた傷を目にすると

「フェルマ、解っているな」

「は!父上」

 物凄い覇気を纏って立ち上がる二人に、レオナはなだめつつ、今まであった事を説明していく。

「ブラウンとやら此度の事感謝する!我らは王城に攻め入るが貴殿はどうする?」

「ま、話を聞く限りはお仕置きがいると思うし、少し付き合うか」

 公爵は鷹揚にうなずくと、後ろに控える私兵に向き直りよく通る声で

「告げる!我らはこれより王城に攻め入る!!ゆえに公爵家を捨て傭兵団になる、不満のある者は今去るよい!!」

 と告げるが、誰一人去る事無く声を上げる。

「我らの敵は我が娘を傷つけ害をおよぼした者!たとえ王子であろうが首を取る!!」

 その日王都の中央道りをクラウス公爵家の私兵団が駆け上がり、王都の警備兵達も私兵に理由を聞くと合流し、巨大なうねりとなり王城を囲む事となった。
 兵士達にとって英雄である二人の公爵と大公、そして誰とでも気さくに接して人気のレオナに対する王子のやりように兵士や市民も賛同し巨大なうねりとなったのだった。
 公爵たちが王城に着くと門が開いており、門内広場に国王を筆頭に宰相、騎士団長、魔術師長、裁判長、それぞれの前に猿轡を噛まされ、縄をうたれた王子たちが転がっていた。

「これは・・・」

「クラウス公爵、このたびの事申し訳ない!!侘びになるかわからぬが、これらの廃嫡で許してはもらえぬだろうか?」

「ああ?わしの孫を傷つけておいて廃嫡だけで済むわけなかろう!!同じ目にあわせてもまだ足りぬわ!!」

「それに王のことです、廃嫡後復権もしくは臣下席を用意しているのでしょ?解らないとでも?」

「で、では、あくまで許さぬと?」

 物凄い緊張が三者の間に流れるが、それをさえぎるようにブラウンが大剣を片手にぷらりと前に出る。

「なんだ、貴様は」

 王の問いかけも聞かず、王子の猿轡を取ると、問答無用で往復ビンタをする、その音は”ばし”では無く”どご”重く響く音に辺りはしんと静まる。

「男は弱い者を守るのが本分、自分の我侭で追い詰めたり傷つけるものじゃない」

 静かに、だが激しいビンタが続き、王子は気絶することも出来ず顔の形が変わるほどはたき続けられた。

「次」

 ブラウンのあまりの迫力に誰も止められず、ただ素直に宰相の息子を差し出すしかなかった。
 5人へのお仕置きが終ると、ブーランを荷物のように抱え、レオナの前につれてきた。

「お前の決着はお前が付けろ、野郎のお仕置きは俺がする」

 あれだけのお仕置きをしておいて、まだするのかとおびえる国王達によっくりと歩いていくブラウンを見つめ、レオナは顔を引き締めると。
”ばちん”とブーランにビンタをかまし、倒れこむブーランを見下ろして

「あんなクズ要るなら差し上げます、元々望んだ婚約ではなかったので」

 猿轡をしたままなだからか、声を上げず恨めしそうにレオナを見上げるだけだった。

「のう、わしら出るまく無しじゃな」

「ええ、・・・あの男何者でしょうか?」

 親達もビンタをされ、この騒ぎは収まったが、結局公爵家は傭兵団となり国を離れ、弱体化した国の一部は帝国に奪われる事になった。
 王子は前線で戦い続け、終戦を迎える頃には片腕を無くしたが、無事王都に帰還した。
 その後ブーランとはわかれ、男とはを追求し、騎士団長として終生を終えた。
 レオナはブラウンに憧れ、恋をしその後五年後A級ハンターとなり、その後SSS級まで駆け上がるのだった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 ども、たぬまるです。
 皆様のお陰でお気に入り登録が5000人を超えました、これも皆様のお陰です。
 今回はざまぁ系の小説を読んでいて、レオナの設定と合うな~と思って書いてみました。
 これからも頑張りますので、よろしくお願いいたします
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