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武闘大会

武闘大会準備3

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 ねずみ族の男の子が仕入れに出かけた先で思いがけないトラブルに見舞われていた。

「ねずみ族が肉とか買いに来てんじゃねーよ、腐んだろうが!」

 トラブルの原因がねずみ族の男ちゅーべーを睨み付けながら悪意を吐き出している。

「お客さん困るよ、こっちは問題ないと思って売ってるんだから」

「ああん?!客の俺様がくそきたねぇ害虫に店が言えねぇ本音を言ってやってんだろうが!ゴタゴタ言ってたらおめぇもぶっ殺すぞ!おら!」

 男は手に持ったナイフを店主の口に突っ込み凄んで動けないのを確認すると、ちゅーべーの腹に思いっきりつま先で蹴り上げた。

「ぐふぁ」

 あまりの痛みに倒れるちゅーべーの頭に足を乗せゲシゲシと踏み付けながら、忌々しそうに

「てめぇらのような害虫が、ドラゴニアに居るのも迷惑なんだよ!俺の街から出て行きやがれ」

 次の瞬間”ゴス”と言う音と共に地面に倒れた。

「誰の街だ、誰の、ここはブラウン様が買って発展させた街だ」

「ってぇな誰だ!」

「私か?私はミネルバだ、人種差別するなら私も差別してみろ、私は龍人だぞ」

 ミネルバは胸を張って男を見下ろすと男は「でかい」と一瞬呟いたが、立ち上がりミネルバを睨み付けると。

「俺は龍人の次期子爵だ!平民ひれ伏せ!」

「あんた、髪の色からして水龍族だろう、ニンニルも水龍王もこういったやからには厳しいはずだが」

「ふん!一族や獣人族などいくら迫害しようが水龍王も文句は言わねぇだろうよ、ってかひれ伏せや」

「はぁ、すまんな、龍人もこんなのばかりじゃないんだ、許してほしい」

 ミネルバは男を無視してちゅーベーを起こすと軽く頭を下げた。

「てめぇ!無視すんじゃねぇ」

 ミネルバは振り向きざまに本気の威圧を放ち、腰が抜けた男を見下ろすと

「そうだな、ここではなんだ。
ちょっと付き合え、君にも謝罪させるから良かったら来てもらえるかな?」

 ちゅーベーは首が切れそうなほど頷くのをミネルバは男の首を掴んで肉屋から出て行った。

「助けてくれてありがとうじゃん、自分はねずみ族のちゅーべーと言うじゃん」

「旧イースト語とは珍しい、私は炎龍族のミネルバと言う」」

「え?これ大陸共通語じゃないの?」

「語尾にじゃんが付くのは旧イースト語だよ、私も父にだまされて猫獣人語を共通語だと思ってた時期があった、そのせいで自分で確認するために色んな言語を勉強したから」

 ショックそうにうな垂れるちゅーべーを慰めながら暫く進み自宅の庭についた。

「あれ?それ水龍族よね」

「ああ、かなりオイタしてたからオシオキにね」

「ニンニル様お助けください、この平み・・・」

「あらあら、わたくしも協力しましょうか?」

「ちゃんと名乗ってなかったね、私は炎龍族のミネルバ姫だ」

「ヴェ・・・」

 絶望に怯える男はニンニルの方に顔を向け

「俺はサボルホ子爵の息子だ、姫なら助けろよ」

 そう言うと目を見開く羽目になった。
 ニンニルはニヤリと暗い笑顔を浮かべると、マジックバックから分厚い本を取り出すと。

「サボルホ元子爵の長子ダミャンですね」

 ニンニルの確認に壊れたように頷くと、元の部分が気になったが聞くことが出来なかった。

「サボルホ元子爵は、意味もなく村を滅ぼした罪で一族全員コキュートスでの氷採掘作業の刑についていますよ?長子だけ行方不明でしたの・・・こんな所に居るなんてね」

「へ~でさ、このねずみ族のちゅーべーを見たときは足蹴にしてたんだよ、謝罪させたいしオシオキもしたいんだけど良いか?」

「それが終ったらコキュートスに送るのでお気兼ねなくどうぞ、我が一族のしでかしたことなので、わたくしも参加していいですか?」

「もちろん」

 ちゅーべーは後に語る、この世には怒らせてはいけない人たちが居て、想像を絶するオシオキがあると。
 次の日ミネルバ、ニンニル連名で大量の肉と、闘技場に近い場所での販売許可書が届けられた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 トッポの場合

 トッポの目の前には怒れる三人の美女が座っていた。
 あまりの恐怖に、冷や汗を流しながら上目使いにチラリと見ると、三人はトッポにかなりの無茶振りをしてくる。

「ブラウン様と私たちも結ばれるようにしなさい」
「そうだ!私達が七つ丘に帰っている間にヘーラだけ結ばれるのはおかしい!!」

「トッポさんなら良い方法をご存知でしょう?」

 トッポは心の中で「知らないっす、自分達でどうにかして欲しいっす」と叫んでいたが、声に出さないだけ賢明だった。

「あの、一旦ヘーラ様に聞かれるのはどうっすか?」

「駄目よ、プライドが許さないわ」

「そうよ、だからこそトッポの所に来てるんだから」

 あ~っと頭を抱えるとトッポは顔を上げ、何かを思いついた様に

「じゃあ、自分がヘーラ様にそれとなく聞いてみるっすよ」

「そうね、結果を待ってるわ」

「出来るだけ早くね」

 こうしてトッポの苦行が始まったのだった。
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