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引きこもり170日目~177日目

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 引きこもり170日目

 殿下は相手をにらみ殺す勢いで睨み付け、血塗れのサーシャを抱きしめていた。
 一瞬フリーズしていたミーは暗殺者へ恐ろしい勢いで爪を振るい、すぐさま取り押さえると同時にシークへ連絡を入れた。
 転移してきたシークはサーシャの状況に回復魔法を唱え、回復薬も大量に使用した。
 一命を取り留めたサーシャを見つめ、殿下は奥歯が割れそうなほど食いしばり、同じような表情をしているミーに声をかけた。

「今回の件は申し訳ない、僕を庇ったばかりに・・・」

「いえ、私が・・・私が動けなかった・・・それが・・・それが」

 優しくミーを抱きしめ頭をなでると、胸の中でミーの嗚咽が聞こえてくる。
お互いに大切な人を守れなかったその悔しさが、辛さがわかるが故に、抱きしめるしか出来なかった。

「シークも頑張っています、私は私が出来ることをします」

 泣きやみ、顔を上げたミーは決意に満ちた目をして転移して行った。
 
「僕も・・・必ずこの報いを」

 殿下は謁見の間へと向かった、その背中は怒気に満ちており、戦に赴く父王に似ていた。

「セドリック!サーシャ殿の容態はどうだ?」

 謁見の間に入ると国王が直ぐ様サーシャの事を聞いてきた。

「シークさんの話ではもう心配ないと、父上主犯の特定は?」

「出来ておる、ナラウ皇帝国がセドリックを狙って送り込んだ事が原因だと判明しておる」

「では、報復を」

 まさかあの温厚な殿下から報復の話が出るとは思ってもいなかった大臣達は驚きをもって答え、
 国王も声も無く驚いていた。

「兵は此方から出しましょう」

 突如転移してきたミー、その後ろにはモミジ、シータ、アイ、ミオが怖い顔をして立っていた。

「良いのか?サーシャ殿は争いを禁止していたと思うが」

「いえ、マスターは無益な争いを禁止していますが、この度の件は問題ないと言えます」

「う、うむ、ではセドリックと共にナラウ皇帝国へ攻め込んでもらうとしよう」

 国王の提案に、ミーはニコリと笑い

「今回は、マスターが創られた光集積砲を使います、ただでは済ましません。
 国の存在意義すら消し飛ばして見せますよ、国ごとね」

「出来れば僕が殴る部分は残してくださいね」

「トドメはお任せします」

 分かり合い怒り狂っている二人は誰も止められそうに無かった。

 次の日ナラウ皇帝国にマルシェ王国から宣戦布告が告げられ、なめきっていたナラウ皇帝国は使者を殺し送り返した。

引きこもり生活171日目


 次の瞬間国境に築いた巨大な壁が光に飲まれ、約21キロに及ぶ壁が蒸発したのを帝城からも確認が出来た。何がおきたのか調べる指示を出す直前、各地に竜巻が起き首都でも竜巻が起き、壊滅的な被害が出た。

「何が起きたの?なぜこのようなことがおきるのよ」

 そう言って巨大な身体をくねくねさせながら、驚きを隠せないナラウ皇帝に

「噂では有りますが、マルシェの魔女は天候を自在に操ると聞いたことがあります」

「なんで?王太子を暗殺しようとしただけじゃない、蹂躙するだけよ?
私達が世界の中心なんだから良いじゃない、ねぇ」

 頬に手をやり理解できないと、同意を求めるが誰も同意しようとしない。

「もう、なんなの!常駐している兵を集めて、国は置いといて攻め込むわよ、その魔女に直させればいいんだから」

 そう言ってデップリとした身体を起こして、出陣を指示した。

 丁度その頃、その状況を実況中継されたマルシェ王国の面々は怒りに震え、獣人達は大量のゴーレムと魔道兵器(元々平和利用のためのもの)を引き連れて苛烈に攻め始めた。

「皆、生かさず殺さず確実に蹂躙なさい」

 ミーがそう言って自分もドンドンと攻め込んでいく、この日広大な面積を誇るナラウ皇帝国の領土の1/3を攻め滅ぼし、捕らえた国民は一箇所に集められ、兵達は全て重症で適当な処置を受けてそこかしこに転がされていた。

引きこもり生活172日目

 戦況が報告されるたび、巨体を震えさせながら皇帝は怯えたように悲鳴を上げ、ついに動かなくなった。
 突如爆音が皇都に響き渡り、皇都の壁が消え去り、国民の悲鳴が響き渡る。

「なんなのよ、私は悪くないわ、悪くないのよ」

 そう言って震えるも、もはや誰も声をかけることはなかった。
 そもそも、この皇帝は選民主義の最たる者で、自分の言うことを聞かない者を殺し続けて皇帝になった男であった。
 それゆえに誰も意見を言う者も無く自分勝手にやってきたつけがここに来て出ただけなのだが、それすらも理解していなかった。

「ふふふ、み~つ~けた」

 身の毛のよだつような声が聞こえ、慌てて振り向くとそこにはネコ耳のメイドが立ってにこやかな笑顔を浮かべていた。

「あ、あんた良い女ね、私を助けたら、愛人にして・・・」

 皇帝の言葉は最後まで続くことが無かった、ミーの強烈な膝蹴りを股間に受けて、白目を剥いて血塗れの股間を押さえて倒れた。

 会戦わずか2日ナラウ皇帝国は陥落した。
 ミーに連れられて、皇帝を目にした殿下は、プチプチと皇帝の毛髪を頭頂部から抜き始めた。
 
「殿下?殴ったり、蹴ったりするのでは?」

 殿下はため息をつきつつ皇帝を指差して

「これを見てまだ殴れる人は稀ですよ」

 と言った。

「え?殿下の殴る所残してますよね?」

 鼻の中心部以外は獣人達に殴られ、原型を辛うじて留めている状態の皇帝を指差して言った。

「物理的にはミーさん達がやったと思うので、僕は精神的なほうを」

「そうですか」

 ミーはそう言うとおもむろに、残っていた鼻の中心部を思い切り蹴り抜いた。

「もご・・・」

 そう言って皇帝は再び気を失った。

 今回の話は歴史書に刻まれることになった。また歴史に習うの語源になったともいわれるこの事件は、まだ終わりを迎えていなかった。

 引きこもり生活173日目夕刻

 ナラウ皇帝国の主だった大臣、皇帝達以外は、夕刻の空に尾を引いて流れ落ちる幾つもの流星を見ていた。その全てが人が居なくなったナラウ皇帝国へと落ちて行き。
 この日4000年の栄華を誇ったナラウ皇帝国は更地になり、何も残さずこの世から消えていた。

 この流星は、ヨルムンガルドとイーフリートの合作で星落とし後に語られる神の一撃であった。


引きこもり生活175日目

 サーシャは最悪な目覚めを迎えた。
 頭は重く痛く、身体も重い通りに動かない。

「あれ?・・・私・・・殿下を庇って」

「マスター、おはようございます」

「おはよう、心配かけたわね」

 まだ少しぎこちないサーシャの笑みを見て少し困ったように頬を掻くと

「殿下が何度か来られました」

「そっか、殿下にも心配かけちゃったね」

「そうですね、それに、大好きなマスターが傷ついて相当答えたようですしね」

「え?大好きなのはミーだよね?」

 目が点になったように驚いたミーは震えるように

「で、殿下がすきなのはマスターですよ?」

「え?え~!!!まさかないない」

 この日ミーがサーシャの誤解を解くのに丸一日要した。


引きこもり177日目

 サーシャは決心をして王城へ、回復の報告へやってきていた。



――――――――――――――――――――――――――――――
たぬまるです
続きは次回に回しますね^^
さて、殿下とサーシャはどうなるんでしょうね?
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