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引きこもり137日目~141日目

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 引きこもり137日目

「と、止めろ!!近づかせるな!」

「ひ、矢をもっともってこい!!ぎゃ!城壁が破壊された」

「公爵様を逃がせ!!」

 南の公爵領は蛮族との戦闘を繰り返し、今回は奇襲を受け、視察に来ていた公爵を巻き込んでの大混戦になっていた。

「我はマルシェ王国王妃の叔父騎将プロセリア!!かかって来い」

 隻腕の公爵が声を上げ剣を引き抜くと、蛮族は色めきだって公爵を囲み始める。
 次々に襲いかかってくる蛮族を相手に高速で剣を振るい切り伏せていくが、蛮族の勢いは衰える事無く次々に襲い掛かってきた。
 流石に片腕では徐々に押され始め、公爵の剣がついに折れ蛮族に囲まれた。
 まさにこれまでっと思った時、空から何かが降ってきた。
 降ってきた何かは公爵の周りの蛮族を薙ぎ払い、公爵に声をかけた。

「そこの人下がりなさい」

 そう言ってさらに部屋を囲む蛮族を一気に蹴りで薙ぎ払う、メイド服の女性は一人で一気に室内に居る蛮族を駆逐して、街中に飛び出していく。

「な、なんなんだ・・・あれは」

「さ、さぁ・・・」
 
 薙ぎ払いながら去っていくメイドの背中を見ながら、公爵と御付の騎士は呆然と呟いた。
 その二時間後、攻め入った約半数以上を失い、蛮族は転がるように逃げていった。
 周りに敵が居ないことを確認すると

「さて・・・マスター、安全を確保できましたので、お越しいただいても大丈夫ですよ」

 ミーがそう言うとサーシャが転移してきた。
 サーシャは転移して街の惨状に目を見開いて確認するように周りを見ると。

「って、あっちこち火が上がってるよ!怪我人も!消化象と回復薬・・・」

 サーシャはそう言うとバタバタと無限収納から鼻から水を出す象を出し、怪我人に回復薬を使って回復させていった。
 回復した兵士達が協力して怪我人を一箇所に集めたために、回復速度はドンドン上がり、あっと言う間に兵士は回復していった。
 同時に消火用の象のゴーレムが消火し、建設用ゴーレムが街をドンドン復旧させていた。
 そんな中、公爵は驚きつつ街中を歩いて姿を現した。

「おい、先ほどは助かった。」

 ミーに公爵は声をかけた時、「あら貴方は部位欠損?」とサーシャが部位欠損回復薬をかけた。
 再生した腕を呆然と見ながら立ち尽くしていた。

「別に大丈夫です、マスターの安全確保のためですから。
 あら?動きませんね」

「何か失敗かな」

「いえ、ちゃんと腕も生えてますし、驚く事が他にあったのでしょう」

「そっか、ひょっとしたら疲れてるのかもね」

「はい、では行きましょう」

「あ、街をゴーレムが修復したらゴーレムは勝手に帰るからそのままにしておいてね」

 サーシャがそう言い、周りの兵士が手を上げて了解の意を表すと、二人は手を繋いで街の外へと出て行った。

「女神みたいな方だったな」

「ああ、あれは女神と戦乙女だな・・・」

 こうして公爵領では、メイドの戦乙女と、小さい聖女の伝説が広まっていった。


引きこもり140日目

 サーシャは製作中の薬の材料の最後の一個が集まらなくて悩んでいた。
 その材料はめったに存在せず、栽培も出来ないといわれる素材。
 勿論簡単に見つかるはずも無く、ゴーレムだけでは手が足りないため自分でも色々と足を運んだが、未だに見つからず、根も尽きて昨日一日ベッドに潜り込んでいた。

「今日は捜しに行かないとなぁ」

 だるそうに声をあげ、もそもそと支度を始めた。
 そんな時に外から殿下の声が聞こえたので、気分転換に自分で出てみた。

「こんにちは、今日はこれを差し上げたくて」

 殿下はそう言うと、ニッコリと笑って差し出したバスケットの中には紅白の美しい花が咲き乱れていた。
 サーシャは震える手でそれを受け取った。

「え、で、殿下これ?どこで?」

 驚愕に唇を震わせ殿下の肩を掴んでグイッと顔を近づけさせる。
 サーシャの顔が息がかかるほど近づいて、殿下は胸の鼓動が早くなるのを感じ、キラキラ光るサーシャの目に引き込まれていた。

「え、えっと、え、あの・・・前に狩りに出かけた時、綺麗だったので株ごととって来て栽培したんですが・・・まずかったですか?」

「素晴らしいです!これ私が探していた素材です!ありがとうございました」

 そう言ってサーシャは抱きついて喜びを表すと、殿下は顔を赤くして固まってしまう。
 サーシャの熱弁も耳に入らず、ボーっとしてサーシャにされるがままになっていた。

「早速作ってくるね、出来たら見せに行きますね」

 まるで大輪の花が咲いたような笑顔を浮かべ、サーシャは森へと消えていった。

「・・・父上の教えは本当だった・・・花で落ちない女性は居ない・・・」

 殿下はとても嬉しそうに飛び跳ねると、待たせてあった馬車に乗り込み、今日の出来事は絶対忘れないようにしようと心に誓ったのだった。


その頃サーシャは

「あ、ミーに悪いことしたかな?ま、ハグぐらい良いかな?」
 
 殿下が聞いたら泣き崩れそうな事を言っていた。

引きこもり141日目

 王城に殿下を訪ねたサーシャは王族のプライベートルームに通された。

「ようこそいらっしゃいました」

 満面の笑顔でサーシャを殿下が迎え入れた。
 奥では王妃は紅茶を優雅に飲んでおり、国王はノンビリと本を読んでいた。

「こんにちは、殿下のお陰で薬が完成したよ」

「へぇ、綺麗ですね」

 サーシャが差し出した水薬はピンク色をしてとても綺麗だった。

「おいしそうな色よね」

 何時の間にか側にやってきた王妃も興味津々で薬を見て、日に透かして見てみた。

「早速飲んでみようと思うんだけどいいかな?」

「どうぞ、僕も興味がありますし」

「効果は見て解るのかしら?」

 二人の問いに、ニッコリ笑って、

「勿論解りますよ」

 そう言って一気に飲み干すと、サーシャの身体が光って三人は思わず目をつぶり、次に目を開けた時には、14~15歳ぐらいになったサーシャが立っていた。

「え?え?なんで?どうして?」

「まぁ、かわいいわ~」

 困惑する殿下を突き飛ばして、王妃がサーシャを抱きしめ頬ずりをして、サーシャはあまりの事に声が出ない。
 サーシャが青い顔をし始めた時、国王が声をかけた。

「苦しそうな顔をしている、少し離して上げなさい」

「あ、ごめんなさい、でもこれってどういう事なの?」

 王妃の疑問にサーシャは少し暗い顔をして

「アントニオとの結婚もそうだけど、今となってはあんまりいい思い出ではないし、そう悩んでいた時に若返りの薬を知ったの。それを調整して3年若返る薬にしたの。」

「「若返り!!」」

 国王と王妃は声を揃えて驚き、殿下はまだ目を回していた。

「うん、原液は一回しか効果が無いけど、これだと何回か使えるし、記憶を失うリスクも無いのよね」

 サーシャの言葉に、国王も王妃は目を輝かせて。

「私も欲しい!出来れば19歳ぐらいに戻りたいわ」

「わしは21ぐらいが良い!」

「えっと、材料が貴重で、もう無いんだよね」

「集めさせる!」

「そうよ!だからお願い」

 二人の気迫に怯えたサーシャは渋々了解し、材料を伝えると国王は猛スピードで部屋を出て行った。

「楽しみだわ~」

 王妃は嬉しそうに声を上げると、サーシャを連れてお茶を飲み始めた。

「殿下倒れたままですけど・・・」

 殿下に気がついたサーシャが声をかけるが、王妃は

「あら?セドリック起きなさい、お茶にするわよ」

「は!夢・・・じゃない!」

 殿下は起き上がると慌ててイスに座り、サーシャが若返った理由とかを聞きながら、アントニオに対する怒りを募らせていた。
 だが、若返ったサーシャはより殿下好みになったのは秘密だったりする。

 それから暫く後、若返った国王と王妃の話が国中に広がったのは当然の話。
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