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引きこもり90日目~91日目

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引きこもり90日目

「以上がフェド領軍の侵入による被害と我が町人からの陳情書になります」

 フランソワから手渡された書類の山を見て、口元を引きつるのが隠せない国王・・・大臣達は息を殺して下を向いていた。

「グリーンウッド領の村にも進入略奪を繰り返し、怪我人が100人以上、捕らえた兵はアロエル平原を不正に強奪した報復だと・・・はぁ」

 国王は肘置きに体を投げ出して背中を伸ばしたい衝動にかられながら、我慢をして

「この小競り合いに国軍は出せぬが、グリーンウッド領から討伐、フェド領の領都以外は切り取り自由と言うことで、うん、そうしよう」

 若い貴族の一人が意を決したように国王に

「陛下、今回の件はフェド領の収入が減り民が困窮したために起こった事です。
アロエル平原をフェドにお戻しになれば、このような事は起こりますまい。
第一平民などグリーンウッド卿の回復薬でいくらでも治りましょう、ダメージが無いのと同じです」

 会心の奏上と下げた顔はニヤリト笑っていた、だが、下げていたため、憤怒の形相の国王の顔が見えれず、各大臣はあちゃ~っといった顔をして対応に困っていた。

「そうか、ではお前はわしが悪いと言うわけじゃな?
 民は国の宝である、お前は貴族であるのだから身を持って守るがよい」

 男は顔を上げて国王を見ると、とんでもない顔が見えた。

「へ、陛下ではなく、グリーンウッドが悪いわけで・・・いや・・・あの・・・お許しを・・・」

 震えながら必死に言葉をつむぐが国王が右手を上げると男は縛り上げられて謁見の間から連れ去られ、姿が消えたとたん。

「年に数人ああいった手合いがおるが・・・なんでピンポイントでこの時期に出るのかのう?」

 そう言って背もたれに身体をあずけると、若い貴族を見て

「新人貴族院達よ確りと学ぶのだぞ」
 
 と告げると、書類にサインをしてフランソワに渡した。
 書類には「フェド領に関しては切り取り自由、それを認める」と書かれていた。

「よろしいのですか?」

 フランソワの質問にだるそうに

「あ~わしの決定に従えぬ上に、しょぼい略奪しか出来ぬ輩だ領都以外を征服して干上がらせてしまえ。
ついでにグリーンウッド卿にわしの武器楽しみにしていると伝えてくれ」

 こうして、グリーンウッドVSフェドの対決が決まったのだった。


一方その頃

 そんな事になっているとは露ほども知らないサーシャは機嫌よく自分用の魔法の杖を作成していた。

「マスターご機嫌ですね」

 今にも鼻歌を歌い出しそうなサーシャにミーが問いかけると

「そうなのよ、無限収納と魔石の技術の応用で杖の中で薬の調合が可能になったの」

「それは凄いですね、最近は領内も物騒だと言いますし」

 サーシャは首を傾げると「そうなの?」と聞き返した。

「はい、フランソワさんが対応しているので特に問題が無いらしいのですが、盗賊の様なモノがチョクチョク出ているそうです」

「え~なにそれ?怖いね・・・あ、領内の警備用ゴーレムでも作れば治安も上がるよね?」

「ああ、それは良い考えですね。
 急務の時は私が指示出せますし、簡単な治療も出来るようにしておけば災害にも使えますね」

 そう言ってワクワクとゴーレムの設計を始めるサーシャ。
 ミーは「魔石が必要なら取ってきましょうか?」と聞く。

「そうね、上位機種用に幾つか作りたいからお願いしても良い?」

「勿論ですC~Bで探してきますね」

 サーシャは製作室に篭ると早速実験機の作成を始めた。
 ミーは久しぶりに深遠の森の中心部を目指して高速で移動していた。
 途中で出会ったモンスターをガントレッドを使い軽く殲滅して無限収納袋に回収しつつ中心部まであと少しの所で足を止めた。

「あれ?シルベルトさん?こんな所でどうしたんですか?」

 そこには巨大な鉢入りの木を抱えたシルベルトが歩いていた。

「これはミー様、今回執事としての試験を合格しましてな。
村を出るときに森に戻したワタクシの盆栽を取りに来た次第です」

「へ~これが盆栽なんですね」

 ミーは4メートルを超える巨大な木を見上げてひたすら感心して見る。

「これが一番大きな盆栽でして・・・たまに蜜が取れるのですよ」

 自慢げに木をさすると「ほらここに」と言って指を刺してミーに見せる

「これ・・・月光樹では?」

「さて、ワタクシには解らないですな、サーシャ様にまたお時間が有る時にでも、お聞きできたらいいのですが」

「また機会がありますよ」

 そう言って二人は別々に移動し始める。
 ミーはシルベルトの変わりように、フランソワの教育の凄さを感じたのは秘密の話。

「ここらへんで良いかな?」

 そう言うと無限鞄から、サーシャ特製の結界石を置いて発動させると半円状に広い空間を結界で覆うことが出来た。

 そこを中心に夕方までモンスターを狩って行くと大型モンスターのコアも7個ほど集まっていた。
 採取用のゴーレムに結界内で解体をしてもらい、ドンドン素材をゴーレムの口に納めていき、帰る時間になったので、走って新緑の森の館に帰ってきた。

「おつかれさま」

 玄関を開けるとサーシャが出来上がったばっかりの警備用ゴーレムの調整をしていた。

「これから外に出すんですか?」

「新しい能力を試したくて」

 新しい能力に興味が出たミーは「私が引率します」と手を上げて飛び跳ねた。

「じゃあ、お願いね」

 ミーは新型の警備用ゴーレムの説明を受けてアロエル草原(アロエル平原にある薬草の群生地帯)にやって来た。

 ついでにと、薬草を数種類摘みながら、肥料をまいたりして育成を助ける作業を行っていると、五人の皮鎧を着た男達がやってきた。

「おいおい!ここは俺達の縄張りだ、出ていきな!」

「もっとも、生きて出て行けたらな!!」

 いきなり男の一人が剣を引き抜き切りかかって来た。
 警備用ゴーレムは素早く口から捕縛ネットを吐き出すと、右手に付けられた穴にネットの端を繋げると電気が流れ五人は動かなくなった。
 その後動けない五人の武装を解除すると、鋼糸であまれたロープで逃げれないように縛り上げる。
 後は口から出した「私達は盗賊です、つかまっちゃった」と書かれた看板を取り付けると邪魔にならない所に移動して、ミーの傍に戻ってきた。

「凄いね、えらいえらい」

 そう言ってゴーレムの頭をなでると、ゴミを見るような目で盗賊を見下ろして。
 頬を張り起こそうとするが、気絶して意識が戻らない。

「まぁ、良いか。
出来れば牢屋に運んでもらえたら良いですね。」

 「マスターの事だから装備や他の機能も有るんでしょうね」と心で思いながら、盗賊の武器を確認していくと、羽が交差した紋章に気がついた。

「これは、どこかの家紋ですかね?後でフランソワさんに持って行きましょうか?」

 五人の剣の内三本に羽根が交差した紋章、残り二本には紋章は付いていなかった。
 皮鎧は何処にでもあるもので、後はめぼしいものは無かった。

 日が昇り始めた頃、ミーとゴーレムが帰宅して家の用事を済ませていると、寝室からキャミソールを着たサーシャがアクビ交じりに出てきた。

「お帰り~結果はどうだった?」

「そうですね、スタンネットは使い心地が良さそうでした、単一ようのスタンロッドも耐久力、威力共に問題無いかと。」

「そう、良かった」

 ゴーーレムの背中を開けて内部のチェックをしながら、どこかホッとしたような声を上げる。

「出来ればなのですが、盗賊を牢に移動出来ればさらに良いかと」

「そうだね・・・よし、フランソワに収監施設を立てて良い場所を聞いてそこと繋げて放り込めるようにしたほうが良いね」

「では、盗賊を連行するついでに、丁度良い場所を聞いてきますね」

「少し休んだら良いのに」

 「大丈夫ですよ」と微笑んでハラギリンの町に向かって駆け出していった。
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