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引きこもり80日目~83日目

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 引きこもり80日目

 バタバタとした坑道崩落事件も収束を見せ、サーシャは二人に御褒美として何か武器でも送ろうかと考えていた。

「ミーはどんな武器を使いたい?」

「え?武器ですか?」

 少し戸惑ったようにすると、指を顎にあて「う~ん」と悩み

「手甲に爪がついてるつ使いやすいですね」

 そうか、ホワイトサーベルタイガーのコアを使っているから、闘い方も近いのかもしれない。

「フランソワはムチよね?」

「あ、短剣も得意ですよ」

「そうなんだ・・・」

 サーシャはそう呟くとブツブツと呟きながら、制作室に入っていく。

「マスターは暫く製作室におこもりですね」

 その背中を見送りながらミーは家の掃除を始めた。
 穏やかな何時もの日常、そしておだやかな時間を突如壊す存在が現れたのは日も傾き始めた夕方の事だった。

 結界に向けて放たれる爆発魔法、もっともその程度では傷一つつかないが・・・

「マスターに何か御用でしょうか」

 粉塵の中からミーが現れると、「アイスニードル!!」女性の魔術師が放った氷の矢が飛来して来た。
 ”ガシャン”突如甲高い音を立てて氷の矢が砕け散り、夏の夕日を反射してキラキラと美しい光景を作り出す。

「敵対・・・と言うことでよろしいでしょうか?」

 冷たい目を魔術師を中心とした団体に向けると、辺りに緊張が満ちた。

「当然であろう!俺の願いを聞かないから仕方ないのだ!
お陰で王宮でお尻を百回も叩かれたのだ!!
ビアンカやれ!!」

「はいはい、アイズボム」

 ビアンカが魔力を込めた言葉で氷の玉を4つ浮かべるとミーに打ち込んでいくが、素早くステップを踏んで交わすと、控えていた兵士達がミーに殺到する。

 少し前に出ていた男の頭を掴むと、いまだに浮いている氷の玉にぶつけ爆発を起こさせると男は小さな悲鳴を上げて気絶した。
 その光景に呆然として、動きが止まった男達をのこり三つの玉に男達を次々にぶつけて行く。

「で?悪さをしたらオシオキされるのが当然では?」

「ば、化け物」

 悠然と歩いてくるミーに恐怖を覚えたのかビアンカは背を向けて逃げ出す。
 それに吊られるように男達が逃げ始め、後にはおろおろするレオンハルトが取り残されていた。

「さて・・・悪戯者にはオシオキが必要ですね・・・」

 腰を抜かしたレオンハルトを見下ろすとニッコリ笑った。

「ひぃ、そ、そうだ僕に仕えろ!これは命令だ、サーシャより高い金を払おう!どうだ?
僕の、愛人にもしてやろう」

「はぁ子供が愛人などと・・・頭の痛いマセ餓鬼ですね、お断りです」

 そう言うと良い笑顔でレオンハルトの首を掴むと、猛スピードで王城へと走り去っていった。

 王城に着くとミーは事のあらましを警備兵に伝えたとたん、「私の権限を越えています」と言って奥に消えると直ぐに、貴族院の会議場に通された。
 会議場には10人ほどの貴族が頭を下げて待っていた。

「ミー殿、この度の件平に平にご容赦を・・・レオンハルトは出仕禁止及び、再教育を行いますのでグリーンウッド卿にはどうかどうか」

 必死に頭を下げる貴族達にミーは気絶したレオンハルトを渡し、ため息混じりに

「マスターは今の所ご存じないですが、魔法で森を攻撃した事実が消えるわけではない。
 作業室から出てこられたら直ぐ解ると思われますが」

「く、口ぞえをして頂けぬだろうか?」

「子供だからと、貴方達は甘すぎます。
子供で許される範囲を超えていると思われますが」

「解っておる、故に再教育を・・・」

 なおも言いすがってくる貴族に呆れつつ

「口添えはいたしません」

 そう言って背を向けて室内から出て行く瞬間

「次は無いですよ」

 その言葉が室内に重くのしかかった。
 貴族院としても王国全体的に見てもサーシャは最重要人物と言えた。
 貴族院の判断は、レオンハルトの出仕禁止、再教育以外にも何か・・・国王への報告し、フェド子爵領の一部譲渡での解決をはかる事とした。


 謁見の間に貴族院の10人が口々に報告を上げると、国王は痛む頭を押さえながら

「で?今回の件をそれで解決したいと?」

「はい、ハラギリン領に隣接するフェド子爵領の一部割譲で」

「あ~グリーンウッド卿は領地に欲は無いだろう、しかしレオンハルトのしでかした事をそのままにも出来ぬか・・・」

 悩むように腕を組み目を閉じる国王、その判断を緊張の面持ちで見つめる面々

「よかろう、フェド子爵領にある、アロエル草原を割譲しレオンハルトは出仕禁止、財務官僚の役職を解く事にしよう」

「な!アロエルはフェドの一番の収入源である薬草の群生地、出来ればバイパーフォレストの割譲では無理でしょうか?」

 フェド子爵領の収入のほとんどを担っている草原の割譲を聞いて流石にと声を上げる貴族院に国王は

「それでは罰になるまい?バイパーフォレストなど特産品も無く蛇型魔物の生息地ではないか?
何を甘い事を。
 貴族院が責任を持ってフェド子爵領を支えよそれが、おぬし達の罰にもなろう」

 思わぬ重い判決に絶句する貴族院達を無視して、国土大臣に指示を出し、あっと言う間に判決が決まった。

 こうしてサーシャの知らない間に領地が増え、これを期に王国地図上でもハラギリン、アロエルの範囲の名称がグリーウッド領に統一されたのだった。


引きこもり83日目

 サーシャは王宮からの呼び出しに渋々応じ、ミーとフランソワを連れて王城へとやって来た。

「サーシャ殿この度のレオンハルト・フェドの無礼申し訳ない」

 謁見の間に入るなり国王が頭を下げる。
 その光景に各大臣、貴族院達は硬直するが、フランソワが素早く反応し

「国王陛下が頭を下げられているのに、貴族管理の役目を背負った貴族院の方々は下げる頭がないと?
 自分のプライドが大切と仰っているようですわね」

 そう、嫌味を言うと、はっとした各大臣達が「申し訳ない」と追従、貴族院達は顔を赤くして

「たかが準男爵家の6女ごときが偉そうに!」

「書類仕事以外役に立たぬ分際で」

 と口々にフランソワに文句を言い上げるが気にした風も無く無視をする。

「静まれ!貴族院達よ、フランソワも言い過ぎかも知れぬが、おぬし達は頭を垂れる側であろう」

「は、はい」

「森を魔法で攻撃されたと聞く、状態は如何だ?」

 貴族院達が頭を下げようと動くが、それを無視する形で国王が問いかけると、サーシャはニコリと笑って

「今は自然再生機能付きゴーレムが結界外の修復してるわ。
 このまま行けば今日の夕方には終るでしょう」

「流石としか言いようがないな、今回のお詫びと言っては何だが、レオンハルトの家の領地のアロエル平原をハラギリン領及び新緑の森を組み入れて、グリーウッド領とした。
 ついでに貴族院10名の首を切ることにした、それで許してやってくれ」

 さらりと、今決めた貴族院の首を追加で宣言すると驚き固まる貴族院を無視して話が進んでいく

「え?あの薬草の群生地、やった~ありがとうございます」

「ははは、また何か新しい薬が出来たら教えてくれ」

「へ、陛下お待ちを」

「そうだ、ついでに何か役職をせぬか?」

「いや~、あんまり人前に出るの苦手だから・・・」

「陛下?」

「そうか仕方ないな」

 完全に無視されて泣きそうな元貴族院をほったまま話は続き

「ここで家の二人にアイテム上げても良いですか?」

「おお、どのような物だ?」

 ポケットからルビーとオリハルコンで作られた指輪と、サファイアとオリハルコンで作られたブレスレットを取り出し

「この指輪はフランソワに、魔力を通すとオリハルコンのムチにさらに短剣をイメージすると短剣になるマジックアイテムなの」

「なんと!伝説の金属で作った武器か!凄いな!わしもほしい」

 素直に欲しがる国王にサーシャは突き放すように

「え?だってあの剣上げたじゃん」

「あれ国宝だよ、普段身を守るのに欲しいな」

 ため息をつくと「今度作った時にでも」と答えると国王は嬉しそうに頷いた。

「コッチがミーに魔力を多めに流すと両手両足に甲が付いて爪の出し入れも出来るよ」

「ありがたき幸せ」

「大事に致しますわ」

 二人は嬉しそうに何度も頷き感謝を口にすると、忠誠を誓う片膝を付く姿勢になった。

「めでたいのう、国王リック・ロッケンハイム・ヴ・マルシェの名においてフランソワ・ド・サド、ミーの両名をサーシャ・グリーンウッドの騎士とし、祝福しよう」

 その言葉を持って大臣達が拍手をし、この瞬間二人はサーシャの騎士となったのだった。
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