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引きこもり65日目~70日目

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 引きこもり65日目

 その日の深夜折角の成果を陛下に没収され、ふてくされて帰ってきたサーシャはお風呂もそこそこにベッドに飛び込むと久しぶりの睡眠のため深い眠りに付いた。

「ハロー君が赤の写本の持ち主だね?」

「え?ここ何処?貴方誰?」

 サーシャの目の前に月の様に輝く銀髪の色が白い男性とも女性とも解らない人が立っていた。

「ああ、初めての人は戸惑うよね?ここは知識の間、僕はこの世界を創造した創造神、赤の写本の先を行くものよ、ここにたどり着けた事を誇るがよい」

 そう芝居がかった様に礼をとり微笑んだ。

「は?・・・なんで私ここにいるの?」

「ふ、そこから説明が要るのか・・・」
 
 そう言うと創造神は説明を始めた、赤の写本とは知識の間にアクセスする事が出来るエメラルドタブレットを使用する資格が有る者を選別するための物であり、サーシャが今回作った剣は、先代、先々代を超える出来であったので、ご褒美にこの空間に呼ばれたらしい。

 この世界には伝説の武具が4つある、内二つがマルシェ王国にあり、一振りが炎の聖剣レイバティン
初代国王がドラゴン討伐のために製作、使用した事から炎龍帝の贈り名がされたと言う、先々代。

 もう一振りがマルシェ王国の中興の祖聖王ソーマが持っていたと言われる癒しの聖剣、持ち主を常に癒し半径50メートル内の悪意が無い者を回復させる聖剣、こちらが先代。

 因みに他の二振りはソーマ王が失敗作を他国、その時は属国の王の独立祝いに送ったものだそうだ。
 結局二人は王族と言うこともあり、政務が忙しくてエメラルドタブレットを使う前にお亡くなりになったんだよね

 そう説明して、サーシャの手を握ると

「その点君は研究職だし、この世界の停滞を変えてくれそうじゃないか!
それにいきなりあんな性能の剣を開発するなんて素敵だよ」

 そう言ってサーシャの手にエメラルド色の石板を手渡すと
 
「これがエメラルドタブレットだよ、後ご褒美にオリハルコンを収納箱に10tほど入れておいたから、是非!使っておくれ」

「ちょ・・・」

 声をかける前に一方的に空間共々消えてしまう。

「まって!」

 目が覚めるともう昼過ぎで、パジャマが汗でぴったりと張り付いていた。
 額の汗を軽く拭うと、軽くシャワーで汗を流しドキドキしながら作業部屋に向かった。

「う、そ」

 サーシャの作業部屋にはエメラルド色のタブレットがあり、あわてて調べた収納箱には間違いなくオリハルコンが10t入っていた。

「何も見てない何も見てない・・・」

 そう言ってキッチンに向かうと紅茶を入れて蒸らしている間にサラダと目玉焼きトーストを作って食事をゆっくりとって、ノンビリと昼の時間を取った。

「そうだわ、メイド、メイドがいれば食事も楽よね?」

 気になってついつい弄っていたエメラルドタブレットをなれたように上からスワイプして色々な情報を見ていくと、「これいいわね・・・」などと言って必要な情報を覚えていく。
もはやサーシャの頭の中には興味しか詰まっていないのだろう。
 どんどん必要なデータをピックアップして覚えていく、これは赤の写本の時に身につけた、調べ直しによる時間のロスを防ぐ技術だった。

 紅茶を片手にタブレットから目を離さず作業部屋に入っていく。
 研究者は結局知識欲求には勝てないのだろうか?

 その日から4日間研究室から出ることも無く閉じこもる日々が続くのだった。


一方その頃王城では


 王城では新たなる宝剣の誕生に沸き立ちお祭り騒ぎであった。
 軍務卿達はサーシャに兵の武具を作らせて、他国に攻め入るべきとの声も上がったが、内務卿達がそれをサーシャが嫌がり他国に渡る事のほうが問題だと反対した。
 言い合いが暫く続いたが、殿下が

「このようなめでたい日に、言い争いなどよろしくないですよ。
それに、サーシャさんの自由意志を尊重することで生まれたものです。
しかも、戦など国民に無理を強いる行為僕は嫌です」

 流石に次期国王にそう言われると軍務卿も頭を下げ言葉を取り下げた。

「軍務卿も国を思っての事でしょうが、僕の言葉を聞いてくださり感謝します」
 
 とフォローをすることも忘れていなかった。

「この度の宝剣誕生を祝うため、各国の国王を招き国を挙げて祭りをしようと思うがどうじゃ?」

「は、それはよろしいかと、めでたい事でございますし国を挙げて祝いましょう」

 財務大臣の承認を得た国王が祭りを行う宣言をすると、貴族達は祭りのために動き出した。


引きこもり69日目

 サーシャが作業部屋から出てくる時にもう一人白い髪の猫耳女性が出てきた。

「ミー朝ごはんをお願いね、私はお風呂に入ってくるから」

「かしこまりました、朝食は麺類とパン類どちらがよろしいですか?」

「う~んそうね、パンかな?」

 そう言って風呂に向かっていった。
 体と髪を洗って湯船につかると、ノンビリと手足をのばす。

「う~ん気持ちいい、しかしあのタブレットの知識凄いな~
でも私も負けてない。」

 湯船の中で軽く拳を握ると、新しいアイデアを考え始める。
 今回のメイドは上手くいった、タブレットの知識だと人間味の無いゴーレムだったが、記憶集積回路と感情回路をオリハルコンで書き込み、回路自体を縮小軽量化することに成功。
 ただし人間と同じ形状だと問題があると思い、ホワイトサーベルタイガーのコアを組み込み適応させた時あの耳と尻尾が生えてきた。

「あれにはビックリしたな~」

 湯船に口を沈めてブクブクと泡を立てながらボーっとする。
 確り温もってお風呂から上がると冷たいコーンスープとシーザーサラダ、フォカッチャが食卓に並んでいた。

「凄いじゃない」

「ありがとうございます、書棚の本を読んで覚えました。」

「うん、有能有能」

「美味しいわよ、ありがとう」

 そう言うと美味しそうにご飯をたいらげる、ミーがサーシャを寝室に追いやると、

「睡眠不足が続いているようです、暫くお休みください。」

「は~い、あ、そうだ、家の片付けと、ゴミを無限ゴミ箱に・・・後」

「了解しております、私の仕事はハウスキーピングとマスターの護衛ですから」

 そう言って微笑むミーに「後はお願いね」と言って布団に入ったのだった。



引きこもり70日目

 サーシャはふかふかで気持ちがいい物に包まれていることに気がつき目が覚めた。

「あれ?」

「おはようございますマスター」

 サーシャが顔を上げるとホワイトサーベルタイガーがミーの声で話しかけてきた。

「え?ミー?」

「はい、マスターの枕が合っていないようだったので、勝手ながら高さを合わせて枕になってみました」

 どこか誇らしげなミーの声に急激に覚醒すると

「いやいや、私そんな機能つけてないよね?」

「いえ、マスターはホワイトサーベルタイガーの魔石を適合されましたので、ホワイトサーベルタイガーには変幻出来ます」

「え~そうなの?・・・ま、いいか気持ちよかったし」

 そう言ってサーシャはミーの毛皮に顔をうずめると、もふもふを堪能して暫く過ごした。

 寝る前と印象が変わるほど綺麗になったリビングに入ると、あちらこちらを見て周り、ダイニングセットのイスに腰を下ろして、一息ついた。

「綺麗にしてくれてありがとう」

「はい、出来る範囲でいたしました」

「朝食は何にしようかしら?」

「朝食なのですが、少し変わったものを用意いたしました」

「変わったもの?」

「夕べカレーを作成しました」

「朝からカレー?」

「はい、書物の中に朝カレーなるものが有りました。
成分から脳の活性化によろしいかと愚考しました」

「そう、ありがとう」

 そう返事をして、今日はどうしようかな~とノンビリと明るい窓の外を見て考えていたのだった。
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