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引きこもり60日目裏~64日目

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 引きこもり60日目 フランソワの場合

 お嬢様が昔住んでいた村人達だと聞きました、しかも偽薬を作った上その罪をお嬢様に擦り付けようとしたと言います。

「鉱山奴隷村にすでに運び込んでおります」

「そう、五人組に分けて面談していきますわ、準備して」

「は!」

 鉱山の採掘は危険が伴うためこの国では五人組が基本となっている。

「では第一班から」

 最初に呼ばれたのは黙認した事による連帯責任のグループであった。
 男性3人女性2人で、女性はうな垂れて大人しくしていたが、男の方はかなり恨みがましい目をしていた。

「「さて、貴方達はこれから鉱山奴隷として働いてもらうのだけど、何か聞きたいことあるかしら?」」

「俺達は村長に逆らえなかっただけだ!!だから開放しろ」

 その刹那フランソワが手を素早く振るわれると共に声を上げた男は吹き飛んだ。
 ”パシパシ”と何時の間にか握った馬上ムチで空いた手を軽く叩きながら倒れた男を見下ろして

「汚い口を開くな、黙認したら同罪だと決まっているだろう、しかもサーシャ様のお名前を汚そうとするなどと・・・許されると思ったのか!この愚か者が!!」

「そりゃ、俺達も悪いとは思ったが、たかが浮気ぐらいで出て行くほうが悪いだろうが!
お前ら手伝え!この女をやっちまえばどうとでもなる!」

 痛みのためか、激高する男は再び立ち上がり、仲間の男に声をかけるとフランソワに掴みかかろうとする。
 フランソワはサーシャに見せた笑顔とは違う残酷な笑みを浮かべると、馬上ムチで声を上げた男を見せしめのように何度も打ち据える、
 それを見た男達は動くことが出来ず、女性は部屋の隅で怯えて震えていた。

「そうやって、女が何時でも弱いものだと思うのは愚か者の考えだ、ここでは貴様はただの蛆虫だ、何時ワタクシに踏み潰されるか怯えながら生きるしか出来ない存在なのだ!!」

 血塗れになり意識を失った男は地面に倒れ”ピクピク”と痙攣して動かなくなった。

「もう一度聞くわ、何か聞きたいことは?」

 革張りのイスに足を組んで座ったフランソワはもう一度同じ質問を繰り返す。

「あ、あの・・・息子はどうなるのでしょうか?」

 震えていた女性が手を挙げて質問をすると、妖艶に微笑んだフランソワが自分の顎に手を当てると

「いい質問ね」

 そう言うと手を上げ兵を呼ぶと倒れた男を運び出させて、質問した女性を目の前のイスに座らせた。
 怯えて落ちつかない女性を無視して話を続けていく。

「子供だけど、この領地では教育を受けてもらえるようにしているわ。
当然だけど貴方達の働きによって扱いが変わってくるわね、貴方達が面倒を見れるランクになれば一緒に暮らせるわね。」

「あ、あのランクって・・・」

「それね、鉱山奴隷にはG~Aまでのランクがあるのよ。
貴方達はGからね、鉱石の発掘速度と質によってランクが変わるわ。
後は」

 その瞬間物凄く残酷な顔を向けると

「それ以外に、貴方以外の奴隷の不正や馬鹿な企みを報告したら一気にランクが上がるわよ。
子供と暮らしたかったから早くランクBまで上がることね」

 そして、立ち上がると、周りの奴隷を見下ろして”コツコツ”と足音を立てるように歩き回ると、もう一人の女性の前に止まり。
 怯えた顔をさらに怯えさせて震える女性の頬を優しく触れて。

「ランクが上がれば生活も良くなる、それに女性でも男を従えることが出来るのよ」

 再び立ち上がり、硬直する男性に近寄り

「貴様、名前は?」

「ド、ドナルドです・・・」

 直立不動で答えるドナルドの肩を軽く押すと。

「ドナルド、お前が今日からこいつらの班長だ。
 もし、この中の誰かがサボりや不正を行った場合・・・」

 ”ごくり”と四人が喉を鳴らす音が静かな部屋に響き、フランソワは残酷な笑みを浮かべ

「全員の指を小指から一本ずつ貰っていく、それは子供にも適用だ」

 四人は震えながら「悪魔の契約書」と呼ばれる魔道具に血をたらして、今内容を認めたとさせられた、当然倒れた男は無理やり契約させられた。

 こうして5組の村人と同じように契約し、最後に村長親子とアントニオ、取り巻き2人の5人組がやって来た。

「何よ、女じゃない、私が鉱山なんてごめんよ。
村人がやってくれるでしょ?私達は免除よね?」

 そういった瞬間濃密な殺気が部屋に満ちた。
 ラフレシアは恐怖から呼吸も忘れ、青い顔をしてパクパクと口を動かすのが精一杯だった。
 そして、盛大に洩らした汚物の海に沈んだ。

「村長は娘の育て方間違ったみたいね。
貴方達はGの下、元来無い貴方達だけのランクZにするわね」

「Zランクって・・・」
 
 絶望するように呟いたのはアントニオだった。

「蛆虫以下には家も与えない、せいぜい頑張る事ね」

「い、嫌だ!助けてくれ!!俺達は村長たちに従っただけだし、今回もあの我侭娘が勝手に言ったことじゃないか!」

 取り巻きの一人が声を上げ転がるようにフランソワに近づくと、地面に頭をこすりつけ

「助けてくれ、娘が・・・娘が居るんだ、なんでもする、だから、だから」

「俺もだ、なんでもする、たのむゴア」

 最後に頭を下げた男の後頭部を思い切り踏みつけると、最初の男に優しく声をかけた。

「貴方良いわね、その必死さ・・・」

 邪笑と言えるほど恐ろしい笑みを浮かべると

「貴方はこいつと二人で組を作りなさい、Gからスタートね、補充が来たら真っ先に回すわ」

「はい!はい!」

 何度も頷き涙を流して感謝を述べるが

「でも、貴方が水をビンにつめて売った事は消えないわ」

「はい・・・ここで後悔して反省するのね」 

 そう言ってフランソワは部屋を出て行った、扉を閉めた後聞こえてきた村長の怒号と取り巻きの罵声を聞きながら意地の悪い笑みを浮かべてその場を去っていった。


引きこもり61日目

 サーシャは久々にノンビリと畑仕事をして回復薬を生成する作業に没頭していた。
 
「はぁ、回復薬とホワイトソースを作っている時だけはボーっとできるから良いわ~」

 最近自分は働きすぎな気がする・・・人に会いたくないと思ってるのになぁ。
 そう思うとまたため息が出てしまう。
 完成した回復薬をビンに詰めると、鍋を洗ってもう一度作り始める。

「なんだか嫌な予感がするのよね~」

 今日は訪ねてくるものも居ないし、穏やかなのにと窓の外を覗くが何も無い。
 雨もやみ、無事少し短い梅雨も明けて穏やかな夕日が美しい光景だった。
 
 その日の夕食後何となく素材箱の鉱石を整理していると、意外とレアメタルが増えていることに気がついた。
「あの辺り陛下が言ったように、レアメタル多いんだ・・・」

 ミスリルがかなりの量有ったから、明日は武器でも作ろうかな?考えていたら楽しくなって色々設計を始めてしまい、気がついたら夜が明けていた。

 多めにサンドイッチを作り、鍛冶場に閉じこもることにした。
 ミスリルと鋼の合金を使って魔剣を作り始めると、思った以上にエンチャントとの親和性が高くて思った通りの物がドンドン出来ていく。
 村ではエンチャントとの親和性が高いのが銅だったのだが、それとは比べ物にならない親和性のお陰で調子に乗り始める。

「最後だし、魔石もふんだんに使って最大級のものを作ってみようかな?」

 この判断が後に大事になるのだが、今のサーシャにはわからない事だった。
 今までのは鋼にミスリルで魔力回路を書き込む方法を取っていたが、芯にミスリルと魔石を砕いた物を使って魔力電池を作り、その外側に鋼とミスリルで魔力回路を書き、一番外側にはあの赤い本から解読した神話文字を書き込んだ外皮を作って一振りの刃を完成、鍔にはルビーと赤い魔石を融合させて飾りをつけ、柄には融合魔石をあしらって、作成を始めて3日目遂に完成を見た。

 サーシャは機嫌が良くなり、誰かに見せたくなって王城へ転移すると殿下を探して城内を歩いていたら、国王が声をかけてきた。

「サーシャ殿久しぶりじゃな、今日はどうしたのだ?」

「あ、陛下、実は気に入った武器が出来たので、殿下に見ていただきたいなと思いまして・・・」

 上がっていたテンションが少し下がったのか、駄目だよな~と思い始めたサーシャだったが。

「なに?新作か!どれわしに見せてもらえぬか?」

 興奮した国王はワクワクとした顔でサーシャを見てきた。

「ええ、こちらです」

「何だ?濃密な魔力?少し違うような」

 国王が戸惑っているとサーシャが剣を抜いて刃先を上に向けると、魔力を流し始める。

「この神話文字が絶対断絶と五色魔法でどの属性にも対応しています、そして刃の中に仕込んだ魔力回路が体力の自動回復を付与してくれます、そして鍔にある魔石を利用して防御結界を広範囲に張ることが出来ます。
 そしてここがこの剣のポイントで柄の魔石を利用して作った回路で、大気の魔力を吸収して永久的に機能が停止する事が無いんですよ」

 自慢げに胸を張るサーシャを驚きの目で見る国王が、恐る恐る

「サーシャ殿?これ国宝級超えてるよ・・・これまずいよね?」

「へ?・・・えへ」

 ごまかすように笑顔を浮かべるも

「出来れば王宮に納めて欲しいんだけど・・・」

「で、ですよね~」

 こうして王国に新たな国宝が加わった、世間的には王国最高の錬金術師が国王のために作り上げた最高作品であり、忠誠の証であるとして、大々的に発表を行ったのであった。

 こうしてサーシャ・グリンーウッドの名声は国中に広がったのであった。
 
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