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引きこもり開始

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 桜が散る村の広場でサーシャは夫と村長の娘ラフレシアがキスをしている所を見てしまった。
 村長は娘を可愛がっており、我侭を聞かなかった村人を追放したりしていたため、村人は恐れていた。
 しかし、夫は喜んでいるようでニヤニヤと笑いながらイチャついているのも止めとなり、サーシャの中で夫への信頼がガラガラと崩れていった。

「なんだ見てたのか?こう言う訳だから別れてくれないか?」

 こちらに気が付いた夫がそう言ってきたのが引き金となりサーシャは家に駆け戻り、父親から譲り受けたマジックバックに自分の荷物を詰め込むと村を出て行った。

 サーシャと夫のアントニオは村で薬師を営んでいた、サーシャが採取と調薬を行い、アントニオが販売をする。
 その薬の効果は近隣でも有名なほど効果があり、その収入はかなりのものであった。
 その結果夫は、薬がないと儲けが無いということを忘れていた、ラフレシアはアントニオの蓄えが目当てでありこの二人の未来には暗雲が垂れ込めているとしか言えない状況であった。

「はぁ、勢いで出てきたけど・・・ここ何処よ?」

 サーシャは村からかなり離れた森の中に居た。
 日も暮れ始めたために、さっと薪を集め、その半分を地面に書いた魔方陣の上に置くと、魔方陣に魔力を込めはじめる。
 そうすると、うっすらと光が出て、2LDKのログハウスが完成する。
 他の人間が見ると驚愕の光景だが、サーシャにとっては普通だった。
 
「さて、今日はここで寝るとして・・・うん、暫く人に会いたくないしここで暫く暮らそうかな?」

 そう言うと薪集めのついでに集めた木の実やキノコ、薬草を鞄から取り出して仕分けをする。
 今ある材料で今日の晩御飯を考えると、意外と色々出来ることに気が付く。

「思ったよりこの森は豊かみたいね、動物も楽しみだわ」

 魔法陣を使って机とイス、ベッドを作り魔法で明かりをともすと、さくっとご飯を食べて眠りに付いた。


 ~森へ引きこもり2日目~

 サーシャは日の出と共に起き出すと、残った薪で足りない家具を作り出し、作った風呂に魔法でお湯をためると、汗と共に疲れを確り洗い流しさっぱりした所で夕べの残りを食べ、森の探索に出かけた。

「ここは良い罠場になりそうね」

 そう言うと魔法陣を書いて落とし穴を造ると、今度は常備薬の材料を探しに木々の周りを調べまわる。
 お昼には果物を食べ、晩御飯の材料も探して回る。
 夕方に罠を調べに行くと、落とし穴に目を回したイノシシが罠にかかっていた。

「やったー!明日からお肉が食べれる♪」

 さっと止めを刺すと、マジックバックに収納して家に帰っていた。
 家の裏に解体部屋を作成して血抜き作業のために吊るしたあとは晩御飯の準備を始めた。
 晩御飯はキノコ鍋にし、明日の予定を立てていく、明日はイノシシの解体と調味料作りをしよう
 そう考えながら、調薬を始める。

 どれぐらい時間が経っただろう、サーシャは扉を叩く音で現実に引き戻された。

「誰だろう?こんな所で」

 覗き窓から覗くと、そこには血塗れの女性を背負った巨漢の傷だらけ戦士と、片腕をなくした剣士が立っていた。
 剣士の顔色も悪く、どう見ても急を要するのは見て取れた。

「大丈夫?中で話を聞くよ」

 サーシャが扉を開け中に招き入れると、中に入ったとたんへたり込み

「す、すまない、俺たちはBランクの冒険者”太陽の使者”リーダーのロココだ、コッチは重戦士のトラスだ
傷薬か何か無いかな?」

 片腕を失っても仲間を気にかけるロココに少し感動したサーシャは、作ったばかりの上級回復薬を振り掛けると女性の傷は綺麗に消えてなく経った。

「次は貴方ね」

 そう言うと、呆然としているロココの腕を魔方陣の上に乗せると固定し、回りに幾つかの薬草と、上級回復薬を乗せて魔力を流すうっすらと光が灯り

「うがぁぁぁぁ!」

 ロココの悲鳴と共に失われた腕が再生していた。

「な、なにを・・・」

「ロココ腕が」

 トラスの指摘にロココが失った腕を見るとそこにはちゃんと腕があった。

「貴方はこれを飲んでね」

 今までの光景を見ていたトラスは素直に回復薬を飲み干した。
 傷も綺麗に消えて、リビングに新たに作ったベッドに女性を寝かせると、自分の前にロココたちを座らせて、お茶を置くと「話を聞きましょうか」と声をかけた。

「先ずはお礼を言わせてくれ、君は俺たちの恩人だ」

「困った時はお互い様ですよ、あ、私はサーシャ、薬師よ」

「何があったかだが、俺たちは冒険者ギルドでこの深遠の森でデュラハンが出たのを調査する様に言われて来たんだ。
 最初は一匹だけだったから良かったんだが、変異種が現れて一気に押されて、ビアンカが吹っ飛ばされ魔法が使えなくなって一気に押し込まれて、このざまだ」

「おかげで武具は使えなくなった」

 トラスが机に乗せた盾は中ほどからばっさり切れていた。

「うわ~これはやばいね・・・うん、彼女は私が見ておくから、あなたたちはもう寝なさい」

 二人はサーシャに礼を言うと用意されたベッドに潜り込むと直ぐに寝息を立て始めた。

「引きこもるはずなんだけど・・・今日だけよね?」

 そう言うと、外された武具の修理を始めた。
 
 先ず手に取ったのは中ほどから折れたロングソード、それに鍋用に取っておいた鉄鉱石を使って錬金で修復すると、火炎瓶と融合して炎のロングソードを作った。

 盾は銅鉱石と鉄鉱石の合金に、リジェネートの魔法を組み合わせて回復の盾にして、皮鎧はそのまま修復するだけに留めておいた。

 杖は騒動で失われたらしく、無かったために薪と鞄にあった銀を使い魔力回路を書き加えて魔法の杖を作成した。

 武具を修復作成が終った頃、日が昇り始めたのでイスの背もたれで体を伸ばしつつ。

「う~ん、作った~そろそろ血抜きできてるかな?」

 サーシャは音を立てないように解体場に行って部位別に解体していき、マジックバックにしまうと、お風呂を沸かして台所で朝食の準備を始めた。


~引きこもり3日目~

 今日はお客さんも居るし、血の補充もいるか~と嘆きながらもイノシシのイチボステーキと薬草を使ったフルーツサラダと焼きたてパンにして、まだ寝てる冒険者を起こしに向かった。

「あれ?ここどこ?」

 リビングに戻るとビアンカがベッドの上であたりをキョロキョロと辺りを見回していた。

「ここは私の家、貴方は血塗れでここに運ばれてきた、ここまではOK?」

「あ!皆は?」

 ため息をついて親指で反対側を指差すと

「あそこ、で今から起こしに行くのよ」

「そうなんだ、私もう少し寝てたいんだけど・・・」

「ご飯だから、それと、食べたら出てって」

 サーシャが明らかに不機嫌にそう言うと

「私けが人だよ?」

「怪我はもう治した、残りの二人もね、私は貴方に優しくする理由は無いの」

 そう言い放つと二人を起こしに行く、その背中に何か言葉を投げかけられたが無視をしてさっさと起こす。

「すまない、ビアンカは少し我侭な所が有って」

「気にしないわ、食べたら出て行って、武具は修復しておいたからそれは持っていって、死なれると寝覚めが悪いし、ここまでして死ぬのは勝手だしね」

 明らかに不機嫌なサーシャに男二人は恐縮していたが

「私の杖も作りなさいよ、偽善なんでしょ?」

 と言っていたが、腹が立ったので作った杖は鞄の中にしまってほっておいた。

「世話になった」

「このお礼は必ずさせてもらうよ」

「お礼は迷惑よ、もう来ないで」

「こんな所もう来ないわよ!」

 食後無理やり武具を渡すと家からさっさと追い出した。
 八つ当たりのように三人が使ったベッドとお風呂を分解して消滅させると、お風呂を作り直し一息つくと

「ホント迷惑、幻影結界でも張っとこうかしら?」

 そう言って結界に必要な魔石を取りに、モンスターを探しに森の奥に進んで行く事にした。
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