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冒険者編

アリアン冒険者に成る

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王都を発って12日目、ソクラティア地方の領都水の都アクアティアにアリアン一行が到着した。
 アクアティアはアクア湖に浮かぶ巨大な島に作られた天然の城砦であった。
 青く透き通った水面に映る白い壁、水面を滑る様に飛ぶ水鳥がアリアンを迎え入れるようで、かなり気持ち良く城門を潜り、街を回り公爵城に入って行った。

 アリアン達の馬車をニコヤカに出迎える太った男は、カールした鼻髭を撫でながら

「ようこそ、アリアン公爵閣下」

 そう言ってニヤリと笑い、手を差し伸べた。

「ご苦労、貴方は今日を持って首。横領した資金を返済し終わるまで奴隷落ちとする」

「な!何故です?私は今まで忠実にこのアクアリアンを運営してきました。
 何の落ち度も無いはずです」

 怒りに顔をゆがめ、声を荒げて唾を飛ばし、アリアンを怒鳴りつける。

「イーシス」

 アリアンの声に素早く反応し一歩前に出ると、厳しい口調で代官を指差し

「は!聞くがいい愚物が。先ず街を回ったが報告書に有ったスラムは存在しないと有ったが確実に存在していた。
 第二に陛下肝いりの下水工事完了と有ったが、何処にも存在しなかった。
 それだけでなく、住人に話を聞けば税率が7割と言っていた。報告書では4割・・・これはどういう事でしょうね?
 報告書の偽造は死刑、影の報告でも貴様らの不正の証拠は押さえている。
 戦闘員!捕えろ!!」

「イー!!」

 イーシスの号令の元、全身黒タイツの戦闘員が一斉に影より飛び出し、瞬く間に代官達を縛り上げていく。

「お、お許しを!!こ、心を入れ替えますので」

 必死に許しを願う代官を見下ろしにこやかな笑みを浮かべると

「ダメだよ、信賞必罰。俺は貴様を許さない」

 そう言ってニコリと笑った。

「くそ~!!」

 代官はうな垂れて引きずられて行く。

「さて、イーシス」

「は!」

「暫くは僕も書類仕事を頑張るけど、ある程度目処が立ったら冒険者登録をして冒険したいんだよね」

 気楽にアリアンが告げると、イーシスは厳しい顔をして頷き

「私が政務は補佐いたしましょう」

 そう言うとアリアンが指を軽く振って。

「実は騎士団で政務に長けた人を見つけたんだよ」

 ジリッと一歩後ろに下がり、ショックを表すと

「わ、私では力不足でしょうか?」

「違うよ、イーシスには騎士団を纏めてもらったり色々としてもらわないといけないでしょ?
 イーシスが右腕ならファーレンが左腕かな?」

 ファーレン・ド・パープリカ パープリカ男爵家の次女にして家族に疎まれた紫色の髪と目を持つ悪魔の子と呼ばれた女性。
 そして、アリアンが見出したその応用力は群を抜いていた。

「ファーレンですか?」

 イーシスが名を呼ぶと何処からとも無くメイド服の女性がイーシスの肩に頭を乗せた。

「ひぃ」

「お呼びですか~」

 思わず悲鳴を洩らすとイーシスは距離を取り剣を向ける。

「あらあら、酷いですね~やはり私は何処でも忌み子ですか~そうですか~」

 今にも呪われそうな瞳をイーシスに向けると、イーシスは腰を抜かし涙ながらにアリアンを見上げた。

「こらこら、ファーレンもイーシスも仲良くするんだよ。君たちがこれから我が領地を回していく中核なのだから」

「こ、こんなのと~」

「ひひひひ、よろしくお願いしますね~せんぷぁい~」

 死人のように白く冷たい顔をこすり付けられイーシスは気を失った。


数日後

 アリアンはアクアティアの冒険者ギルドにいた。
 
「僕、今日は如何したのかな?」

 入ってきたアリアンに気がついて駆け寄ってきたエルフの女性が身を屈めて目線をあわせた。

「冒険者登録をしに」

 アリアンの言葉に少し難色を示すが、イーシスからの紹介状を手渡すと、渋々といった様子で登録をするためにカウンターに連れて行ってくれた。

「新しい近衛騎士団長の紹介状があるから、登録しないわけにはいかないけど。
 あんまり危険なことをしちゃダメよ」

 そう言って心配そうに声をかけるエルフは名前をエスターと言い、アリアンの専属受付になると言う。

冒険者にはG~SSまでランクがあり、ランクに合わせて受けれる依頼が違い、ランクアップはランクに合った依頼の平均達成率と回数で決まるらしい。

 早速アリアンはスワン草採取の依頼を受けてアクアティア近郊の草原へとやってきていた。
 スワン草は前世でもよくお世話になった全てのポーションに必要な薬草で、スワン草の状態でポーションの等級が決まると言われるほど大切な物だった。
 アレルギー解消薬を作ろうと思っていたのでついでに受けた。

 前世で作ったレーダー魔法で次々にスワン草を集めて行っている時、レーダーに赤い点に追われた黄色い点が映った。

「助けておくか」

 そう言うと黄色い点を目指して飛翔魔法を岩にかけて飛んで行った。
 暫く飛んでいるとグラスウルフの群れに追いかけられている、ボロボロの装備の冒険者達を見つけた。
 冒険者達とグラスウルフの間に岩ごと降りると冒険者に向けて

「たすけがひつよう?」

 と問いかけた。

「あ、ああ、だが・・・」

 返事を聞いて即、岩に軽く手を添える。

「ロックニードル」

 無数の岩の針が次々にグラスウルフを貫いて行き、

「幼い君には危なすぎる」

 と言い終わる前に終ってしまった。
 呆然と消えた岩と倒れたグラスウルフの群れを見つめる冒険者達。
 アリアンはさっさとグラスウルフを無限収納に回収していった。

「大丈夫か?」

「あ、ああ・・・き、君は凄いんだな」

 少し離れた所で休憩セットを準備して皆で休憩を取った。

「俺はアリアン、G級冒険者だよ」

「おう、G級であの魔法は凄いな。
 俺達は冒険者チームのゴラス。
 リーダーのゴーギだ」

 ボロボロの皮鎧に中ほどから折れたロングソードを持った金髪を短く刈りそろえた男がそう言って手を差し伸べてきた。
 握手すると、薄ピンクの髪の女性が前に出て来てアリアンの手を握り

「私はラリー、エンチャンターよ
 よろしくね」

 そう言ってアリアンの小さい手に頬ずりしてきた。
「しょた?!」と心の中で引いたアリアンだった。

「俺はラバリゲ、スカウトだよ」

「オラはスーだす、マジックユーザーだぁ」

 ラバリゲは鋭い目つきで人の良さそうな笑みを浮かべて、アリアンは昔俺を騙した奴に似てるなと警戒心を強めた。

 スーは農村の出らしく、穏やかな顔の緑色の髪の少し日に焼けた健康的な少女だった。

「俺はもう少しスワン草を採取したら帰るから、ここでお別れだね」

 そう言って自分の休憩グッズを回収して行こうとするが、

「あんの、オラ出来れば送ってほすぃんだども・・・どんもみんな、弱っちまっで」

 アリアンは仕方がないとため息をつくと、ゴーギに非難の目を向けつつ

「仕方ない・・・帰るよ」

 そう言って手近な岩に座って岩を宙に浮かせて4人に同行してアクアティアに帰って行った。

「凄いよね、この魔法」

「そうかな?初級魔法のサイコキネシスだけど?」

「サ、サイコキネシスって伝説の無属性魔法じゃない!」

「伝説って、ただの無属性魔法だけど」

 そんな会話をラリーとしていると、ボロボロだったラリーの服がついに落ちた。

「きゃ!」

 慌てて座り込んでしまうラリーにため息をつきながら

「リペア」

 アリアンが手を突き出して落ちた服に魔法をかけると落ちたボロボロの服が綺麗に再生された。
 その服を身につけると新品同様でラリーは何度もお礼を言って、他の3人は羨ましそうに見ていた。
 
「直しても良いけど・・・」

 そう言って一瞬で直す。
 こうして、新しい知り合いも出来てアリアンの冒険者生活が始まった。

 
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