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冒険者の町
ケインとルーの出会い
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アルテミスが眠りに付いて2日目、ケインは冒険者ギルドでその日取ったモンスターの換金に来ていた。
「ケイン様、本日の換金分でございます」
「サンキュウ、マチェット達は未だか・・・」
そう言って辺りを見渡すと
「そうですね、未だ此方には来られていないですね」
名簿表を見ながら答えを返してくれるコスタリカに笑顔を向けると。
「今日の仕事もう直ぐ終る?
何時ものお礼に飯でも行かねぇ?」
「あら?軟派ですか?
今日は閉門までですから、お二人がお戻りになられなければお付き合いいたしましょうか?」
そう言って、チシャ猫の様に笑うコスタリカを見て慌てて
「あ!・・・一人で飯を食うのがあれで、いやお礼もほんとで」
ケインが慌ててフォローしようとして更にわけのわからない言葉を吐いてしまう。
「うふふ、解っていますよ。
今日もかなり頑張られたので、ご一緒しましょう」
「チェ、もてあそばれた・・・」
楽しそうに笑いあう二人を、数人の男性冒険者が血の涙を流さんばかりの目で見ていたのはまた別の話。
「あら?」
結局二人はその日帰ってこず、コスタリカに引きずられるようにギルドに併設された酒場に連行された。
「今日のおススメはケインさんが取ってきた、ホーンタウロスンのステーキとタウロスンシチューだな」
「じゃあ、両方お願いするよ、コスタリカさんは?」
「私はタウロスンシチューを」
ホーンタウロスンは牛が二足歩行になった150cmほどのモンスターであり、突進力がありゴブリン族に属される中では頭一つ上の攻撃力があり、中々出回らない一品だった。
「ケイン様に感謝しないとですね」
「いや~たまたまホーンタウロスンの巣を見つけたんで」
「繁殖力はゴブリンに劣っても、巣が出来ると男性獣人さんが攫われちゃいますから・・・」
注文の品が運ばれて来て肉にフォークを突き刺して、
「あれがこんなに美味くなるんだから世の中不思議だよな」
「ですね」
「あ、俺にはタメ口で良いよ。アルテミス様やマチェットの爺ちゃんは別だろうけど、歳もそんなに違わないだろう?」
そう言って笑うと、コスタリカもクスリと笑って
「ありがとう、でも私の方が年上かもよ?」
「なら、なおさらだよ」
「ちょっと、そこは否定してよね」
穏やかな空気で楽しそうに喋る二人を、鬼の形相で男性冒険者達が見ており、また、嫉妬に狂った表情でコスタリカを見つめていた。
「コスタリカさんと食事だけでも許せないのに・・・」
「ケインはモテるからな・・・」
「弟属性のケイン君に手を出したら殺してやる・・・」
「でも、あの破壊鎚のコスタリカだよ・・・」
そんな声がヒソヒソと聞こえる中、ボロボロの服を着た紫髪の少女が入ってきた。
「おまぇ、また来たのか!
金のねぇ奴に食わせ・・・グボ」
酒場の主人が少女の顔の間近まで顔を突き出し威嚇したが、何処からかハンマーを取り出したコスタリカに吹き飛ばされて壁際まで吹き飛んだ。
「ごめんなさいね、良かったら私達と一緒に食べない?
私がご馳走するわ。
ケイン君ごめんね、事後承諾だけどいいかしら?」
そう言って顔の前で手を合わせるコスタリカに
「良いよ。コスタリカさんが動かなければ俺が行ってたし、今日の飯は俺が出すから気にしなくていいよ」
頬をかきながらそう言うケインにクスリと笑って「だって、行こう」と少女の手を取って席に行く。
「ありがとう」
二人の前に座ると、小さくそう呟く少女を微笑ましそうに見つめる二人はさっさと注文をする。
ウェイターはのびたマスターを放置して料理を運んできてくれた。
「ごゆっくりどうぞ」
「あ、あのオブジェ倉庫にでも入れておいて」
「かしこまりました」
そう言ってウェイターはマスターの足を使い捨てのスライム手袋を2重にして掴んで、倉庫へ引きずっていった。
その間に少女はガツガツと食事を食べていた。
「で?お前孤児院に行かないのか?」
「わたし、獣人とエルフのハーフだから・・・」
この世界において獣人とエルフは不倶戴天の敵であり、無理やり以外子供は出来る事は無い。もしハーフが生まれても養えば両種族を敵に回すことになり、誰も受け入れなかった。
「そっか、じゃあ暫く俺のポーターをしてくれよ。
分け前もちゃんと出すし、仲間も多分良いと言うと思うけど、許可が出たら正式に雇うよ」
「いいの?わたしハーフだよ?」
「関係ねぇよ、アルテミス様もそう言うと思うし」
「そうですね・・・私からもお願いします」
「OK、俺はケイン」
「私はルー」
こうしてルーはケインと一緒に暫く依頼をこなす事になった。
獣人は力が強く、エルフは手先が器用で解体が得意。そんな両方の特性を持っていたルーは雑なケインより丁寧な仕事で、ケインに喜ばれていた。
ルーの告白
私はルー。おかあさんが死んで3年が経ったの。
おかあさんは獣人族の偉い人の娘だったらしいの、死ぬ前に言ってたの。
おかあさんは孤児院に行ってって言ってたけど、獣人とエルフのハーフの私は何処に行っても追い払われる事が続いて、オルフェの町に着いたの。
そして出会ったの。ハーフでも気にしないって言ってくれる人に。
その人はケインって言ったの。ケインのお部屋に泊めてもらって、次の日に一緒に狩りに出かけたの。
ケインの解体は適当すぎて驚くほど雑なの。
驚きすぎてわたしは思わずホーンタウロスンを奪い取ってしまったの。
「は~すげぇな、おれじゃ、関節外して引っこ抜くのがせいぜいだったぞ」
「ケインは適当すぎ・・・」
川の近くでわたしは陣取って、ケインが持ってきたモンスターを頑張って解体していったの。
その日わたしは7体解体出来たの、ケインはわたしの頭を乱暴になでてくれて
「ありがとよ」
って笑ってくれたの。
おかあさん以外初めて笑いかけてくれて、お礼言ってくれたの、なんだか幸せ。
その頃のソクナハ村
あちらこちらから煙が上がり、数人の男達の死体が所々に見える。
「貴様!何故あんなモンスターに手を出した!」
「は?大きい方が一回で済むだろう」
村長の家で村人達が避難する中、若い狩人に村長が詰め寄っていた。
「何をバカな!しかもしとめ損なって逃げ帰ってくるとは!何を考えている、な・に・を!」
「そりゃ、安全な所に逃げるだろう?それに村の壁が薄いのが悪い」
村長は頭を抱えると、外を指差して
「今すぐ!今すぐモンスターを外に誘導して来い!それが出来ないなら出て行け!その代わり迷惑料を確り払ってもらうからな、払えないなら奴隷に落としてやる!」
「はぁ?無理に決まってるだろう!ってかそんなルール聞いたことねぇし」
「お前の身分証に書き込んでやる!」
村人達が怒り、狩人を取り押さえて、村長が賞罰の所に現状を書き込むと簡易裁判の魔法陣が浮かび上がり、有罪が認められた。
しかし、村長とその息子と取り巻きも有罪になり、全員奴隷落ちになる。
「なぜだ!我らが何をしたと・・・」
”狩人マチェットに対するモンスターを使ったリンチ及び詐欺、元来マチェットが受け取るはずだった金銭の不正取得による刑罰。
また、その年数の長さ40年と長いため、一族郎党及びそのお金を使った者全てが連帯責任です”
「うそだろう!!!」
そう叫ぶと村長は両手を地面について呆然とした。
ショックのためか、一気に老け込む村長と、取り巻きに詰め寄られる息子。
狩人も呆然として動かなくなると、村人に無理やり外に出される。
この日レッサーインフェルノウルフは村を壊滅に追い込むまで暴れ回り、村長とその取り巻き達は当然として、数人の女性達をオルフェの町の奴隷商館に売り、村の建て直しを計るのだった。
「ケイン様、本日の換金分でございます」
「サンキュウ、マチェット達は未だか・・・」
そう言って辺りを見渡すと
「そうですね、未だ此方には来られていないですね」
名簿表を見ながら答えを返してくれるコスタリカに笑顔を向けると。
「今日の仕事もう直ぐ終る?
何時ものお礼に飯でも行かねぇ?」
「あら?軟派ですか?
今日は閉門までですから、お二人がお戻りになられなければお付き合いいたしましょうか?」
そう言って、チシャ猫の様に笑うコスタリカを見て慌てて
「あ!・・・一人で飯を食うのがあれで、いやお礼もほんとで」
ケインが慌ててフォローしようとして更にわけのわからない言葉を吐いてしまう。
「うふふ、解っていますよ。
今日もかなり頑張られたので、ご一緒しましょう」
「チェ、もてあそばれた・・・」
楽しそうに笑いあう二人を、数人の男性冒険者が血の涙を流さんばかりの目で見ていたのはまた別の話。
「あら?」
結局二人はその日帰ってこず、コスタリカに引きずられるようにギルドに併設された酒場に連行された。
「今日のおススメはケインさんが取ってきた、ホーンタウロスンのステーキとタウロスンシチューだな」
「じゃあ、両方お願いするよ、コスタリカさんは?」
「私はタウロスンシチューを」
ホーンタウロスンは牛が二足歩行になった150cmほどのモンスターであり、突進力がありゴブリン族に属される中では頭一つ上の攻撃力があり、中々出回らない一品だった。
「ケイン様に感謝しないとですね」
「いや~たまたまホーンタウロスンの巣を見つけたんで」
「繁殖力はゴブリンに劣っても、巣が出来ると男性獣人さんが攫われちゃいますから・・・」
注文の品が運ばれて来て肉にフォークを突き刺して、
「あれがこんなに美味くなるんだから世の中不思議だよな」
「ですね」
「あ、俺にはタメ口で良いよ。アルテミス様やマチェットの爺ちゃんは別だろうけど、歳もそんなに違わないだろう?」
そう言って笑うと、コスタリカもクスリと笑って
「ありがとう、でも私の方が年上かもよ?」
「なら、なおさらだよ」
「ちょっと、そこは否定してよね」
穏やかな空気で楽しそうに喋る二人を、鬼の形相で男性冒険者達が見ており、また、嫉妬に狂った表情でコスタリカを見つめていた。
「コスタリカさんと食事だけでも許せないのに・・・」
「ケインはモテるからな・・・」
「弟属性のケイン君に手を出したら殺してやる・・・」
「でも、あの破壊鎚のコスタリカだよ・・・」
そんな声がヒソヒソと聞こえる中、ボロボロの服を着た紫髪の少女が入ってきた。
「おまぇ、また来たのか!
金のねぇ奴に食わせ・・・グボ」
酒場の主人が少女の顔の間近まで顔を突き出し威嚇したが、何処からかハンマーを取り出したコスタリカに吹き飛ばされて壁際まで吹き飛んだ。
「ごめんなさいね、良かったら私達と一緒に食べない?
私がご馳走するわ。
ケイン君ごめんね、事後承諾だけどいいかしら?」
そう言って顔の前で手を合わせるコスタリカに
「良いよ。コスタリカさんが動かなければ俺が行ってたし、今日の飯は俺が出すから気にしなくていいよ」
頬をかきながらそう言うケインにクスリと笑って「だって、行こう」と少女の手を取って席に行く。
「ありがとう」
二人の前に座ると、小さくそう呟く少女を微笑ましそうに見つめる二人はさっさと注文をする。
ウェイターはのびたマスターを放置して料理を運んできてくれた。
「ごゆっくりどうぞ」
「あ、あのオブジェ倉庫にでも入れておいて」
「かしこまりました」
そう言ってウェイターはマスターの足を使い捨てのスライム手袋を2重にして掴んで、倉庫へ引きずっていった。
その間に少女はガツガツと食事を食べていた。
「で?お前孤児院に行かないのか?」
「わたし、獣人とエルフのハーフだから・・・」
この世界において獣人とエルフは不倶戴天の敵であり、無理やり以外子供は出来る事は無い。もしハーフが生まれても養えば両種族を敵に回すことになり、誰も受け入れなかった。
「そっか、じゃあ暫く俺のポーターをしてくれよ。
分け前もちゃんと出すし、仲間も多分良いと言うと思うけど、許可が出たら正式に雇うよ」
「いいの?わたしハーフだよ?」
「関係ねぇよ、アルテミス様もそう言うと思うし」
「そうですね・・・私からもお願いします」
「OK、俺はケイン」
「私はルー」
こうしてルーはケインと一緒に暫く依頼をこなす事になった。
獣人は力が強く、エルフは手先が器用で解体が得意。そんな両方の特性を持っていたルーは雑なケインより丁寧な仕事で、ケインに喜ばれていた。
ルーの告白
私はルー。おかあさんが死んで3年が経ったの。
おかあさんは獣人族の偉い人の娘だったらしいの、死ぬ前に言ってたの。
おかあさんは孤児院に行ってって言ってたけど、獣人とエルフのハーフの私は何処に行っても追い払われる事が続いて、オルフェの町に着いたの。
そして出会ったの。ハーフでも気にしないって言ってくれる人に。
その人はケインって言ったの。ケインのお部屋に泊めてもらって、次の日に一緒に狩りに出かけたの。
ケインの解体は適当すぎて驚くほど雑なの。
驚きすぎてわたしは思わずホーンタウロスンを奪い取ってしまったの。
「は~すげぇな、おれじゃ、関節外して引っこ抜くのがせいぜいだったぞ」
「ケインは適当すぎ・・・」
川の近くでわたしは陣取って、ケインが持ってきたモンスターを頑張って解体していったの。
その日わたしは7体解体出来たの、ケインはわたしの頭を乱暴になでてくれて
「ありがとよ」
って笑ってくれたの。
おかあさん以外初めて笑いかけてくれて、お礼言ってくれたの、なんだか幸せ。
その頃のソクナハ村
あちらこちらから煙が上がり、数人の男達の死体が所々に見える。
「貴様!何故あんなモンスターに手を出した!」
「は?大きい方が一回で済むだろう」
村長の家で村人達が避難する中、若い狩人に村長が詰め寄っていた。
「何をバカな!しかもしとめ損なって逃げ帰ってくるとは!何を考えている、な・に・を!」
「そりゃ、安全な所に逃げるだろう?それに村の壁が薄いのが悪い」
村長は頭を抱えると、外を指差して
「今すぐ!今すぐモンスターを外に誘導して来い!それが出来ないなら出て行け!その代わり迷惑料を確り払ってもらうからな、払えないなら奴隷に落としてやる!」
「はぁ?無理に決まってるだろう!ってかそんなルール聞いたことねぇし」
「お前の身分証に書き込んでやる!」
村人達が怒り、狩人を取り押さえて、村長が賞罰の所に現状を書き込むと簡易裁判の魔法陣が浮かび上がり、有罪が認められた。
しかし、村長とその息子と取り巻きも有罪になり、全員奴隷落ちになる。
「なぜだ!我らが何をしたと・・・」
”狩人マチェットに対するモンスターを使ったリンチ及び詐欺、元来マチェットが受け取るはずだった金銭の不正取得による刑罰。
また、その年数の長さ40年と長いため、一族郎党及びそのお金を使った者全てが連帯責任です”
「うそだろう!!!」
そう叫ぶと村長は両手を地面について呆然とした。
ショックのためか、一気に老け込む村長と、取り巻きに詰め寄られる息子。
狩人も呆然として動かなくなると、村人に無理やり外に出される。
この日レッサーインフェルノウルフは村を壊滅に追い込むまで暴れ回り、村長とその取り巻き達は当然として、数人の女性達をオルフェの町の奴隷商館に売り、村の建て直しを計るのだった。
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